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常識を打ち破って上り詰めた頂点!創部10年で神宮大会を制した札幌大谷(北海道)【前編】

2019.01.26

 秋の明治神宮大会で初出場初優勝の快挙を成し遂げた札幌大谷が、さらなる飛躍を期して練習に汗を流している。創部10年目、全国的にも珍しい中高一貫指導でつかみ取った栄冠は、選手たちにこれ以上ない自信を与え、次なる目標である甲子園に向けて、スキのないチーム作りに余念がない。

圧倒的な攻撃力で勝ち取った秋の日本一

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集団走をする札幌大谷の選手たち

 ひと皮むけた。これまでどこか幼さの残る感じだったチームの面影は、もうどこにもない。室内練習場に響き渡る選手たちの声にも、秋の王者としての自信と誇りが満ちあふれていた。「まさか、でしたよね。こんなにうまくいくなんて、考えてもいなかったですよ」と笑う船尾隆広監督(47)も、ようやく“現実”を受け止められるようになってきた。

 秋は札幌支部予選4試合中、3試合をコールド勝ちと圧倒的な攻撃力で勝ち上がると、全道大会でもその勢いは止まらない。準決勝駒大苫小牧戦、決勝札幌第一戦はいずれも序盤で4点をリードされる苦しい展開となったが、きっちり逆転してみせた。「このチームは夏の練習試合から逆転勝ちするゲームが多かった。そんな中からリードされてもひっくり返せるという雰囲気が、自然と出てきた感じですね」と、一戦一戦成長するナインに指揮官も目を細めた。

 初の全国舞台となった明治神宮大会に向けては、あえて特別なことはせずに臨んだ。「正直、一番弱いチームだと思っていましたからね。初めての全国大会だったし、どこまでできるかという期待感だけでした」という船尾監督のリラックスしきった姿勢が、選手たちの肩の力を抜けさせた。

 初戦龍谷大平安戦では、相手のミスにも乗じていきなり5点を奪い試合を優位に進めたが、6回に3安打に2失策が絡み1点差まで追い上げられる。流れが相手に傾きかけたその裏、すぐに1点をもぎ取り、名門を寄り切った。「あの試合は結局5失策。雨の人工芝ということで、打球が伸びてくるだとか、送球時に足が滑るとか、選手に言い過ぎて、かえって意識させてしまった」と指揮官は反省したが、翌日の練習では内野陣が特守を志願するなど、大舞台は選手の自主性も育てていた。

 国士館、筑陽学園も撃破して迎えた決勝戦では、全道大会でふがいない投球しかできなかったエース・西原健太(2年)が汚名返上のピッチング。星稜打線をわずか1安打1失点に抑える快投で、秋の頂点に立った。「キャッチャーのリード通りに投げてました。いつもなら7回ぐらいで疲れを感じるんですけど、気付いたら試合が終わっていた。あっという間でしたね」と、背番号1のプライドを見せつけた。

[page_break:創部10年目 常識を打ち破る船尾監督のチーム作り]

創部10年目 常識を打ち破る船尾監督のチーム作り

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練習に打ち込む飯田 柊哉主将

 女子高から共学となり、今年で創部10年目。甲子園出場経験はない。2016年春に全道大会を制したが、その夏はまさかの札幌支部予選初戦敗退。その後も夢舞台につながる秋、夏の大会ではことごとく苦杯をなめてきた。今夏も優勝候補にも挙げられていたが南北海道大会の初戦の札幌光星戦、3対0とリードしながら4回降雨ノーゲームとなると、翌日は2対9と逆転負け。「あの負けはショックが大きかった。私が引きずってしまって、なかなか立ち直れなかったんです」と船尾監督は打ち明けた。

 そんなモヤモヤした気持ちを打ち消してくれたのは他でもない。新チームの主力となる2年生たちだった。「この悔しい気持ちを絶対に忘れたらダメだ。3年生がまだ学校にいるうちに、絶対甲子園を決めて恩返しするぞ!」。飯田柊哉主将(2年)を中心に行われていた選手間のミーティングから漏れ聞こえてくる声に、指揮官が大いに刺激される。監督就任4年目で、これまでの既成概念を打ち破る大胆なチーム作りに乗り出す決意を固めた。

 「これまでいろんな人に話を聞いてきたんですが、“秋は守ったチームが勝つ”というのがほとんどでした。でも実際、なかなか勝てない。それなら攻撃的なチームを作ってみたらどうなんだと」と、夏のメンバーがレギュラー5人を含めて7人残っていたことも、思い切った手を打つ要因となった。

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選手へ身振り手振りで指導する船尾 隆広監督

 攻撃型のチームといっても、ただ打ちまくるというわけではない。目指したのはバントや機動力も絡めた総合的な攻撃力を持ったチームだ。「強豪校と呼ばれるチームは序盤、中盤でリードされていても、最後には必ず試合をひっくり返して勝つ。そのためにはいろいろな要素が求められる」という指揮官の目指した野球は日々の練習、さらには実戦の中で確実に浸透していった。

 試合の中で勝負所を見極め、そこで自分のやるべき仕事をきっちりとこなしていく。プレーしている選手はもちろん、ベンチの雰囲気、さらにはベンチに入っていない部員も含めて全員が集中して勝利へと向かう“空気”が、自然と生まれていったという。「特別メンタルトレーニングなんかをしたわけじゃありません。声の出し方、ベンチの盛り上がり方なども含めて、自信の積み重ねの中から出来上がっていきましたね」と船尾監督は振り返った。

 前編はここまで。後編では守備の強化ポイントを伺いつつ、中高一貫のメリットと春への意気込みを話してもらいました。後編もお楽しみに!

 6年間の集大成を全国の舞台で!甲子園優勝へ突き進む札幌大谷(北海道)【後編】に続く。

(文・京田剛

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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