Interview

強力昌平打線を俊足強打で牽引する千田泰智(昌平)50メートル6.1秒を活かす事前準備と打撃技術

2020.08.22

 打率.524、出塁率.565はチームトップの数字。OPSも1.422という高い数字をマークしているのが強力・昌平打線を牽引するリードオフマン・千田泰智主将だ。

 50メートルを6.1秒で駆け抜ける走力を武器に、1番打者として打線の火付け役を担い、チームの決勝進出に大きく貢献した。そんな千田のこれまでの足跡とは。

俊足を生かす走塁技術を身がした中学時代

強力昌平打線を俊足強打で牽引する千田泰智(昌平)50メートル6.1秒を活かす事前準備と打撃技術 | 高校野球ドットコム
千田泰智(昌平)

 サッカー少年だった千田は、3つ上の兄の影響で小学1年生から新所沢ライオンズで野球人生を始めた。「野球を体験したら楽しかったので始めました」とのことだったが、その時から外野手として活躍するようになった。

 この時から脚力には自信を持っていた。何と50メートルは7秒を切るかどうかのタイムを叩き出していたのだ。そんな走力を持っていたこともあり「周りから『犬』とか言われていましたね(笑)」と当時のことを懐かしそうに振り返る。

 千田は小学生の時は「どんどん盗塁をしたり、隙を狙ったり常に先の塁を狙ってバッターに帰してもらえるようにしました」と語る。

 その後、千田は硬式野球の武蔵狭山ボーイズへの入団を決意。

「中学では高いレベルでプレーをしたかったんです。そこで武蔵狭山に行ったときに褒められたのがきっかけです」

 同級生には健大高崎戸澤昂平がいたが、当時の3年生が引退するまではランニングや素振りなど、基礎練習を中心に積み重ねて体力を付ける日々だった千田。そうすると1年生の秋にはベンチ入りを果たし、自分たちの世代が中心になると、レギュラーとして活躍することとなる。

 すると、試合を通じて千田の走塁技術を支える考え方が育まれていく。まずは盗塁に対する千田の考え方だ。

「いけると思ったら怒られてもどんどん行こうと考えていましたが、必ずベンチでピッチャーの癖を見るようにしました。そこでピッチャーがどこの部位から動き出すのか。そして牽制の時間とかを見て、そこから考えていくようにしました」

 そして走塁技術についてだが、カギになったのは事前準備だった。

「自分は打球が上がった瞬間の一歩目が大事だと思うんです。ここがホームインできるかどうかが決まると思うので、大事にしてきました。その一歩をしっかり切れるように、塁上で相手の守備位置をしっかりと確認します。そこから打球の角度や伸びを見て、守備位置を想像してスタートを切るようにしました」

 中学時代、千田は50メートル6.4秒をマークする脚力まで成長したが、そこに加えて技術を身につけてダイヤモンドを駆け巡った。

 さらに、千田は3年生の時に鶴岡一人記念大会の東日本ブロックに選ばれた。ここには大阪桐蔭仲三河優太作新学院横山陽樹など同世代で全国の舞台を経験するメンバーとプレーする機会もあった。

「レベルが違いましたが、いい経験になりました。全員力には自信を持っている選手で自分の野球を持っていました。しかし自分も自分の野球があったので、それで勝負をしました」

 一方で、「このままでは高校野球では走れないな」と不安も感じながら昌平へ進学した。

[page_break:昌平で磨き上げたバッティング]

昌平で磨き上げたバッティング

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千田泰智(昌平)

 黒坂洋介監督と話をして「野球のスタイルがあっている。ここでワンランク上の野球を学べる」と思った千田は入学するとすぐに試合に出場。同級生・渡邉翔大吉野哲平らとともに活躍した。

 そこで「飛ばす力では勝てないので、打率と出塁率で勝負しよう」と思い、千田は打撃フォームの変更に着手した。

「スピードに対応をしないといけなかったので、頭が突っ込んで左右間に当てるだけの悪い癖のバッティングから、頭の位置を変えないようにしたんです。今までは三遊間に転がして足でセーフをもぎ取りましたが、突っ込んでしまうとインコースの速球も打てませんので、軸をブラさずに力強い打球を打てるようにしました。

 あとは今までは最短距離でミートさせましたが、ヘッドを走らせるために後ろを長くしたんです。後ろで受け止めてあげる感じにしたら、ボールを長く見られるようになって選球眼は良くなりました。またヘッドを使えるので打球が変わりました」

 加えて食事で身体を大きくし、連続ティーでスイングする体力そのものをアップさせた。これで課題だったバッティングは「一気に二段階くらい成長しました」と手ごたえも感じた。

 武器だった走塁に関しては「監督から教わったことも自分の中で大事にしてきたポイントと変わりがなかった」と座学の内容が既に千田の中で活かされていた。こうして千田はチームの勝利に貢献し続けたが、チームは優勝に届かず、千田の1年間はあっという間に過ぎた。

 すると新チームでは主将に就任し、チームの代表として引っ張るようになった。監督に代わってチーム全体の走塁のレクチャーをするなど、全幅の信頼を寄せられられた千田。「監督の近くでやってきた中で、チームメイトに教えることで周りが見えるようになりました」と選手としてだけではなく、主将としても少しずつ成長した。

 しかし秋季大会は準決勝・西武台戦で0対3の完封負け。悔しい敗戦を喫した。

「打撃をウリにしてきましたが、試合中に全員で対策をできていなかったんです。だからそれ以降の練習試合はしっかりとチーム内で話し合いながら相手投手の攻略しようとしました」

 その後の試合では戦い方のバリエーションを増やすべく、実践練習も多めにしながらトレーニングもこなして春を待った。そして千田はバッティングをさらに昇華させるべく、木製バットを使った練習を11月から始めた。

「金属バットだとある程度誤魔化せるのですが、木製だと同じ手ごたえでも打球が飛ばないんです。だからすり足でタイミングを合わせていたところから、下半身主導で足を上げてタイミングを取るようにしました。それで下半身の力もバッティングで使えるようにしました」

 もちろん、軸をブラさないことを前提としたフォームだが、これでバッティングに磨きをかけた千田。こうして夏の独自大会では準決勝が終わって出塁率.565、長打率.857というチームトップクラスの数字を叩き出している。

「ウリは打撃ですので、全てコールドで勝ってメットライフでも勝ちたいと思います」と意気込みを語った千田。残すところ1試合となったが、有終の美を飾れるか。千田の1プレーに目が離せない。

(取材=田中 裕毅)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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