試合レポート

山村学園vs埼玉栄

2017.09.29

山村学園、新たな歴史を残す!二季連続のベスト4入りを達成!

山村学園vs埼玉栄 | 高校野球ドットコム
木内輝(山村学園)

 1日順延となって空いた埼玉県大会準々決勝。山村学園vs埼玉栄の一戦。来夏は南埼玉のライバルとして戦うことになる両チームだが、その前哨戦とも言っていこの試合は試合序盤から激しい攻防。

 2回表、二死二、三塁から山村学園は9番大塚の中前安打で先制。さらに1番木内輝が左中間を破る長打。これで三塁走者が生還し、そして一塁走者・大塚も狙うがアウトとなった。ここで埼玉栄の先発左腕・嶋田航は降板。島田はコンスタントに130キロ前後は出ていて、変化球の切れ味も悪くない。ただ甘く入った直球を見逃さない山村学園の打撃力はかなり高いレベルに達している。3回表からエース・米倉貫太を投入し、山村学園の勢いを防ぎにいく。3回裏、一死一、三塁のチャンスを作り、5番井上の中前適時打で1点を返し、試合の流れを取り返す一打に見えたが、その後の1本が出ないことが山村学園に勢いを与えた。

 4回表、一死から敵失、8番和田の右前安打でチャンスメイク。9番大塚はきっちりと犠打を送り、二死二、三塁となって、木内はインローに決まる142キロストレートを見事に右中間へ打ち返し、貴重な2点適時打。5回表、6番櫻澤の適時二塁打で1点を追加し、5対1と点差をつけたが5回裏、埼玉栄は、一死三塁から6番茶屋の内野安打で1点を返す。

 6回表、木内がまたも二塁打を打つ。これもイン寄りのボールで簡単には打てない球種だが。米倉の直球に全くふりまけておらず、しっかりとボールを見極めて打ち返すことができている、前チームでは下位をうっていた選手だが、当時の印象ががらっと変わるぐらい良い選手だった。今日の試合に限っていえば、西巻賢司仙台育英)より輝いて見える。スクエアスタンスで構え、グリップを肩の位置に置いて背筋を伸ばしてバランスよく構える姿はいかにも好打者という雰囲気を漂わせる。


 トップの位置が安定し、強いスイングができる。140キロを超える速球をしっかりとコンタクトする能力、ファーストストライクから打っていく積極性は素晴らしい。二塁守備も逆シングル、シングルハンドで捕ったりするなど、守備のリズム感が良い。

 埼玉栄の米倉はこの日はストレート中心。本来、良いカーブと縦スライダーがあり、緩急と縦変化が使える投手だが、どうも勝負所の制球力が甘い。ストレートは常時135キロ~140キロで、最速142キロを計測していたが、山村学園クラスの打者となると一辺倒では通用しない。

 6回以降ではスライダー、縦スライダー、カーブの割合を増やし、山村学園の打者を抑えていった。最初からこのような配球ができていれば…。悔やまれる配球だった。

 山村学園の先発・和田は、試合序盤、何度も粘られながらも、球数が重なる。だが気持ちが折れないのがこの投手の強み。腕が長く、開きが抑えられたフォーム。球速は、130キロ前後なのだが、低めに辛抱強く投げ、スライダー、カーブ、チェンジアップが低めに決まることで、強打の埼玉栄打線を打ちとっていった。

 そして9回裏、埼玉栄打線を抑え、2失点完投勝利で山村学園がベスト4入りを決めた。山村学園埼玉栄の強力投手陣を攻略して、5得点。この長打力は本物といっていいだろう。守備力、打撃力、投手力、すべてにおいて数年前と比べ向上している。また和田のように、中学時代から実績のある選手が入学してきた。これは近年の実績に加え、岡野 泰崇監督の熱血指導で、中学時代、実績がなかった選手をたたき上げで育て上げた指導力の高さを慕って山村学園の門を叩いているというのもあるだろう。山村学園の選手たちは表情が良い。明るく、活気がある。これは人々を惹きつけるには重要な要素である。

 次は夏の準決勝で対戦した花咲徳栄と対戦。リベンジする機会が早くも迎えた。準決勝ではどんな戦いを見せてくれるだろうか。

(文・写真=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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