横浜DeNAベイスターズ 梶谷 隆幸選手(開星高校出身) 【後編】
前編では、前年から、盗塁数と成功率をアップさせた理由などを梶谷 隆幸選手にお伺いしてきました。今回は、実際の盗塁時の「スタート」「加速」「スライディング」のそれぞれの場面でのこだわりのポイントを教えていただきました。
スタート・加速時・スライディングでのポイント
梶谷 隆幸選手(横浜DeNAベイスターズ)
――では、まずは”スタート”において、梶谷選手が意識していることを教えてください。
梶谷 僕は、盗塁のスタートは、集中力と、頭の中の思考と勇気がバロメーターだと思っています。
スタートするときの集中力。それまでに自分が調べて観察した情報、研究力、そして、勇気。この勇気はめちゃくちゃ大事だと思います。とくに三盗をするときの勇気。自分の中で記憶に残っている盗塁もやっぱり、三盗が多いですね。
また、一歩目は、左足を引くのか、もしくは右足を引いてから走るのか。その2パターンがありますが、どちらが自分に合っているのかを把握することも大切ですね。
僕の場合は、『左足で一歩目をなるべく大きく取ること』をとにかく意識するようにしていますね。
――では、加速時に、意識しているポイントはありますか?
梶谷 あまり身体を起こさないようにはしています。陸上選手がスタートしてから身体を起こさずに、頭も下に下げたまま走るのと一緒で、最初は低い姿勢から走っていくこと。あとは、バッターが一瞬打つときに見ると思うんですけど、走りながら見るときも、身体を起こさないようにというのは意識しています
――スライディング時のポイントはどんなところでしょうか?
梶谷 イメージとしてはベースの手前で滑る。『なるべく近く』というイメージを持っています。
以前、巨人との試合で僕がショートを守っていた時に、鈴木 尚広選手(2014年インタビューvol.1)が代走で出てきて、二盗したんですけど、それがすごいスライディングだったんです。鈴木選手も本当にベースの手前でスライディングをしていましたが、この“ベース近くで”というのが僕の中での理想ですね。
あとは、これは全体的な部分ですが、歩数も日頃から意識しておくといいと思います。入団当初は何気なく走っていたんですけど、ある時、プロ入りして2~3年目くらいの時に、実際は何歩で走っているんだろうって、測ってみたら、13歩目にスライディングをしていたんです。
それからは、『あれ?なんか最近、盗塁が成功しないな』と思って測ったら、12歩半でスライディングして合っていなかったりとか、逆に増えていたりだとか。だから、歩数は調子のバロメーターとして、目安で覚えるようにしています。
高校球児へのメッセージ
梶谷 隆幸選手(横浜DeNAベイスターズ)
――続いて、トレーニングについても伺いたいのですが、スピードアップのためのトレーニングというのは、何か取り組まれていますか?
梶谷 僕は、基本的にウエイトトレーニングをしていますが、スクワット、レッグランジ、サイドランジなどですかね。でも、これは土台を作るトレーニングなので、足を早くするためではないんですが、実際に、体重が増えてもジャンプ力を測ったら、上がっていました。よく、筋力がつくと、スピードは落ちると言われますが、僕はそれは違うと思うんです。
体重が増えても、ちゃんとしたトレーニングをすれば絶対、走力も落ちないですし、いざやってみたらそうじゃなかったので、今でも自主トレの時はちゃんとウエイトトレーニングをして身体の土台を作るようにしています。
――ここまで色々とお話しを伺ってきましたが、そんな梶谷選手が目指す”理想の野球選手”とは、どんな選手なのでしょうか?
梶谷 盗塁はもちろんですけど、ワンヒットを二塁打にするとか、レフト前でも一塁から三塁に行けるとか、そういう向上意識を持った走れる人になりたいなと思っています。
あとは、数字でいえば1シーズンで50盗塁はしたいですね。調子の良し悪しは、誰にでもあるけど、今はムラが大きい時もあるので、1シーズン通して、それを目立たないようにしていきたいですね。
――梶谷選手のように、日々成長できる選手になるために、大事にしている心構えはどんなことでしょうか?
梶谷 自分の意志を持つことだと思います。人に流されないこと。自分の芯の部分はきちんと持っていて、周囲からのアドバイスで聞いたことは、実際にやってみてどうなのかを考えてみる。これちょっと違うなと思ったら、他の引き出しにいれておけばいいし、合うなら参考にしてすればいいと思っています。あとは、人に群れない。周りに流されない。そういうことを僕は大事にしています。
――では、最後に高校球児へのメッセージをお願いします!
梶谷 走塁を上達させたい場合は、とにかくピッチャーをよく見ることだと思います。高校生は相手投手の映像もないので、試合前のピッチャーをよく観察する。試合中でも、誰かが二塁ランナーで出たら、二塁への首振りの回数をみるとか、パターンとかクセを常に見るようにする。
そして、実際にスタートを切るときは、勇気を持つこと。これが一番大事で、盗塁の基本だと思っています。ちょっとでも躊躇したら、遅れちゃうので、頭の中で全部いくつもりで、全部走るつもりで、一球一球臨めばいいと思います。
梶谷選手、とても参考になるお話しをありがとうございました!