Column

強心臓が武器の小さな左腕。「ピンチが大好き」西武・野田 昇吾が挑む世界の舞台。

2017.11.19

 埼玉西武ライオンズの若き左腕、野田 昇吾。167センチと小柄ながら、最速148キロの力強いストレート、スライダー、シュートを中心に投球を組み立てる中継ぎ投手だ。「ピンチで登板するのは大好き」という彼は、2017年のデータによると、投球の50%近くがストレート。クロスファイヤーを武器に、右打者にも臆することなく内角を突く度胸満点の投球、左右共に被打率が2割を切る好成績を残した。(右.190 左.141)2017年はルーキーイヤーとなった前年の登板数を2倍近く上回る38試合に登板し、防御率1.98の好成績。そして現在行われているU-24日本代表に選出されるに至った。そんな彼の野球人生を振り返っていく。

憧れの左腕の背中を追い鹿児島実へ。そして高校で世界の舞台を経験

強心臓が武器の小さな左腕。「ピンチが大好き」西武・野田 昇吾が挑む世界の舞台。 | 高校野球ドットコム
野田昇吾

 野田は福岡県糸島市に生まれ、九州の強豪校、鹿児島実の門をたたいた。同校野球部は言うまでもなくプロでも著名な選手たちを輩出しているのだが、野田自身が強いあこがれを抱いていたのは、卒業生の杉内 俊哉投手(現・巨人)だ。小学校時代に杉内の野球教室に参加してから、同じ左腕として強くあこがれるようになった。

 杉内の背中を追って入学した形になった鹿児島実では、1年夏から投手としてベンチ入りを果たした野田。2年生の春からはリリーフとしての役割を与えられるようになり、この年の鹿児島大会では4試合に登板しすべて無失点に抑え、チームは甲子園出場を果たした。

 甲子園では全2試合に登板。まず初戦の2回戦、能代商戦は、15対0とリードする9回裏に登板し、1回2奪三振無失点。完封リレーを完成させた。

 次の3回戦、九州学院戦は、先発の用皆 峻が3回4失点の乱調で降板。4回から野田がマウンドを受けロングリリーフした。9回裏に味方が3点を取り土壇場で追いついたものの、10回表で守りのミスから失点を許し、接戦を落とした。野田自身は6回を投げて4失点(自責3)だった。

 新チームに代替わりし、野田はエースとしての役割を得る。2年秋には神宮大会に出場し、3試合に先発、25回1/3を投げて防御率2.13の活躍を見せた。決勝戦では日大三の4番・横尾 俊建(現・日本ハム)に本塁打を浴びるなど、7回1/3を4失点で惜しくも敗戦、しかし準優勝となった。

 3年夏は残念ながら県準決勝で敗退するものの、U-18代表に選出された。予選リーグの台湾戦で、歳内 宏明の後を受けて2番手として登板。近藤 健介(現・日本ハム。アジア選手権U-24日本代表)とのバッテリーで5回を投げて無失点で勝利に大きく貢献。(レポート)持ち前の強心臓で見事な世界デビューを飾ったのだった。

 そして高校卒業後は社会人を経て、2015年ドラフトで西武から3位指名。晴れてプロ野球の道に進んだ。西武の中継ぎ左腕は特に不足していたうえ、抑えの髙橋 朋己が大怪我を負い、計算できる左腕は2015年パリーグ登板数2位の武隈 祥太のみと言っていい状況に陥っていたため(1位は牧田 和久)、野田には即戦力中継ぎ左腕として期待が寄せられた。

 その期待に応え、プロの世界でも度胸を武器に打者に立ち向かう野田。今年の活躍が買われ、山岡 泰輔(オリックス)の代替選手という形ながら、高校以来の世界大会となる、U-24代表に選出された。

 初戦の韓国戦はワンポイントで登板し1人をしっかりと抑えた。台湾戦は1回を投げて無安打2奪三振の好投。ここまで今大会では安打を許さない、中継ぎとしての役割を十二分に果たしている。この大会でさらに感覚とハートの強さを磨き上げ、背中を追い続けた杉内投手にさらに近づいていく、彼の姿をぜひ目にしたい。

(文・編集部)

強心臓が武器の小さな左腕。「ピンチが大好き」西武・野田 昇吾が挑む世界の舞台。 | 高校野球ドットコム
注目記事

仙台育英学園高等学校 上林 誠知 選手 「神様からプレゼントをもらう準備」

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.29

【宮崎】延岡学園と日章学園がともにタイブレークを制して4強入り<県選手権大会>

2024.05.29

【佐賀】龍谷が佐賀商を破って優勝<NHK杯>

2024.05.29

パ・リーグ守護神成績一覧 際立つ則本の安定感!

2024.05.29

【2024年春季地区大会最新状況】北海道は北海が4季連続Vを達成、6月1日は近畿が準決勝、北信越&中国が開幕

2024.05.29

”魔曲”も登場! 9連勝千葉ロッテを支える今季の新戦力

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.04.30

大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘  文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!