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元プロ野球選手が率いる関メディベースボール学院 日本代表を多数輩出する強豪がなぜポニーで日本一を目指したのか

2023.09.08


関メディベースボール学院中等部は、昨年の侍ジャパンU-15代表に選ばれた金本 貫汰外野手(現・東海大相模1年)をはじめ、数々の好選手を育成してきたが、8月に中国で開催された第11回BFA U15アジア選手権にも、金谷 隆乃助内野手(3年)と藤田 蒼海内野手(3年)の二遊間コンビが代表に選出された。

設立当初からヤングリーグに所属し、今年3月に行われたヤングリーグ春季大会では見事に優勝を果たした。ところが、今年4月にポニーリーグに移籍。7月に行われた全日本選手権大会では佐賀ビクトリーとの両チーム優勝を飾った。

1つの世代で2リーグ優勝という快挙を成し遂げた関メディベースボール学院中等部がポニーリーグに移籍した理由や目指すチームの方向性、注目選手について紹介していきたい。

チームを率いる井戸伸年監督は近鉄などでプレーした実績を持つ元プロ野球選手。井戸監督がポニーリーグへの移籍を決めたのは今年3月と直前のことだったという。その理由を次のように語ってくれた。

「一番の理由は色んなことにチャレンジしているリーグだからですよね。関メディとしても中学野球を含めてジュニア層に色んなことにチャレンジしようと、色んなことを試みています。尚且つ、子どもたちにも『チャレンジ』という言葉を常に投げかけているので、当然、大人もチャレンジしないと色んなことも変わっていかないといけないというところで、移籍を最終的に決めたという形です」

突然の発表に選手や保護者も戸惑いはあったようだが、「自分たちのやることは変わらないので、ポニーでも全国制覇をして、2リーグ全国制覇を目標にやろうと思いました」(藤田)と気持ちを切り替え、新たな目標に向かって進むことになった。

ポニーリーグは他にない独自のルールがいくつかある。その1つが「複数チーム登録制度」だ。他のリーグであれば、1つの大会に出場できるのは1チームのみだが、ポニーリーグでは人数が多いチームの場合、1チームから複数のチームをエントリーして大会に出場することができる。

「今までは途中から守備固めで出ていた子たちも、スタメンで公式戦を味わえるのは凄く大きなことだと思います」と複数チーム登録制度のメリットを語る井戸監督。関メディベースボール学院中等部は、3年生だけでも約40人の選手がいる。そのため1チームだけの出場だと出場機会に恵まれない選手も、複数チームで出場することで実戦経験を積むことができるのだ。

また、複数のチームが出場することによって得られるメリットの1つが多くのリーダーを
育成できるということにある。通常であれば、主将1人に副主将数人でチームを運営するが、チーム数が増える分、幹部を担う選手の数もそれだけ増えることになる。従来ならその他大勢で埋もれていた選手も中心選手としての自覚が芽生えるようになり、「俺がやるという気持ちは強くなってきますよね」と井戸監督は選手の人間的な成長にも期待を寄せている。

関メディベースボール学院中等部では幹部制度を取り入れている。候補者が演説を行い、それを見て選手間投票を行うというものだ。自分の思いを大勢の前でアウトプットすることは、将来、社会に出て行く上でも必要なスキルである。それを多くの選手が経験できることは、貴重な経験になると、井戸監督は考えているようだ。

「自分たちの思いを言葉で人に伝えて、人に支持を得るということは大事なことです。今まで1チームでやっていたところが2チーム、3チームになることによって、リーダーの数が増えるので、今後の野球も含めてですけど、人生にとっても大きなターニングポイントになっているんじゃないかなと思います」

関メディベースボール学院中等部の選手たちは、人前で話す機会を多く設けられているからか、中学生にしてはコミュニケーション能力が高い印象を受ける。ポニーリーグに移籍したことも、彼らの成長をさらに後押しすることになりそうだ。

もう1つ、ポニーリーグの大きな特徴を挙げるとすれば、リエントリー制度があることだろう。スタメンの選手に限って、1度選手交代で退いても、再度試合に出られるというルールだ。

まだ移籍して数ヶ月ということもあり、井戸監督自身はこの制度について戸惑いもあるようだが、「みんなが試合に出られて、レベルアップすることができるので、とても良いと思います」(金谷)と選手からは好評のようだ。選手の起用の幅が広がるという意味では、多くの選手にチャンスが生まれることだろう。

また、国際大会を経験できるチャンスが多いのもポニーリーグの魅力だ。今年はコルト代表(U-16)に藤田、金谷、佐々木 斗眞内野手(3年)、ポニー代表(U-14)に井上 友吾投手、鶴田 啓人投手、才田 凱斗外野手、西田 櫂吏外野手(いずれも3年)が選出されている。日本を代表して戦うことは、野球の技量以外の成長にも繋がると井戸監督は感じているようだ。

「代表という立場でやらせてもらえるというのは、子どもたちにとっては凄く大きい。背負うものが変わってくるので、そういった中でみんなに見られているということで、より一層、意識が高くなって、言葉が変わり、行動も変わってくるので、その辺に対しての成長に対しては、ありがたい機会がより一層増えたのかなと思います」

6月にコルト代表としてアジアパシフィックゾーンチャンピオンシップを戦った藤田と金谷は海外の選手と交流した感想を次のように語ってくれた。

「海外の人と話したり、コミュニケーションを取ることで、自分のプレーの幅が広がったり、自分には得しかないことを経験させて頂いたので、自分のためになって、ありがたいことだと思いました」(藤田)

「外国の方々とお話をして、勉強は苦手なんですけど、英語で話すことによって、将来に役立つと思いました」(金谷)

自分の実力を試すだけでなく、海外の選手と触れ合うことで他国の野球観や文化について学ぶこともできる。国際大会の舞台が多いポニーリーグは人生の幅を広げることにも繋がっているようだ。侍ジャパンU-15代表に選ばれた藤田と金谷に向けて井戸監督は次のように期待を寄せている。

「2人とも走攻守、全てにおいてレベルが高いと思っていますし、当然、日本代表としてチームに貢献してもらいたいですけど、一番はその経験を自分の人生において凄くプラスにしてもらいたいです。チームにおいて後輩も当然見ていますし、『日本代表って、こういう選手なんだな、凄いんだな、だからこそこういう風な言葉がけなんだな、行動なんだな』というのをどんどん示してもらえたら最高の形かなと思っています」

世代最高峰の舞台で戦う彼らが、帰国後にその経験をどうチームに還元していくかにも注目だ。

SNSでも積極的に情報発信を行っている関メディベースボール学院中等部。「野球の楽しさ、野球の素晴らしさというのを大人、子供含めて表現していきたいなと思っています」と井戸監督は今後の方針を語ってくれた。

様々なことに挑戦し続ける、関メディベースボール学院中等部の今後の活躍ぶりから目が離せない。

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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