【小関順二のドラフト指名予想】阪神タイガース編 「ドラフト戦略の基本理念は『フルスイング』だ!」
阪神タイガース 今季戦績
143試合 78勝 61敗 4分 勝率.561 セ・リーグ2位(10月10日現在)
今年の1位入札は迷いがない
清宮 幸太郎 (早稲田実業)
金本知憲氏が監督に就任してからの阪神は若手野手の抜擢に積極的だ。2016年が新人王を獲得した高山俊を筆頭に北條史也、原口文仁、江越大賀、17年が20本塁打を記録した中谷将大をはじめ新人の糸原健斗、大山悠輔という顔ぶれである。
有言実行タイプの監督が少ない中での若手抜擢は見事という他ないが、阪神のドラフトは伝統的に強打者タイプの高校生の獲得に熱心でないので、大化けしそうな若手が少ない。たとえば16年に他球団に指名された坂倉将吾(広島4位)、細川成也(DeNA5位)のようなタイプである。こういう潜在能力の高い高校卒野手を指名して、金本監督の哲学「フルスイング」を植えつけて世に送り出す、今後の阪神ドラフト戦略の基本理念と言っていい。そういう意味では今年の1位入札は迷いがない。球団上層部も現場も清宮幸太郎(早稲田実・一塁手)の1位入札で統一されているからだ。
17年、一塁に就いた選手は原口53、大山47、荒木郁也38、ロジャース(退団)34、中谷32などで、決め手がないことでは西武、オリックスと大差ないが、顔ぶれが異なる。大山は三塁、中谷は外野が本職なので残るのは原口(来季26歳)、荒木(30歳)。実績を見ても年齢を見ても将来のレギュラー候補とは考えにくいので、清宮を1年目から起用する環境は整えられていると言っていいだろう。
ポジション別に見ると捕手も補強ポイントだ。1位入札は清宮なので外れ1位ないし2位以下で捕手を探すと村上宗隆(九州学院)の名前がすぐ出てくる。1年のときから強豪校の主軸を打ち、2年以降捕手としての経験を積んでディフェンス面での評価も高い。仮に1位清宮、2位村上を獲得できれば、金本監督のめざす強打で相手をねじ伏せる野球が視界に入ってくる。
投手はエース級の成長が見込める大器の獲得を
宮川哲(上武大)
投手力は今季も充実していた。チーム防御率3.29はソフトバンクの3.22に次いで12球団中2位。先発は岩貞祐太、藤浪晋太郎が本調子でなくてもメッセンジャー、秋山拓巳、能見篤史を中心に、来季2、3年目となる小野泰己、青柳晃洋の成長も見込める。リリーフ陣はさらに安定し、マテオからドリスにつなぐ勝利の方程式に桑原謙太朗、石崎剛が加わり、高橋聡文、岩崎優の左腕も60試合以上に登板し、防御率1・2点台を記録している。
補強が緊急でない今だからこそやっておきたいのが将来、エース級の成長が見込める大器の獲得だ。高校生より大学生、社会人の育成に実績のある阪神だけに鈴木遼太郎(東北学院大)、宮川哲(上武大)、近藤弘樹(岡山商科大)、草場亮太(九州産業大)の大学勢に、高橋史典(SUBARU)、柏原史陽(JX-ENEOS)の社会人、さらに独立リーグの沼田拓巳(BCリーグ石川)まで視野に入れた指名をめざしたい。
ちなみに、12年以降の過去5年間で獲得した投手は藤浪、岩貞、岩崎、石崎、青柳、小野など、戦力になっている選手が多い。投手の総勢は17人で、このうち高校生は4人だけ。高校生の育成がヘタというより、数が最初から少ない。昨年は1回のドラフトで才木浩人(3位)、濵地真澄(4位)という2人の高校生投手を指名、これは11年以来5年ぶりのことだった。このうち才木がシーズン終盤に一軍に昇格、2試合に登板して失点していない。それなら今年のドラフトで冒険してもいい。地元兵庫には山本拓実(市西宮)という逸材もいるので才木に続く地元指名を期待したい。
(文・小関 順二)
▼プロ全12球団ドラフト分析はこちらから
広島東洋カープ
横浜DeNAベイスターズ
阪神タイガース
読売ジャイアンツ
中日ドラゴンズ
東京ヤクルトスワローズ
福岡ソフトバンクホークス
埼玉西武ライオンズ
東北楽天ゴールデンイーグルス
北海道日本ハムファイターズ
オリックス・バファローズ
千葉ロッテマリーンズ