最速146キロの大型左腕・松浦慶斗はなぜ旭川を飛び出して大阪桐蔭を選んだのか?【前編】
全国各地から逸材が多く集まる大阪桐蔭。ポテンシャルの高さではこの世代どころか、歴代の大阪桐蔭の選手の中でもトップクラスの素質を秘めたのが1年生左腕・松浦 慶斗だ。186センチ84キロと恵まれた体格から最速146キロのストレートを投げ込む。2021年の世代を代表する左腕になりうる松浦の軌跡を振り返っていきたい。
なぜ旭川から大阪桐蔭に接点を持つようになったのか?
1年生左腕・松浦 慶斗(大阪桐蔭)
松浦が野球を始めたのが小学校1年生から。もともと宮城県の石巻市出身の松浦は親の転勤の都合で、北海道の旭川市に引っ越し。小学校5年から投手をはじめ、小学校6年には北海道日本ハムファイターズジュニアのセレクションを受ける。このセレクションは3回あり、まず一次試験では1000人から150人に絞り込み、二次試験では150人から30人程度まで絞り込み、最終試験では30人で紅白戦を行い、18人を選ぶという狭き門を潜り抜け、松浦は北海道日本ハムジュニアに選出され、2015年のNPBジュニアトーナメントに出場する。
ちなみに松浦は古谷優人(江陵-福岡ソフトバンク)がいとこ。高校時代から150キロを超える速球を目の当たりにしていた松浦は「直接は教えてもらっていませんが、古谷さんのようなストレートは投げたいと憧れを持っていました」と振り返る。
そして中学では自宅から自転車で通える旭川大雪ボーイズに入団。冬になると、グラウンドが使えない。その中で、雨天練習場や体育館を借りながら練習を積んだ。
「人工芝が使えるところではピッチング、バッティングの実技。使えないところでは、ひたすらトレーニングをして体を鍛えていました」
そこでもエースと主軸打者を務め、チームの柱として活躍。中学1年には身長170センチだったが、中学3年には185センチまで伸び、ストレートの球速は120キロ程度から138キロまでスピードアップ。その球速アップは体の成長だけではなく、旭川大雪ボーイズに投手専門のコーチから投球フォーム、感覚などあらゆるところまで教わったことで、大きく伸びた。旭川出身の松浦が大阪桐蔭と接点を持つようになったのか。
それは昨年8月に行われたボーイズの全国大会でベスト8に進出したことがきっかけだった。ここでの活躍が大阪桐蔭の関係者の目に留まり、またU-15代表の池田陵真(忠岡ボーイズ)からも「一緒に大阪桐蔭で野球しよう」と誘われた。そして松浦はさらにうまくなりたい思いがあった。
「北海道では物足りないというわけではないのですがうまい人と一緒にプレーして自分を高めたかったからです」
強い上昇意欲をもって大阪桐蔭への入学を決める。
高校で直球を磨く重要性を痛感
指導を受ける松浦 慶斗(大阪桐蔭)
その気持ちは正しかった。入学するとレベルの高さを痛感する。練習試合や、シート打撃で先輩たちに投げると、これまで通用していた武器が通用しない。
「中学時代、自分が得意だったのは速球ではなく、変化球だったんです。中学時代、変化球を投げればごまかせました。しかし高校に入ってことごとく打ち返されて、じゃあどうすればいいかと思ってストレートを投げるとき、思い切り腕を振っていったら、抑えることができて、ストレートで攻めようと思いました」
またその姿勢は西谷監督や投手コーチの石田コーチから薦められた。
「自分はストレートを投げる際、コントロールを意識してうまく合わせようとする意識があったのですが、そうではなくて、コントロールを気にせず思い切って腕を振って行けとアドバイスをもらいました」
投球練習から強く腕を振ることを意識し、昨夏には142キロに到達。また高校に入ってからは、中距離走、インターバル走、体幹を鍛えるTRXなどを行い、課題だった下半身と体幹を鍛えていき、平均球速を高めていき、昨秋にはベンチ入りを果たす。
昨秋の公式戦では限定的だったが、リリーフで好投。近畿大会の立命館守山戦では、最速146キロのストレートを投げ込み、観衆を驚かせる。ただ松浦自体は自身の速球には納得していない。
「146キロを計測したストレートはボール球でしたので、あまり良いストレートではなかったと思います。自分が満足するストレートでスピードを出せればと思いました」
松浦 慶斗(大阪桐蔭)
そして近畿大会準決勝・智辯学園戦では先発。事前に言われてしっかりと準備したが、初先発はこれまでの公式戦のマウンドとは比べものにならない緊張感があった。
「本当に緊張していましたし、相手打線もすごくて、相手の応援もすごくて、マウンド上で震えていたと思います。まだああいうチームには自分のストレートは通用しないんだなと思いました」
結果は4回を投げて5失点。超高校級打線に触れたことで、コントロール、変化球の精度、あらゆる面で課題となった。
後編では現在の課題へ向けて、どんな取り組みをしているのかをうかがいました。⇒(後編を読む)
(取材=河嶋 宗一)
春夏合わせて8度の全国制覇を果たし、いまや全国の高校球児、中学球児の憧れとなっている大阪桐蔭。
高校野球ドットコム編集部総出で、現役球児にも参考になる練習方法や選手の考え方など、徹底取材してきました!
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