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プレイバック選手権 「沖縄のトルネードとスピードスターに沸いた2010年の夏」

2016.05.08


左から履正社時代の山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)、早稲田大時代の重信慎之介(読売ジャイアンツ)、智辯和歌山時代の西川遥輝(北海道日本ハムファイターズ)

 小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還し大きな話題を生んだ2010年の夏。高校野球では第92回全国高等学校野球選手権大会が行われ、沖縄県代表の興南が優勝。沖縄県勢初の夏の甲子園優勝と、1998年の神奈川横浜以来史上6校目の春夏連覇を達成した。そんな2010年の夏をプレイバック。

今をときめくスピードスターが躍動

 個人に目を向けてみると、現在プロでも活躍しているスピードスターが出場している。

 まずは、昨シーズントリプルスリーを達成した、東京ヤクルトスワローズの山田 哲人履正社のショートとして注目を集めた。
初戦となった2回戦の天理戦に3番ショートで出場。5回、ツーベースで出塁するとその後三塁へ進む。二死一三塁の場面で一塁ランナーが挟まれる感に三塁ランナーの山田が本塁へ突っ込み生還。長打力とスピードを見せつける一連のプレーで履正社の夏初勝利に貢献した。

 現在北海道日本ハムファイターズでプレーしている西川 遥輝もその一人。2014年シーズンには盗塁王も獲得したが、そのスピードは智辯和歌山時代から群を抜いていた。
1年生から甲子園に出場。その第90回大会2回戦の木更津総合戦では初安打初盗塁を決め、準々決勝の常葉菊川戦ではスリーベース2本を含め5打数3安打2打点と活躍。走攻守に躍動する1年生にワクワクしたファンも多かった。2年夏も出場し12打数4安打と本大会に強いところを見せる。
最高学年になり故障からも回復、満を持して挑んだ春夏通じて4回目の甲子園だったが、チームは初戦敗退。西川自身もノーヒットと、初出場時の鮮烈な輝きを再び披露することはできなかった。

 また、昨年のドラフトでジャイアンツに2位指名を受け走攻守のレベルの高さ、そしてなによりそのスピードで期待を集める重信 慎之介早稲田実業の一員として大会に出場している。1番・サードでスタメン出場をすると、倉敷商との1回戦ではタイムリースリーベースと2四球。そして2回戦、中京大中京戦で6打数5安打4打点の大当たりを見せる。3回戦では関東一との東京対決となりチームは敗れたが、重信は3安打5打点とまたも活躍。3試合で打率7割5分、12打数9安打19打点という大活躍を見せた。

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沖縄のトルネードが大会を席巻

興南のエースだった島袋洋奨

 大会自体は、春の選抜に続き吹き荒れた沖縄旋風に席巻された。
その主役は、エース・島袋 洋奨(現・福岡ソフトバンクホークス)を擁し、春の選抜を制した興南。春の王者ということで当然マークされるわけだが、それを上回る強さを見せた。

 1回戦の鳴門戦では相手のミスにつけこみ9対0で勝利。2回戦は同じく四国勢の明徳義塾と対戦し、8対2と粉砕。名称が率いる甲子園常連校をものともしなかった。
3回戦では北の強豪、仙台育英と対戦。この試合も早々に先制すると、試合の流れを最後まで渡さずに4対1で勝利。続く準決勝では同じく東北勢の聖光学院に10対3で快勝。注目ピッチャーの歳内 宏明(現・阪神タイガース)をねじ伏せた。

 迎えた準決勝、報徳学園戦。ここまで連投の島袋にもさすがに疲れが見えた。序盤、まさかの5失点。これだけのビハインドを追う展開は、夏を迎えて以来沖縄県大会を含め初めてだった。
5回に慶田城 開我如古 盛次のタイムリーで3点を返すと、6回にも島袋自身のタイムリーで1点を追加し、4対5と1点差に詰め寄る。そして7回、我如古のタイムリーで同点とすると、続く真栄平 大輝のタイムリーでついに6対5と逆転に成功。島袋も3回以降報徳学園に得点を許さず、逆転勝ち。決勝進出を決める。

 決勝の相手・東海大相模のエースは、こちらもプロ注目の一二三 慎太(現・阪神タイガース)。島袋との投手戦が予想されたが、蓋を開けてみると興南の大勝。4回に一挙7点というビックイニングを作ると、6回にも5点を奪うビックイニングを再度作り出す。結局13対1というスコアで興南が初の沖縄県勢夏の甲子園優勝と春夏連覇を決めた。

 2010年夏、興南の優勝で沖縄の高校野球熱の高さが改めて強烈に提示され、全国のファンがその熱に浮かされた。そんな大会だった。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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