超一流だけではない。全部員を活躍させる大阪桐蔭メソッドに迫る vol2
2018年、史上初の二度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭。しかし2019年は春、夏ともに甲子園出場ができず、悔しい1年となった。3季連続甲子園出場なしは避けなければならないという思いからスタートした今年のチームは近畿大会決勝まで勝ち進み、2年ぶりの選抜出場が近づいている。
今回は2020年、オリンピックイヤーでの飛躍が期待される大阪桐蔭特集を半年ぶりに再開します!2回目は大阪桐蔭の選手育成に迫ります。
多くの選手を伸ばすプロ野球方式の運営
室内練習場ではティーバッティングが行われていた
大阪桐蔭の選手育成で見逃せないのが、多くの選手を育て、卒業先で活躍していることだ。それまで高校時代にあまり試合に出ていなかった選手が大学で活躍することが多い。
近年の例でいえば、この秋、5本塁打を放ちリーグ優勝に貢献。さらに大学日本代表候補合宿に参加した大石航輝(天理大・3年)、二刀流で活躍する越智泰弘(駒澤大・3年)は最後の夏はスタメンに出場していない。
今年、リーグ戦でノーヒットノーランを達成した宮本佳汰(東京国際大・4年)や、道端晃大(同志社大・1年)ではベンチ入りしていなかった。また今の3年生たちも多くの選手が次のステージで硬式野球継続が決まっている。
大阪桐蔭はどの選手でも伸びる土壌がある。それは11月~12月にかけて行われる育成試合と個人の強化練習期間がカギを握っていた。
11月4日の近畿大会決勝戦後、大阪桐蔭は育成試合と銘打ち、近隣の学校を試合を組んだ。大阪桐蔭のグラウンドと近いのは数百メートル先にある大産大附、生駒市にあり車で10分ほどの近隣の近大附、大東市の太成学院大高。西谷浩一監督の母校である報徳学園など平日ながらも練習試合を行い、11月5日以降は紅白戦や練習試合を含め、計26日間で24試合を行った。
この期間に試合に出た選手は、ベンチ入りしていない選手やベンチ入りしているけれど、あまりに試合に出ていない選手が対象だ。
「まず秋の大会では、チームとして勝利を目指しますので、どうしてもレギュラー中心の練習になります。
打撃練習で打撃投手になってくれる選手たちが縁の下の力持ちとなってくれたおかげもあり、勝てていると思います。そういう選手たちのために絶対にチャンスを与えると約束しており、この方針を行っています」
バッティング練習に打ち込む大阪桐蔭選手
大会が終われば、文字通り白紙。全員にチャンスを与える。
「甲子園で勝つためには部員全員が頑張ってもらわないといけないので、全員にチャンスを与えて、もう1回競争させます。
打者は50~60打席は立ったと思います。 投手も多くの投手が経験できるように1人につき3イニング~4イニングを投げさせています」
より多くの選手にチャンスを与えるために、1グループ15人の2グループに分かれて、太成学院大高、近大附と試合を行い、秋の主力選手はグラウンド残留組となり、練習の手伝いと自主練習に訪れた3年生に投げてもらって打撃練習を行い、けが人以外はフル回転をさせる効率的に実戦経験と練習を両立させ、まるでプロ野球のような運営方式である。
西谷監督も「11月はプロ野球でいうとフェニックスリーグみたいな感じですね。私たちスタッフは冗談で、『生駒フェニックスリーグや』というのですが、ここで結果を残した選手はメンバー選考にかかわるレギュラー組との紅白戦に出られるチャンスが生まれます」
11月は晴天も多く、前述のように24試合もできたため、「実戦を経験して、競わせながら、レベルアップするのは1つの向上法だと思います。結果、多くの選手が伸びてきましたし、だいぶ力を測ることができたと思います」と手ごたえを感じている。
[page_break:育成試合の目的は課題を見つけること]育成試合の目的は課題を見つけること
急成長中の岩本賢志投手
この運営の最大の狙いは課題を認識させることだ。
「この期間は課題を見つけてほしいです。試合に出なかったら失敗しない。試合に出ないと、なんとなくできるんだろうという気持ちになって、上達につながらない。試合を積ませてうまくいかないことを発見することが大事なんです。出てきた課題を向き合っていく。題材づくりのための期間なんです」
また西谷監督は選手たちへチャンスは2種類あると説明している。「与えるチャンス」が11月の育成試合期間。「つかむチャンス」はベンチ入り選考にかかわる紅白戦で、結果を残し、ベンチ入りを勝ち取ることだ。12月は気候が温暖なこともあり、紅白戦を5試合行ったが、これはメンバー選考をつかむための意味合いがある。
この期間で伸びていくのは例年、1年生が多く伸び、春の大会でベンチ入りする選手が多い。今年も1年生の台頭が目立ったが、スタッフの意見を統合すると、ここにきて2年生投手の伸びが著しい。
近畿大会ではエース・藤江星河、チーム一の速球派右腕・申原理来の2年生が出ていたが、それ以外は松浦慶斗、竹中勇登、関戸康介の1年生がベンチ入りしていた。3人の能力が高く、抜擢されたのも1つの要因だが、2年生投手のコンディション状態が良くなかったのも1つの要因だった。
だが秋の大会が終わると、2年生投手が練習試合で好投。その中で、急成長を見せているのが、岩本賢志だ。主に投手を担当する石田寿也コーチからも「身長も180センチを超えて、140キロ前後の速球を投げられます」と語る大型左腕。
トレーニング中の様子
実は前チームからベンチ入り候補だったが、故障のため外れていたが、ここにきて伸びてきており、エース・藤江の隣で投げていたが、ボールの勢いはほぼ変わらなかった。西谷監督も「良くなってきましたし、メンバー候補へ近づいている」と評価する。また、三好遼也、又吉将太の両右腕も成長してきているという。
効率的な運営により選手育成を行う大阪桐蔭メソッド。この運営を成功させているのは西谷監督をはじめとしたスタッフの方々は良ければしっかりと良いとたたえることだ。過大評価してはならないが、能力ある選手を正当に評価することはとても大事なことだ。
そういう姿勢こそが選手のモチベーションとなり、成長の下支えとなっているのではないだろうか。そういう方々だからこそ今の運営方式が出来上がったといえるし、これまでプロに行く選手だけではなく、大学・社会人で活躍する選手を多く輩出しているのではないか。
次回は球児の皆様にとっても関心のある大阪桐蔭のトレーニング、練習内容に迫っていきたい。1つのメニューでも実戦を意識したものが多く、これが高校生離れしたパフォーマンスを生んでいるのかと納得できた。ぜひ写真、動画を見て参考にしていただければ幸いだ。
(文・河嶋 宗一)
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