Column

2014年の高校野球を振り返る 名門復活を印象付ける龍谷大平安の優勝

2014.12.31

 今年も激動だった2014年度の高校野球を振り返っていく。今年はどんな選手、どんなチームが主役になったのか、まずは春の選抜から振り返っていこう。

岡本和真、田嶋大樹と投打の目玉が期待通りの活躍をみせた選抜大会序盤


田嶋 大樹(佐野日大)、岡本 和真(智辯学園)

 第86回選抜高等学校野球大会。初出場は、都立小山台東陵白鴎大足利豊川美里工広島新庄、鹿児島大島の計7校。21世紀枠として選出された都立小山台は、都立校として初の甲子園を決めて話題となった。
また27年ぶり出場を決めた徳島池田は、1980年代の高校野球をリードしていた存在なだけに、徳島池田の出場に喜びをみせたオールドファンも少なくなかった。

この大会で最も注目されていた選手は、投手ならば、田嶋大樹佐野日大)、野手ならば岡本和真(智弁学園)の2人だ。

 田嶋は、180センチの長身から140キロを超える速球、キレのあるスライダーを投げる潜在能力の高さに加え、秋の公式戦で防御率0.49、四死球率1.80と数字面でも高い数字を残していた。田嶋は初戦の鎮西戦(試合レポート)から本領を発揮し、最速145キロの速球やキレのあるスライダーを武器に、3安打完封。

 一方の岡本は、打撃面でずば抜けた数字を残していた。2年の秋の公式戦では4本塁打、打率6割3分2厘、出塁率7割3分3厘、長打率15割7分9厘と、打撃4部門で出場校全選手の中でナンバーワンの成績であった。
注目が集まった三重戦(試合レポート)では、第1打席にバックスクリーン弾を放ち、第3打席でもレフトスタンドへ叩き込む一打を放つなど期待通りの活躍をみせ、ドラフト上位候補に名乗り挙がった。

 この2人の対戦が2回戦で実現した。結果は、4打数1安打。田嶋は三振を2つ奪い、対する岡本も8回に適時打を放ち、お互いに意地をみせたといっていいだろう。

 田嶋擁する佐野日大はベスト4まで勝ちあがった。準決勝に駒を進めた残りの3校は、龍谷大平安豊川履正社
豊川は最速144キロ右腕・田中空良が最少失点に抑え、粘り強い戦いをみせていた。日本文理試合レポート)、徳島池田(試合レポート)、神宮大会優勝の沖縄尚学試合レポート)を破り、初出場ながら4強入り。

 履正社は1回戦の都立小山台(試合レポート)に大勝し、駒大苫小牧試合レポート)に逆転サヨナラを決めた後、準々決勝では同じ近畿地区の福知山成美試合レポート)を破った。準決勝進出の原動力となったのは、溝田悠人永谷暢章ら、2年生投手の活躍が大きかった。とくに永谷は、187センチの長身から常時140キロ台の速球を披露し、視察に来ていたスカウトから高く評価され、2015年度のドラフト候補に名乗り上げる活躍をみせていた。

コラムに登場した学校の野球部訪問を紹介!

第121回 都立小山台高等学校(東京)


第122回 県立美里工業高等学校(沖縄)


第124回 智辯学園高等学校(奈良)


第125回 東陵高等学校(宮城)


第126回 県立池田高等学校(徳島)


第128回 佐野日本大学高等学校(栃木)


第131回 履正社高等学校(大阪)


第137回 豊川高等学校(愛知)


第141回 履正社高等学校(大阪)


第142回 龍谷大学付属平安高等学校(京都)


第153回 三重高等学校(三重)【前編】


第154回 三重高等学校(三重)【後編】

登場した選手のインタビュー!

第183回 佐野日本大学高等学校 田嶋 大樹投手


第179回 智辯学園高等学校 岡本 和真選手



第200回 【侍ジャパン18U代表】智辯学園高等学校 岡本 和真選手

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[page_break:春夏通算70回出場の龍谷大平安が守備の野球を体現し、初の全国制覇]

春夏通算70回出場の龍谷大平安が守備の野球を体現し、初の全国制覇

龍谷大平安・河合主将

 龍谷大平安は、高いチーム力が目立ったチームだ。秋の公式戦では、スタメン9人のうち7人が本塁打を放ちチームとして高い打撃力をみせた。守備では、4人の投手を使い分けた継投策で、失点を防ぎ、また秋の公式戦13試合で無失策試合が6試合と、堅い守備力で投手を盛り立てた。投打に穴が小さいのが一番の強みである。初戦を突破した後、八戸学院光星試合レポート)、桐生第一試合レポート)の強豪を破った。

 準決勝では龍谷大平安が、疲れのみえる佐野日大・田嶋(試合レポート)を打ち崩し、決勝進出。

 近畿地区同士の対決となった決勝戦(試合レポート)は、序盤から龍谷大平安が先行。履正社の決勝進出の原動力となった溝田、永谷らを打ち崩し、6対2で龍谷大平安が初優勝を決めた。京都勢としては、第20回大会の京都一商以来の快挙。最後まで自分たちのペースを乱すことなく、守りの野球で、見事、日本一に輝くいた。

 龍谷大平安を率いる原田 英彦監督は、1993年8月に監督に就任。1997年には7年ぶりの夏の甲子園出場、17年ぶりの選抜甲子園出場に導いた。就任21年で、春7回、夏6回の甲子園出場とまさに名門復活に大きく貢献した。

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[page_break:春季大会は自分をアピールする大会 その後、プロ入りに直結した選手多数!]

春季大会は自分をアピールする大会 その後、プロ入りに直結した選手多数!

 春季大会は冬に鍛えた力を発揮する場所である。急激にパフォーマンスを伸ばし、ドラフト候補に浮上する選手が非常に多い。

佐野 皓大(大分)

 九州大会準々決勝では、佐野 皓大大分高)が150キロを計測(試合レポート)。元々、140キロ台の速球を投げる投手として多くのスカウトから注目されていたが、この大会で、さらにスカウトからマークされるようになり、オリックスから3位指名。
同じく九州大会に出場した小野 郁(西日本短大附)は、最速147キロの速球を武器に、秀岳館を3安打完封(試合レポート)。打っては本塁打を放つなど、二刀流としてアピールし、東北楽天から2位指名を受けた。

 ソフトバンク1位指名の松本 裕樹盛岡大附)も、春季東北大会聖光学院戦(試合レポート)で最速146キロの速球とフォークを武器に1失点完投勝利と格の違いをみせている。

 またプロ志望はしなかったが、センバツ準決勝後、県大会では登板がなかった田嶋大樹佐野日大)が関東大会で復帰。復帰2戦目となった桐生第一戦(試合レポート)では最速147キロを計測し、選抜よりレベルアップした姿をみせたが、プロ志望届は出さずJR東日本へ進むことになった。高卒左腕は絶対数が少ないので需要が高い。田嶋も志望届を提出すれば、指名の可能性は非常に高かっただろう。

 ここで紹介した選手はあくまで一例だ。多くの選手が春季大会で活躍をみせて、プロ、またプロではなくても、有力大学や企業チームへ進むきっかけとなっている。次のステージに進みたい球児にとって春季大会は自分の実力をアピールする重要な大会であることを覚えておいてほしい。

 (文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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