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「1年生」で特例出場、KK、ダルビッシュ…「四天王」で盛り上がるセンバツ新2年生エピソード

2022.02.13

「1年生」で特例出場、KK、ダルビッシュ…「四天王」で盛り上がるセンバツ新2年生エピソード | 高校野球ドットコム
真鍋慧、佐々木麟太郎、前田悠伍、佐倉侠史朗

 四天王、などという華やかなキャッチが踊る大会は久しぶりじゃないだろうか。

 第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕)では、スケールの大きい打者3人と、145キロを放るイキのいい左腕がいる。しかも、いずれも1年生(大会時には2年生)。佐々木 麟太郎内野手(花巻東・岩手)、真鍋 慧内野手(広陵・広島)、佐倉 侠史朗内野手(九州国際大付・福岡)の3人の一塁手と、明治神宮大会を制した大阪桐蔭の左腕エース・前田 悠伍投手。1年前までの中学生が、大会をおもしろくしてくれそうだ。

 中学生といえば、惜しくも選考されなかったが、今回の21世紀枠候補に挙げられていた高松一(香川)のOBに、中西 太がいる。のちに西鉄(現西武)で首位打者2回、本塁打王5回、打点王3回などを獲得した大打者だ。高松一が、1949年のセンバツに初出場したときの三塁手。実はこのときの中西は、新高校1年生だ。いまの制度では、高校1年生はセンバツには出場できないが、49年といえば前年に学制改革が実施された直後。言葉は悪いがどさくさのタイミングと、また前年秋の四国大会では、中学3年生として活躍したこともあり、特例として出場できたのだ。

 現行制度では、高校1年生が出場できるのは夏の選手権から。夏の地方大会、あるいは甲子園はおもに7〜8月に行われるから、1年生にとっては、入学から3〜4カ月という時期にあたる。当然、先輩に伍してベンチ入りすることさえ至難の業で、たとえば2019年の夏の甲子園出場校なら、全登録メンバー中1年生は38人と約4パーセントだ。そのうち主力級となると、10人に過ぎない。ただ、ときには、ずば抜けた力量を発揮する選手がいる。近年は彼らを「スーパー1年生」などと呼ぶことが多い。

 1977年、80年夏にいずれも準優勝した東邦(愛知)の坂本 佳一投手、早稲田実(東東京)の荒木 大輔投手(元ヤクルトほか)も1年生エースだったが、当時はまだそう呼ばれてはいなかった。「スーパー」と形容され始めたのは、たとえば05年、打者としても1発を放ち、投げては147キロを計時した大阪桐蔭中田 翔投手(現巨人)あたりだろうか。15年夏には、いわずと知れた早稲田実(西東京)・清宮 幸太郎内野手(現日本ハム)。1年生として2本塁打を記録するのは、PL学園(大阪)の桑田 真澄投手(元巨人)以来だった。

 1年生だった83年、清原和博内野手(元西武ほか)とのKKコンビで夏の甲子園を制した桑田についていえば、誕生日が68年4月1日だから、67年度の最終日。それで全国の頂点に立つのだからすごい。なにしろ、生まれるのがあと1日遅ければ中学3年生だったのだ。もっともそれでは、清原とは学年が違うことになり、KKコンビは生まれていなかったが……。

 今センバツで注目される4人は、いずれも今回のセンバツが甲子園デビュー(大阪桐蔭は昨夏の選手権に出場したが、前田はベンチ外)。秋のシーズンで示したスーパーな力量から「四天王」と呼ばれているわけだ。


「1年生」で特例出場、KK、ダルビッシュ…「四天王」で盛り上がるセンバツ新2年生エピソード | 高校野球ドットコム
高校時代のダルビッシュ有(東北高出身)

 1年夏には甲子園に出場せず、新2年生の甲子園デビューに限定すると、真っ先に思い出すのが03年、東北(宮城)のエースだったダルビッシュ 有投手(現レンジャーズ)だ。羽曳野ボーイズ時代に日本代表として世界一になり、すでに140キロを投じていた大器は、50校ともいわれる勧誘から東北に進学。02年秋の球速は、147キロに達していた。秋の公式戦60回を投げて奪三振71、防御率0・60という破格の数字。モデルばりのルックスもあり、03年のセンバツでは大会前から大注目だった。

 ただ開会式後、球場外に出たところで殺到する女性ファンにもみくちゃにされ、右わき腹を痛めてしまう。過熱する人気ゆえのアクシデントから本調子にはほど遠く、東北は初戦(2回戦)こそ突破したものの次戦で敗れてしまった。

 古くは、63年に優勝した下関商(山口)には池永 正明投手(元西鉄)がいた。延長16回を含む5試合すべてに完投し、2完封含む防御率0・35は、いまとは時代が違うとはいえあっぱれだ。下関商はその年夏も出場すると、決勝まで進んで明星(大阪)に1対2で惜しくも敗れた。池永は、松商学園(長野)との2回戦で左肩を脱臼しながらその試合を完封するなど、やはり防御率0・40。もし脱臼のアクシデントがなかったら、現在まで例のない2年生エースとしての春夏連覇がなされていたかもしれない。

「もし連覇しとけば、大したもんやったろうねぇ」。ご本人からはかつて、そんな話を聞いたことがある。

 今センバツの四天王、それぞれのストーリーについては、別にふれる機会があるだろう。楽しみなのは、昨秋の神宮大会で真鍋、佐々木、佐倉が同じ日にアーチをかけたような華やかな競演、そして前田との対戦だ。次回からは、ここ10年のセンバツで印象的だった新2年生の活躍をプレイバックしてみる。

(文=楊 順行)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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