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先取り!2014年ドラフト候補特集(高校生編)投手編

2013.10.27

2014年ドラフト候補特集(高校生編)投手版2013年10月27日

 来年の高校生投手は楽しみな年である。全国各地で逸材が出てきているが、この世代の中心は2人の男が中心になるだろう。甲子園優勝投手の高橋 光成前橋育英)、安楽 智大済美だ。

2014年のトップ2! 高橋光成(前橋育英)と安樂智大(済美)

高橋光成選手(前橋育英)

 高橋は1年秋から140キロ台の速球を投げる長身右腕として注目されていた。187センチの長身で、140キロを投げるとなれば、素材としては魅力的だ。
 春季関東大会決勝戦では、144キロを計測した直球に加え、曲がりの大きいスライダー、打者の手元で大きく落ちるフォークといい、フォームのバランスも良い。完成度の高い投手という印象を受けたのだ。
 投球以外のクイック、フィールディングもいい。運動能力も高く、これは安楽に続く投手という印象を受けた。

 その後、高橋は群馬大会を勝ち抜き、甲子園初出場。甲子園では初戦、2回戦を完封勝利を上げ、そして3回戦の横浜では1失点完投勝利をあげ、その勢いで甲子園優勝投手となった。

 関東から何が変わったかといえば、変化球の制球力、精度がレベルアップし、投球の幅が格段に広がった。春から大きく成長したのは自分の課題をしっかりと把握し、それに向けて取り組むことができる素質を持っているのが大きなポイントだ。

 秋大会はまさかの県大会初戦で敗れてしまったが、ここまでの疲労の蓄積もあったようで、コンディションを上げる良い機会だったと思う。

 この冬、しっかりと鍛えなおして、今年よりもパワーアップした姿を見せてもらいたい。今の投球センスに、高校生を圧倒するようなストレートを磨き上げたとき、ドラフト1位候補は確実、競合候補になるのは間違いない。

安樂智大選手(済美)

 安樂(関連記事:インタビュー 第122回 済美高等学校 安樂 智大 投手)は投手としては最速157キロの直球、縦に鋭く落ちるスライダー、スライダーを武器にする剛腕。18Uワールドカップではコントロールが冴え渡り、ベネズエラに完封、キューバを8回無失点とパワフルな打者が揃う中南米の選手を圧倒するほどの投球、打者としてもバックスクリーンに打ち込む長打力。

 こんな逸材がいたら多大な期待をしてしまう。ドラフト的な観点で見れば、競合は確実。あと1年で、プロ1年目から10勝挙げられるような投球術、制球力、セルフコントロールを身に付けること。
 選手としての器の大きさ、いろいろな方の思いを背負っている姿を見ると、ポジションは違えど、松井秀喜を思い出させるのだ。その思いに応えようと、甲子園はやや消化不良な投球に終わってしまった。
 選抜は絶たれた形になったが、100パーセントの力を発揮できるためにコンディションをしっかりと整えてほしい。フルに力を発揮できる状態になれば、夏の甲子園優勝を目指せる存在になるはずだ。

[page_break:好投手が揃う東北地区・関東地区]

好投手が揃う東北地区・関東地区

小島和哉選手(浦和学院)

 高橋、安楽以外にも来年の高校生は好投手が多い。人材という面では近年でもトップクラス。秋季大会を見るたびに彼らの才能の高さにほれ込んでしまう。まずは北海道から紹介していきたい。

 北海道では2人の斎藤に注目だ。まず1人目の斎藤は、全道4強の白樺学園斎藤 敦哉。183センチの長身から振り下ろす速球、スライダーを武器に準々決勝の苫小牧中央戦では13奪三振をあげた。もう一人の斎藤、齋藤 綱記北照)は140キロ近い速球を計測する左の本格派左腕だ。
 東北地区は投手のレベルの高さは全国的に見てもトップかもしれない。松本 裕樹盛岡大附)はこの夏、最速147キロを計測した右の本格派。投球の完成度では東北地区ではトップクラス。選抜は厳しいが、来年春は多くのスカウトから注目を浴びるのは間違いない。

