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強力打線を作り、全国の中学生をスカウティング…健大高崎 日本一を支えた敏腕コーチの最後の春 選手たちが帽子に書き込んだ「熱い思い」

2024.04.01


青柳監督(左)と肩を並べる赤堀 佳敬コーチ(右)※写真は2021年取材時のもの

中学時代のスタイルをむやみに否定しない

また、選手たちの指導で大事にしていることは、中学時代まで培った野球観、技術を否定しないこと。
「我々は預かっている立場なので、まずは今までやってきたことを尊重します。その上で、中学の指導者の方にどう育てていったのかを聞きながら、打撃指導に入ります。中学時代にやってきたことと我々が教えることをうまくミックスして、新しい形で勝負してほしいと思っています。中学時代にやってきたことが色濃く出る選手もいれば、我々が教えたことが色濃く出る子もいます。いろんなパターンはありますが、そういうスタイルで教えています」

そんな赤堀コーチの熱心なスカウティングは中学生の心にも響くようになった。
一塁手の森山 竜之輔内野手は「赤堀さんがグラウンドに来るまで健大高崎の存在を知りませんでした。実際にチームを見たら、小澤さんたちの代がホームランを何本も打っていて、強打が凄かった。自分もそういう打者になりたいと思って健大高崎に進むことを決めました」

森山だけではなく、今の3年生たちは健大高崎の強打に惹かれて入学してきた。彼らが日本一を目指して取り組む中、赤堀コーチは自らの進路を考えていた。
「今は健大高崎OBの若い子たちがコーチになってきています。今後はそういうコーチが増えると思っていますし、自分がいつまでもこのポジションにいるべきではないと思っていました。健大高崎が今後発展するには、OBが中心になるべきだと思っていました。また、自分が尊敬する関口先生、青柳監督はともに31歳で監督になっていたんです。自分は4月1日でその年齢になります。私も監督として挑戦したい思いになってきました」

森山 竜之輔(健大高崎)※写真は過去の取材より

帽子に書いた「赤堀さんのために」

そして縁もあって、この4月から静岡の磐田東の監督に就任することになった。
3月にその話を聞いた選手たちは帽子のツバにマジックで「赤堀さんのために」と綴った。
「赤堀さんがいなかったらここまで来ていないですし、日本一の戦力、これほどの選手を揃えたのは赤堀さんの力だと思っています。秋も勝てない時は自分たちのことを信じて『大丈夫』といってくれました。優勝して、赤堀さんを胴上げして静岡の高校に送り出したいと思っています」(箱山 遥人捕手)
「赤堀さんには、打てない時でもずっと励ましてもらっていました。『大丈夫、大丈夫』と。不振を乗り越えることができたのは赤堀さんの存在が大きいです」(田中 陽翔遊撃手)

大会中、帽子のツバに書かれた言葉を知った赤堀コーチは目をうるませた。
「今大会、こいつらのせいで涙もろくなりました。まだ体が小さくて、ユニフォームがダボダボの時から知っているので…。入部説明会の時のことを思い出します。彼らの目つき、表情を見て、日本一が狙えるんじゃないかなと初めて思いました」

そして決勝戦では昨年のセンバツに敗れた報徳学園を3対2で破り、初優勝を成し遂げた。田中は真っ先に赤堀コーチのもとに駆け寄って報告したという。
「赤堀さんとは中学1年生のときに出会いました。磐田東の監督に就任するという話を聞いた時は、悲しい思いが一番だったんですけど、この甲子園でいい思いをして、胸を張って静岡に行って欲しいと思いました。優勝をプレゼントすることができてうれしいです」
森山は「打てない時や辛い時もあったんですけど、赤堀さんにずっとお世話になっていたので、その人に優勝を届けられたのが嬉しいです」と喜んだ。
赤堀コーチは胴上げも味わった。
「もう本当に言葉が出ないですよね。子どもたちに出会えて本当に幸せだなと思いました」

健大高崎は青柳監督がコーチや、トレーナー、外部指導者をマネジメントしながら組織運営するチームだ。夏、追われる立場となった健大高崎の新たなストーリーが始まる。

優勝した健大高崎 ※写真=東京スポーツ/アフロ

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この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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