<春季東京都高等学校野球大会:大東大一2-1岩倉>◇14日◇3回戦◇スリーボンドスタジアム八王子
大東大一の宮城 智行監督は、初戦(2回戦)で秋に勝っている新宿と再度対戦した時は、前の晩、なかなか寝付けなかったが、岩倉相手には、「格上なので、よく眠れました」と言う。センバツで優勝したこともある岩倉に対し、大東大一は東東京大会の準々決勝が最高成績。実績の差は歴然としているが、両チームががっぷり四つに組んだ戦いで終盤勝負に持ち込み、最後は逆転勝ちをして夏の大会、初のシード校になった。
大東大一は左腕のエース・辻井 晴斗(3年)は、三者凡退は6回と9回だけ。ほぼ毎回走者を背負った投球になったが、「ランナーを出しても、あとは執念で投げました」と辻井は言う。
左腕だと制球が不安定な投手もかなりいるが、辻井は四死球は2個だけ。最速は133キロほどだが、伸びのあるストレートにスライダー、チェンジアップなどを有効に使い、テンポよく投げた。投球のリズムがいいから、守りやすく、遊撃手の田中 悠雅(3年)らが、たびたび好守で辻井を救った。
大東大一の宮城監督は春日部共栄の出身で、3月に監督を勇退した本多 利治氏の指導を受け、本多氏から教わった守りからの野球を徹底してきた。
ただ3回表だけは守備がやや乱れた。二死一塁から4番・岩﨑 佑志外野手(3年)の左前安打に、左翼手の失策も重なり二、三塁となり、5番・内田 航友内野手(3年)の内野安打で岩倉が1点を先制した。
岩倉は投手陣が充実している。背番号11の佐竹 翔太(3年)が先発し、4回を被安打2の無失点に抑える。さらに5回裏から登板した2番手の背番号13・佐藤海翔(2年)の投球が圧巻だった。メジャーリーグの伝説の速球投手ノーラン・ライアンのように足を高く上げたモーションから力のある球を投げ、3回を投げて奪三振3で1人の走者も出さないパーフェクトピッチングだった。
岩倉とすれば、予定の投手リレーなのだろう。8回裏からは経験が豊富なエースの上原 慶大(3年)がマウンドに上がった。一方大東大一は9番・石寺桜侍郎から攻撃が始まり、上位に打順が回るこの回がチャンスだと、宮城監督は選手にはっぱをかけた。そして石寺は内野安打で出塁する。その後、犠打で二塁に進んだものの二死。3番・佐藤 友哉内野手(2年)は、三振をしたものの、振り逃げで一塁に行き、大東大一は二死一、三塁のチャンス。そこで4番で主将の佐々木 陽内野手(3年)を迎える。佐々木が3球目を叩くと、打球は右中間を破る逆転二塁打となった。「高めのストレート。芯でとらえました」と佐々木は言う。この二塁打が決勝打になった。「いつもおいしいところを持っていかれていたので、うれしいです」と、佐々木は逆転打を打った喜びを語る。
9回表の岩倉の攻撃を、辻井は三者凡退に抑え、2-1で大東大一が劇的な逆転勝ちで4回戦進出を決め、同時に夏の大会のシード校になることが決まった。辻井は完投して137球を投げ、9安打を打たれたものの、失点は1,自責点0の好投で勝利に貢献した。歓喜の大東大一であるが、主将の佐々木は、「偉そうにしないで、謙虚で泥臭くやっていきます」と気を引き締める。
東東京は、二松学舎大付、関東第一が早々に敗れ、強豪を分散させるというシード校の意味はほとんどなくなっているが、シード校は強豪と認識されるステータスでもある。全国大会で優勝したこともあるラグビー部が有名な大東大一であるが、野球もしっかり存在感を示したことになる。
一方、岩倉は最後は頼みのエース・上原が打たれ逆転負けしたが、力のあるチームであることは確かで、東東京にまた1校、ノーシードの強豪が誕生した。
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