 福島では140キロ右腕・菅野 秀哉小高工) 、最速147キロ右腕・大和田 啓亮日大東北)。東北大会で名を上げたのは大和田で、東北大会では140キロ台の速球を連発。来年も注目される存在だろう。国体で自己最速の143キロを計測した佐藤 和将日大山形)も面白い存在だ。140キロ台を計測する右腕が多く、来年は見所のある地域であることは間違いない。

 関東地区は右左の好投手が多い。まずは左投手から紹介しよう。そのトップが小島 知哉浦和学院)と伊藤 将司横浜)の2人だ。この2人、球速表示以上のキレを感じさせるストレート、コントロールの良さ、より速く見せる出所が見難いフォームと共通点は多い。だが投球の軸は違う。小島の場合は内角ストレート、伊藤の場合は外角ストレート。伊藤は高めの釣り球を使う傾向にある。小島は県大会敗退で、選抜は絶たれたが、コントロールの良い左腕からプロを意識出来る左腕へ成長を遂げるか。伊藤は勝てる投手。伊藤も投手の基本的な能力は満たしているので、小島と同じく速球のスピードを上げること。伊藤は選抜まで勝ち進めば、自然とスカウトへアピールできる機会が得られる。強豪が多い関東大会を勝ち抜けられるか注目してみたい。

三輪昂平選手(日大三)

 埼玉にはもう一人、プロを意識出来る左腕がいる。むしろスカウトはこちらに興味があるかもれないその名は上條 将希市立川越。伊藤、小島と違って体を目一杯使って振り下ろす左の本格派で、速球は140キロ前後を計測する。そして大きく曲がるスライダーも魅力で、準決勝では春日部共栄を完封勝利し、関東大会出場を決めた。イケイケの投球スタイルの分、相手から細かい野球を仕掛けられたときに持ちこたえる我慢強さがあるか。左腕は身長の低さはそれほど問題にならないので、さらにパワーアップしてほしい投手だ。
 そして関東大会のアピール次第ではドラフト候補に名乗り上がるかもしれない田嶋 大樹佐野日大)は、180センチの長身から振り下ろす140キロ台の速球が光る。また素材としてみるならば、田中 裕貴)も188センチの長身から振り下ろす威力ある直球は魅力があり、面白い。都内では好左腕・小林 大東海大菅生)も見逃せない存在だ。

 右投手も関東地区は好投手が多い。東海大相模の140キロ右腕コンビに注目。最速145キロの直球、切れ味鋭いスライダーを武器に精神的な強さがある青島 凌也(2年)、190センチの長身から振り下ろす速球が武器の佐藤 雄偉知東海大相模)も面白い、千葉では140キロ右腕・青野 善行市立船橋)、威力ある直球が光る菅谷 元紀(市立柏)、140キロ台の直球、キレのあるスライダーを投げ込む重田 倫明千葉英和)も見逃せない。

 東京都では最速149キロ右腕・三輪 昂平日大三)は新チームのエースになった秋では140キロ台の直球、落ちる変化球を武器に敵なしの投球。本大会1回戦負けに終わったが、140キロ台の直球を投げ込む四谷 洋明国士舘)も見逃せない存在だ。ベスト8まで勝ち進んだ都立小山台伊藤 優輔は球速的なモノは140キロ半ばだが、投球センスが光る好投手。ブロック予選で敗退したが、140キロ台の直球、フォークを武器に三振が狙える鈴木 優(都立雪谷)も候補になるだろう。

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[page_break:小野郁(西日本短大附)、飯塚悟史(日本文理)など速球投手が揃う!]

小野郁(西日本短大附)、飯塚悟史(日本文理)など速球投手が揃う!

