神奈川の公立校・川和濱岡 蒼太投手は、昨年から140キロ近い速球と多彩な変化球を投げわけ、スカウトから注目を浴びていた左腕だ。この春、県大会初戦の日大藤沢戦で完投勝利。高卒プロ入りのためには課題だった直球の最速も常時140キロ台を計測し、評価を高めた。

 しかし、3回戦の藤沢翔陵戦、準々決勝の三浦学苑戦ではいずれも常時130キロ台、藤沢翔陵戦の最速は136キロ、三浦学苑戦では最速139キロに終わってしまった。

 濱岡が目標とする高卒プロ入りするには一定以上の球速が必要だ。昨秋、東海大相模相手に8回途中まで1失点に抑えた試合では、幅広いコンビネーションを見せ、投球の間合いを変えたり、牽制でアウトにするなど、クレバーな投手という印象があった。一方でストレートは常時130キロ台と、高卒プロを狙うには物足りなさを感じた。半年を経て、今春の日大藤沢戦では球速アップした姿を見せ、支配下指名もあり得るという声もあった。

 ただ、3回戦以降はフォームを崩しているのか、持ち味を発揮できなかった。ネット裏から見ると、軸足の体重の乗せが良くなく、押し出すようなリリースになっているのが気になった。突っ張って投げる形になるので、ストレートが走らないだけではなく、変化球の精度も落ちてしまう。準々決勝の濱岡は小手先で使えるカットボールに頼った投球だった。そのカットボールも高めに浮いてしまい、同時に投球も単調になり、3回に一挙6点。計8点を失う結果となってしまった。濱岡は「三振やボテボテのきれいなアウトにこだわりすぎた」と語るように、頭脳を尽くして打者を抑える濱岡らしさがなくなったような感じがあった。

 濱岡は「間合いを使ったり、ゴロを打たせたり、仲間を信じてフライを打たせるなどそういうアウトの取り方をするべきだったかもしれません」と反省の弁を述べた。プロにいくには一定のスピードは必要だが、濱岡本来の持ち味は見失ってはいけないと思う。体型、投球スタイル的にも、パワーピッチングで押す投手ではない。クレバーさが全面に出る中で、力強いストレートを投げられる投球が理想だ。

 そのためにはフォームの見直しが必要だ。切れのあるストレートと縦変化のスライダー、カーブなどをしっかりと投げられる溜めが効いたフォームを取り戻してほしい。昨秋の東海大相模戦はフォームのリズム、連動性も非常に良かった。

 今春の3回戦、準々決勝の投球では、高卒だと育成枠ギリギリ指名という印象を受けたが、継続的に追いかけている球団は濱岡の好調時をチェックしている。夏は復調した姿を見せれば、高卒での指名は現実的になるだろう。