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仙台育英、東北の2強が一歩リードか 強豪私学、公立勢の躍進も2023年は期待

2023.01.05

仙台育英、東北の2強が一歩リードか 強豪私学、公立勢の躍進も2023年は期待 | 高校野球ドットコム
山田 脩也(仙台育英)

 「負けて心が晴れやかとは言わないが、嬉しい気持ちがある」。仙台育英の須江航監督は、昨秋の宮城県大会決勝で東北に敗れた直後のインタビューで、意外な言葉を口にした。続けて、「東北高校だけでなく、初戦から戦ったすべての学校が夏までより前向きで積極的な野球をしていた。(仙台育英の)甲子園優勝が宮城県の多くのチームに勇気を与えて、『自分たちにやれないことはない』と思って野球をしていることの証ではないか」と、その心情の真意を説明した。

 仙台育英の甲子園優勝により、例年以上に関心を集めた昨秋の宮城県大会。新チームが出揃い、今年を占うこの大会では、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。須江監督が言うように、宮城の高校野球は進化を続けるのか。秋の戦いをもとに、注目の2023年を展望する。

次なる快挙を目指す仙台育英

 仙台育英は甲子園優勝を経験した2年生が多く残っていることもあり、今年も日本一を狙える戦力を誇る。特に「140キロクインテット」の一角を担った高橋 煌稀投手、湯田 統真投手、仁田 陽翔投手(いずれも2年)は昨秋、変化球の使い方や制球力など、球速だけでない投手力の成長をそれぞれ示した。今年も他チームの脅威となるだろう。

 一方の打線は東北大会まではつながりを欠く試合も多かったが、明治神宮大会では本領を発揮した。初戦の沖縄尚学(沖縄)戦は0対4で迎えた9回に5点を奪いサヨナラ勝ち。最後は夏から4番を打つ斎藤 陽外野手(2年)の適時打で試合を決めた。続く大阪桐蔭(大阪)戦は4対5で惜敗したものの、好投手・前田 悠伍投手(2年)の立ち上がりを攻め、最終回には1点差に迫る粘りの攻撃を見せた。

 明治神宮大会の2試合ではいずれも、最終回に上位打線が機能した。1番・橋本 航河外野手(2年)、2番・山田 脩也内野手(2年)、4番・斎藤は夏から続く布陣。そこに1年生の3番・湯浅 桜翼内野手が加わり、勝負強い打撃で得点を生み出している。この上位打線を中心に得点力を向上させ、強力投手陣を援護したい。センバツ初優勝、そして夏の甲子園連覇へ。さらに強くなった仙台育英を見るのが、今から楽しみだ。

[page_break:仙台育英に負けじと、全国の舞台を狙う私立強豪校/公立校が来年も宮城を席巻するか]

仙台育英に負けじと、全国の舞台を狙う私立強豪校

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秋本羚冴(東北)

 仙台育英の最大のライバルとなるのは、やはり東北だろう。仙台育英とともに来春のセンバツ出場を当確としており、まずは12年ぶりの大舞台で結果を残したい。優勝した昨秋の宮城県大会は6試合で2失点、東北大会も決勝を除けば3試合全てで2失点以下と、特に投手力の高さが際立つ。県大会決勝で仙台育英打線相手に6回無失点と好投した右腕・ハッブス 大起投手(2年)と、県大会、東北大会の全10試合に登板し30回3分の1を投げ防御率0.00と抜群の成績を残した左腕・秋本 羚冴投手(2年)が軸となる。

 秋の県大会で仙台育英東北以外の私立校で唯一16強に入ったのが、東北学院。2021年の夏は甲子園に出場したが、2022年は春地区大会で敗退、夏2回戦敗退と、辛酸をなめた。秋は初戦の仙台向山戦で11得点し快勝すると、仙台一との2回戦は4時間を超える熱戦を制し、13対11で勝利した。豊富な投手陣も伸び代十分で、返り咲きに期待がかかる。

 日本ウェルネス宮城は、秋は2回戦で敗れたが、1期生が抜けた後も強力な投手陣を誇る。佐沼戦で5回無失点と好投した1年生右腕の新沼 櫂我投手や、身長190センチ右腕の大内 誠弥投手(2年)らに注目だ。そのほか、夏準優勝の聖和学園や春、秋連続ベスト4の古川学園なども今年に向けチームを仕上げてくるだろう。

公立校が今年も宮城を席巻するか

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曽我颯人(利府)

 昨秋の県大会は16強入りした高校のうち13校が公立校で、今年も公立校の躍進が予想される。3位に入り、東北大会にも出場した利府小酒井 凱人投手(2年)、曽我 颯人投手(2年)がチームを引っ張る。3位決定戦で利府に敗れた仙台三は旧チームから主力を張る経験豊富な2年生が多く、特に1、2番を打つ尾形 遥翔外野手(2年)、本郷 泰成外野手(2年)と4番の加藤 光志郎内野手(2年)は春から不動で、今年も強力打線を形成しそうだ。

 仙台商は3回戦で仙台育英から先制点を奪うなど、強敵を苦しめた。エースナンバーを背負う阿波 壮汰投手(2年)と4番を打つ郷家 璃久外野手(1年)が投打の中心を担う。及川 莉央投手(2年)、佐藤 稜樹投手(2年)の二枚看板を擁し、強豪私学と互角の戦いを繰り広げた佐沼や、本田 慎次朗投手(2年)、湯浅 太賀投手(2年)ら左の好投手が名を連ねる仙台二など、今年が楽しみな公立校を挙げれば枚挙にいとまがない。

 秋の大会を参考に展望したが、一冬越え、新入生を迎え、春には勢力図がガラリと変わるのが高校野球。2023年は、宮城の高校野球にどんな歴史の1ページが刻まれるだろうか。

(記事:川浪 康太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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