【南北神奈川大会総括】 盤石の強さを見せた横浜 強打野球に転換した慶応義塾
今年の南北神奈川大会は南神奈川は横浜、北神奈川は慶應義塾が優勝と、10年前と同じ高校が甲子園出場を決めた。
横浜が3連覇も 各地で接戦が多発
板川佳矢(横浜)
南神奈川優勝の横浜。昨秋、コールド負けした鎌倉学園に春、リベンジすると夏でも攻守で圧倒。3年連続の頂点に立った。投手は板川 佳矢、及川雅貴の2人の左腕コンビが中心となって活躍。打撃では、万波中正が復活。6割近い打率を残し、2本塁打を放つ活躍。もともと1番~9番まで長打を打てる打線だったが、万波が復活したことで、打線に厚みが増した。1年生の度会隆輝も5試合連続安打を記録するなど、新戦力の活躍も光った。夏の戦いを見る限り、まだ調子はピークに達していない様子。甲子園では高いポテンシャルを引き出すことができるか。
準優勝の鎌倉学園は苦しい試合を制しての勝ち上がりが続いた。準々決勝の藤沢翔陵戦は延長12回裏サヨナラ勝ち。準決勝の横浜創学館戦では、5対4と接戦を制し、決勝戦へコマを進めた。投打で活躍を見せた3番・新倉将大、4番・松丸航太郎を中心とした打線は強力だった。継投策で勝ち進み、この1年で確かな実力を身に付けた。
ベスト4に残った星槎国際湘南は4番・松下壮悟を中心とした打線は強力。どの打者もレベルスイングを徹底し、横浜相手に8得点を挙げた攻撃は見事だった。来年以降につながる打撃を見せてくれた。横浜創学館も準々決勝で、藤嶺藤沢の矢澤宏太を攻略し、ベスト4。ここぞという場面での集中打が光った。
準々決勝に残った中では藤嶺藤沢の矢澤は強烈な存在感を残した。4回戦の湘南学院戦では6回を投げて9奪三振、最速142キロ。打者としても適時打を打つと、さらに盗塁を決める活躍を見せ、投・打・走で躍動した姿を見せた。まだ日によってピッチングが荒れてしまうのが大きな課題。それでも魅力はたっぷり。今後の進化が気になる投手だ。
4回戦まで勝ち進んだ横浜商は、復活の兆しを見せる夏となった。2回戦では横浜隼人と対戦。横浜に続く実力校として注目された横浜隼人を相手に9対5と快勝。145キロ右腕・樺田魁、俊足巧打・稲妻大成主将を中心とした打線はしぶとさと爆発力を持ったチームであった。この夏の躍進を秋につなげていくことができるか注目したい。
北神奈川では、公立校3校がベスト8!!
宮尾将(慶應義塾)
北神奈川優勝の慶應は初戦から日大高と対戦し、6対1で破ると、毎試合、強打を発揮。特に準決勝の東海大相模戦では7得点。決勝の桐光学園戦でも7得点と県内屈指の投手力を誇る両校を打ち破り、10年ぶりの甲子園出場を決めた。秋は東海大相模に敗れ、春は桐光学園に敗れ、選抜では3得点しか挙げることができず初戦敗退。打てるチームになるために取り組んだ結果がしっかりと身を結んだ。
準優勝の桐光学園は主将の山田陸人を中心に粘り強く勝ち上がったが、またも一歩及ばなかった。まだ谷村 然、冨田 冬馬の両投手など2年生が多く、この秋、優勝を狙えるチームへ成長することができるか。
東海大相模は、主将・小松 勇輝が引っ張るチームは団結力があり、3学年の逸材野手が揃い、執念強さを持ったチームだった。ただ投げれば安心という絶対的な力量を持った投手が最後まで出なかったことが敗退の要因となった。新チームは2年生では遠藤 成、1年生では加藤響、西川 僚祐、山村 崇嘉など才能ある選手が多いので、全国制覇へ向けて、下級生から経験を積んできた選手が成長を見せることができるか注目したい。
横浜商大高は春先から夏にかけて打撃面の進化が目覚ましいものがあったが、投手の平均球速が120キロ台の投手が多く、甲子園まで一歩遠かった。長所である打撃はこのまま伸びていき、投手は強豪校に対抗できる力量を持った投手が浮上することを期待したい。
また、北神奈川は弥栄、相模原、白山の公立3校がベスト8入り。特に相模原は準々決勝の東海大相模戦で、9回裏までリードする試合展開だった。最後敗れてしまったが、奮闘を続ける多くの公立校の指導者・選手に勇気づける戦いを見せた。まだこの3校は2年生が残っており、弥栄・河野翔英投手、相模原・風間龍斗捕手、白山・川村勇生投手と期待の選手がいる。彼らを中心に秋も神奈川の高校野球ファンを沸かせる活躍を見せることを期待したい。
ベスト8の桐蔭学園は春の県大会初戦敗退と悔しい経験を乗り越え強くなった。守備では星野太河、打撃では4番栗林 泰三が中心となってまとめていった。完成度の高い打撃、堅実な守備はさすが名門にふさわしい完成度があった。この完成度をこれからも続けてほしい。
今年は県全体で通してみていくと、公立校の躍進が目覚ましく、さらに2年生の選手が主力となっており、秋の地区予選から活躍が見逃せないチームが多い。
2018年は例年以上に初戦から強豪校同士のぶつかり合いが多く、大会を盛り上げた。さて秋は序盤から白熱とした戦いを繰り広げてくれることを期待したい。
(文=河嶋宗一)