 東海地区も楽しみな投手が多い。静岡では投手に専念した木村 聡司常葉橘)は140キロ台を計時。さらに投手としての才能を伸ばすことができるか注目。好投手を輩出する静岡からは辻本 宙夢は最速142キロのストレートで押す投手だ。140キロ右腕・田中 空良豊川)、最速145キロを計測する本格派右腕・石垣 幸大いなべ総合)の名前が挙がっているが、人材豊富な東海地区。まだ名前が挙がっていない逸材が続出することだろう。

岸潤一郎(明徳義塾)

 北信越地区では優勝した日本文理から飯塚 悟史小太刀 緒飛の2枚看板が売り。飯塚は185センチの長身を生かした投げ方から140キロ台の直球、縦に鋭く落ちるスライダーを武器にする。まだ恵まれたポテンシャルを生かして切れていないところはあるが、大化けすれば、来年のドラフト候補に挙がる逸材。小太刀は手足が長く、柔らかい腕の振りから繰り出す130キロ後半の速球が光る。小太刀は秋では野手中心だったが、マウンドに登れば、試合を作れる投手なので、飯塚からエースナンバーを奪うつもりでやってほしい。

 近畿地区の逸材では立田 将太大和広陵)に注目だ。1年秋にエースとして奈良県大会を勝ち抜き、近畿大会でベスト8に導き、28年ぶりの選抜甲子園出場に導いた。140キロ台の直球、スライダー、チェンジアップをコントロールよく投げ分ける右の実戦派右腕。140キロ右腕・新免 慧大)、最速144キロ右腕・松本 航明石商)と兵庫県からも逸材が多い。3年ぶりに近畿大会へ出場したPL学園鈴木 達馬澁谷 勇将谷 健人と好投手が揃う。和歌山では140キロ右腕・岡本 真幸海南)に注目。近畿大会では履正社戦で好投を見せた。

 中国地区では140キロ台の直球を投げる右腕・恩田 和希持田 隆宏の開星の2枚看板。140キロ前後の直球をマークする古賀 尊広陵)に注目。同じ広島県では山岡 就也広島新庄)は田口 麗斗に続く左の好投手で、140キロ台を計測し、見逃せない逸材。

小野 郁(西日本短大付)

 四国地区では安樂以外の好投手を探していくと、経験豊富な岸 潤一郎明徳義塾)(関連記事:インタビュー 第160回 明徳義塾高等学校 岸 潤一郎 選手)は回転の良い140キロ台のストレートは実際に球場で見ると栄えるストレートで、チェンジアップ、スライダーを巧みに投げ分け、強力打線を抑える投球術が魅力。

 酒井 祐弥高知)は前田健太を彷彿とさせるような縦のフォームから140キロ前後の速球、スライダー、カーブを投げ分ける。そのまま急速を伸ばしていけば、ドラフト上位候補が期待出来る逸材。

 139キロ右腕・髙橋 謙太生光学園)、同じく徳島では名西 宥人(徳島池田)は最速139キロ。さらに県大会3位決定戦ではノーヒットノーランを演じており、来年の徳島を代表する逸材といえよう。

 香川県では最速147キロを計測する本格派左腕・塹江 敦哉高松北)も注目。愛媛県では済美を破った西条の松田 蓮は167センチと小柄ながら135キロ前後を計測する右腕だ。

 九州地区は好投手揃いの地区である。福岡では最速148キロを計測する右の本格派右腕・小野 郁西日本短大附)、188センチの長身から140キロ台の直球を計測する笹渕 塁嗣筑陽学園)、左の好投手・濱田 駿東福岡)と好投手が多い。

 熊本では192センチの長身右腕・諸冨 将士(熊本城北)、140キロ後半まで速球を伸ばしてきているという善 武士多良木)、東浜 巨(現ソフトバンク)を彷彿とさせるようなフォームから130キロ後半の直球を投げ込む山城 大智沖縄尚学)もレベルアップすれば、九州地区を代表する投手になる可能性を秘めている。

 全国的にみると逸材が多く、見逃せない逸材が多い。ただ全国は広く、まだ見ぬ逸材が出てくるはず。今後も全国各地から逸材を見出していきたい。

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(文=編集部河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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