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番狂わせ、劇的サヨナラなど好試合が多かった2016年の東京高校野球!ライター・大島氏が総括!

2016.12.24

 2016年の東京都は優勝・関東一、夏は東東京優勝・関東一西東京優勝・八王子優勝・早稲田実業で幕が閉じた。どの大会も決勝戦に行くまでの試合が見所があり、そしてどの大会の決勝戦も大きく盛り上がった。そんな今年の東京都を振り返っていきたい。

清宮・早稲田実業の苦杯と成長

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清宮 幸太郎(早稲田実業)

 今年も、東京のみならず、全国的にも最も注目されたのは、早稲田実の怪物・清宮幸太郎関連記事であった。昨年と比べ力みがなくなり、打者として、一段とレベルアップした。しかし今年は、春夏ともに清宮が甲子園に出ることはなかった。対戦校の監督からは、「早実は、対策を立てやすい」という声をよく聞いた。清宮と、夏からは1年生の野村大樹関連記事が加わったが、この2人をマークをしていれば、なんとかなると見ているチームもあった。

 春季都大会では、都立昭和の左腕・田舎凌のスローボールに多くの打者が苦しみ、4番小谷英志の満塁弾に沈み、は、八王子の総力戦に屈した。必死に早稲田実業を破ろうとする両チームの執念が上回っていたのだ。

 それでもは、主将に就任した清宮が先頭に立ってチームを引っ張り、各打者の成長が見せて、打線に厚みが出て来た。さらに中川広渡赤嶺 大哉らの1年生投手の成長に加え、明治神宮大会では、不振だった服部雅生も腕が振れるようになり、展望が開けた。センバツでの活躍を期待したい。

実力接近、好試合が多かった夏の大会

 今年の特徴は抜き出たチームがなく、戦力が拮抗していた。その中で、春の都大会夏の東東京大会を制した関東一は、走攻守のバランスが優れていた。西東京を制した八王子も、「ありんこ軍団」の名の通り、打線の上位下位に、ほとんど差がなかった。例年だと、準々決勝以降は実力のあるチームが本領を発揮しはじめ、健闘してきたチームは力尽きて大差になることが多かったが、今年はそうした試合が少なく、特に東東京大会は準々決勝以降の7試合は1点差試合が4試合と見応えがある試合が多かった。

 その一方で、1年生から甲子園で活躍した大江竜聖関連記事今村大輝関連記事三口英斗を擁する二松学舎大附は、永井敦士関連記事ら力のある下級生も加わり、実力は全国レベルであったが、力がうまくかみ合わなかった。

 東京の高校野球は、早稲田実に加え日大三帝京が引っ張ってきたが、日大三は本来のエースである小谷野楽夕が故障するなど、投手陣の柱が定まらず、勝ち切れなかった。それでも日大三は、秋は櫻井周斗がエースに成長。都大会の決勝戦では縦スライダーを武器に、早稲田実の清宮を5打席連続三振に仕留めるなど、存在感を示した。

 帝京も1年生の松澤 海渡が、秋にはエースらしい投球をするようになった。ただ、1年生の夏から4番を打っている岡崎心は、負傷で秋は欠場。負傷の多さが気になるところだ。

[page_break:力強さが増した都立校]

力強さが増した都立校

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関根 智輝(都立城東)

 今年の東京都で接戦が多かった背景にあるのが都立校の存在。まずは好投手・関根智輝(慶應大進学関連記事)擁する都立城東昨秋は8強、今年もは8強、は4強まで進んだ。さらに都立江戸川は、は8強に進出。都立日野は、は4強に進出するなど、都立勢の活躍も目立った。

 特に今年はそうした実績以上に、戦いぶりが印象に残るチームが多かった。帝京に敗れはしたが、9対10まで追い上げた都立東大和、自慢の打線で早大学院などに打ち勝った都立江戸川は、都立城東東海大高輪台帝京に競り勝ち、前評判は高くなかった都立三田が、日大豊山善戦した。は、都立雪谷佼成学園大逆転で勝利し、都立日野八王子コールドで破った試合などが印象的だった。

 都立校は、練習環境に恵まれず、打線が非力であることが多かったが、近年はゲージでしっかり打ち込んでおり、力強さが出て来た。都立城東の監督だった平岩 了監督は、この春、都立豊多摩に異動した。選手の意識の違いに平岩監督はカルチャーショックを感じたが、秋は都大会の2回戦都立日野に善戦するなど、力を付けてきた。都立城東の監督には、東大野球部出身の池上 茂氏が就任。要所を抑えつつも、自主性を重んじる野球で成果を出した。人事異動は都立校の宿命であるが、勢力図を変える可能性がある一方で、底辺を広げる効果ももたらしている。

日本ウエルネスの台頭と東亜学園の復活

 勢力図といえば、今年は東京日本ウエルネスが、新たな強豪として台頭してきた。春季都大会でベスト16になり、は初のシード校になると、5回戦まで進んだ。監督の美齊津 忠也氏は、青森山田の監督時代から投手の育成には定評があり、投手陣の粒が揃っている。またキャッチボールのやり方からしっかり指導しており、守備の基本ができているのも強みだ。

 ベテランの上田 滋監督率いる東亜学園は、は4強、関東一に惜しくも敗れたが準優勝するなど、久々に存在感を示した。実績にとらわれず、調子のよい投手を起用する采配が光った。
秋からは、過去センバツで2度4強に進んでいる永田昌弘氏が11年ぶりに国士舘高校の監督に復帰。秋季都大会では4強に進んだ。

 この秋は雨が多く、秋季大会の日程に影響が出たうえ、練習試合も不足していた。そのためか、例年以上にチーム作りが遅れ、ミスで負けるチームも目立った。それは逆に、来年の春以降、新たなチームが台頭してくる可能性も示している。

第100回大会、2020年東京五輪に向けて

 来年の夏は第99回大会、再来年は第100回大会になる。1年生は第100回大会の主役になる。関東一の強打の捕手・石橋康太、守備のいい東海大菅生田中幹也、アメリカ育ちの西村達貴日大豊山)など、個性的で素質のある1年生が多い。来年は、さらなる新星が飛び出してくるに違いない。さらにその先の2020年。東京で五輪が開催され、野球も競技種目に復活した。狭き門ではあるが、早実の清宮など、東京の球児もその舞台で活躍することを期待したい。

 その一方で懸念材料もある。東京五輪を期に、神宮外苑の再開発も予定されている。[stadium]神宮第2球場[/stadium]は、いつまで使用できるか分からない。さらに2020年は[stadium]神宮球場[/stadium]の使用も大幅に制限される。清宮が登場する試合は、どの球場にも大勢の観客が詰めかけているが、早稲田実の試合以外でも観客は多く、東京の高校野球人気は定着した感はある。しかしながら、[stadium]東京ドーム[/stadium]と[stadium]神宮球場[/stadium]以外は、都内に1万5000人以上を収容できる球場はない。

 東京五輪のためスポーツ施設の建設が相次ぐ中、新球場の建設は厳しいとは思う。それでも、新球場設置の必要性を、世間に伝える必要がある。
第100回大会と、東京五輪。来年は希望の中にも、課題に直面した年になりそうだ。

(文・大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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