試合レポート

智辯学園vs大阪桐蔭

2023.05.27

智辯学園、スラッガーへ化けたトップバッターの大活躍により、2年ぶりの大阪桐蔭撃破

智辯学園vs大阪桐蔭 | 高校野球ドットコム
本塁打を打つ松本大輝(智弁学園)

<春季高校野球近畿大会:智辯学園8-6大阪桐蔭>◇27日◇1回戦◇大阪シティ信用金庫スタジアム

 智辯学園(奈良)vs大阪桐蔭(大阪)の一戦。このカードは毎試合、激戦となるが、今回も最後まで見逃せない激戦が展開された。

 智辯学園は全国トップレベルの破壊力を誇る打線だった。各選手のスイングスピード、打球速度が段違いだった。

 その中でも特に光っていたのが、1番・松本 大輝外野手(3年)だろう。大阪桐蔭の大型左腕・安福 拓海投手(2年)が投じた高めに入る変化球を思い切り振り抜いて右翼へ三塁打。ここから打線が繋がり、二刀流でセンス抜群の中山 優月内野手(3年)の適時打、5番・池下 春道内野手(3年)の適時三塁打、7番・高良 鷹二郎捕手(3年)の投前適時打も合わせて、4点を先制する。

 2回には松本が大阪桐蔭の2番手・平嶋 桂知投手(2年)から右翼席へ本塁打を放った。これで高校通算25本塁打となった。

 その後、5回までに5対4と1点差まで追い上げられるが、智辯学園は6回にも3点を追加。8対6まで2点差まで迫られるが、見事に逃げ切り、21年のセンバツ以来、2年ぶりの大阪桐蔭撃破となった。

 松本は第1打席に三塁打、第2打席に本塁打をマーク。第5打席はこの日、142キロをマークした大阪桐蔭松井 弘樹投手(3年)が投じた内角直球を見事に振り抜き、左中間を破る二塁打として、4打数3安打とした。智辯学園の小坂監督は「松本が打線に勢いをつけてくれた」と評価した。

 181センチ、86キロと恵まれた体格で打球速度、飛距離が段違いだ。この冬場はウエートトレーニングと、食事量を増やして増量。一時期、91キロまで増えたが、「体が重くてうまく動けなかった」と86キロまで絞った。そしてこの試合の本塁打で春から10本目。大きく成長した。

 大阪桐蔭の投手に対応できた理由として、「ずっと前から始動を早くして打つことを心掛けていて、特に大阪桐蔭の投手陣は速球、変化球ともに良いので、始動を早くすることを心掛けていたことで対応できたと思います」と語る。

 しっかりとした準備が生きていたのだろう。

 投手陣で活躍したのはエースの藤田 健人投手(3年)と1年生の田中謙心投手。なかなかパンチ力のある投手だった。
 藤田は右スリークォーターから130キロ前半〜138キロをマークする本格派。「コーナーへ強いストレートを投げることを意識しました。特にインコースをしっかりと攻めることが大事だったので、それはできたと思います」と、4.2回を投げて4失点、6奪三振。

 田中はしなやかな腕の振りから繰り出す120キロ後半〜132キロの速球とスライダーを投げ分けた。1年生としては完成度は高く、今後も楽しみだ。

 中山はセンス抜群だった。インサイドアウトのスイングで振り抜いて、鋭い打球を飛ばし、遊撃守備も滑らかで、スローイングの強さが光る。7回からマウンドに立つと常時135キロ〜142キロの直球をマークし、8回に最速145キロを計測。スライダーの切れもよく、クローザーとして申し分ない投球だった。

 勝ち癖をつけるという意味で、近畿大会優勝を狙っている智辯学園。今年は躍進が期待できそうなチーム状態だった。


ダブルエースが離脱した大阪桐蔭。それでも智辯学園に接戦。期待の速球派右腕、4番ラマルが成長を感じさせる活躍

智辯学園vs大阪桐蔭 | 高校野球ドットコム
松井弘樹(大阪桐蔭)

<春季高校野球近畿大会:智辯学園8-6大阪桐蔭>◇27日◇1回戦◇大阪シティ信用金庫スタジアム

 現在の大阪桐蔭は飛車角抜きで離脱者が多い。

 絶対的なエースの前田 悠伍投手(3年)、本格派右腕・南 恒誠投手(3年)、球際が強い三塁守備、巧打が魅力の岸本 真生内野手(3年)がベンチ外で、走攻守三拍子揃った外野手・徳丸 快晴外野手(2年)はベンチスタートと、今年の大阪桐蔭のゲームをコントロールできる4人が欠場すれば大荒れな展開になるのも当然だろう。

 それでも全国トップレベルの打線を誇る智辯学園相手に6対8と2点差まで迫った戦いができたのはさすがとしかいいようがない。

 この試合で先発したのは安福 拓海投手(2年)。188センチ、90キロと恵まれた体格をした大型左腕だが、智辯学園の1番・松本 大輝外野手(3年)に三塁打を打たれ、調子が狂う。本来は切れのあるスライダー、チェンジアップ、カーブを駆使する技巧派の一面がある。

 しかし松本に変化球を打たれたことで直球に頼る投球になり、受け身の投球になっていた。この試合では最速136キロをマークするなど、球の勢いは悪くなかった。安福は「この悔しさを忘れずに練習をしていきたいです」と意気込んだ。

 また、府大会で大きく成長した平嶋 桂知投手(2年)も最速138キロの直球、120キロ台のスライダーを投げ分けて勝負するも、松本に本塁打を打たれ、6回に3失点。悔しい投球内容となった。

 収穫だったのは、松井 弘樹投手(3年)の好投。右スリークォーター気味から常時130キロ後半〜142キロの直球は勢いがあり、120キロ前半のスライダーはキレがあり、精度も高かった。正捕手の南川 幸輝捕手(3年)は「ボールに強さもあり、松井の持ち味を発揮していた」と語る。

 野手ではラマル ギービン ラタナヤケ内野手(2年)が3三振のあとに第4打席から連続で安打を打ったことだろう。ラマルは「始動が遅れ、バットの出が悪くなっていたので、それを修正しました」と試合中に見事に修正。打席を重ねるごとに工夫ができていた。

 三塁守備は課題は多いが、現在は正三塁手の岸本や、背番号20でベンチ入りしていた河合 晴紀内野手(3年)から教わることが多いという。特に河合からは「バウンドの合わせ方や、打球によって準備の仕方が違うと学びました。中学時代とは比べ物にならないぐらい守備について考えるようになりました」と語る。

 収穫、課題が見えた大阪桐蔭。荒削りなラマルが工夫しながら結果を残しているのは収穫であり、そして次の塁を狙う積極的で、さらにハイレベルな走塁も垣間見えた。

 あくまで役者がそろえばであるが、やはり大阪桐蔭は怖い存在であることは変わりない。どれだけ精度を高めるか。夏には隙がないチームへ成長することを期待したい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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