Column

23年のドラフト候補内野手も実践 仙台大の内野守備ドリルを大公開

2022.12.21

 2年連続で明治神宮大会に出場を果たすなど、東北の大学野球の勢力図に変化をもたらしつつある仙台大。2023年も注目のチームは辻本 倫太郎内野手(3年=北海)がドラフト候補として挙がってくる。大学日本代表を経験し、12月の松山で開催された候補合宿にも参加。広い守備範囲はスカウトからも評価が高い。

 辻本の基本を作ったと言っても過言ではない、仙台大の小野寺コーチが指導する内野守備の基礎練習を今回紹介したい。

 近年はドリルや体系的な練習を作りだして、選手たちのレベルアップを促すチームが多い。これから紹介する仙台大のドリルも該当する内容だが、明治安田生命で社会人野球をしていた小野寺コーチのメニューは手軽かつポイントをおさえた内容となっており、参考になるものだった。

捕球の基礎を覚えるボール回し

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仙台大の選手の捕球動作

 取材日にまず始まったのは、ボール回しだ。仙台大の選手たちは華麗かつスピーディーに回すが、ボール回しと言っても、塁間で実施するのではなく、およそ10メートル前後という短い距離である。

 スナップスローで十分届く距離のため、スローイングを目的にしたメニューというわけではない。3人1組の変則でボール回しをするところも察することができる。

 指導する小野寺コーチが選手たちに話していたのは、スローイングではなく、捕球動作についてだ。
 「リリースされて、どこに送球が来るのか確認してから捕りに行くように。予測で捕りに行くのは受け手が悪い。しっかり見てから右足と捕球を合わせて、強く投げよう」

 リリースの瞬間を見てから動き出すため、大きく跳ねるように動き出すことはできない。小さく、強く右足を捕球にあわせて踏み出す。これで軸足にきちんと体重を乗せるから、小さいモーションで鋭い送球ができるわけだ。

 逆回しもリリースの瞬間を見てから動くのは同じだ。ただ気を付けるのは捕球の意識だ。
 「送球を受けてしまうことでグラブが押されて握り替えが遅くなるから、はたく感覚で捕球してスローイングにつなげよう」

 話には出てこなかったが、逆回しの際は、左足から動き出して、右足を寄せるような足運びもポイントの1つである。

[page_break:手軽かつ効果的なゴロ捕球練習]

手軽かつ効果的なゴロ捕球練習

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仙台大の選手の捕球姿勢

 2人1組になって練習するゴロ捕球。手で転がしたゴロを処理する単純な動きだが、フォームの見直しという意味で、構え方から見直した。

 「指先が地面につくくらいまで態勢を落とすけど、お尻を落とす感覚ではない。少し上を向けるような感覚で、態勢は落とす。そのとき右膝を割って右股関節に重心を乗せたまま、左足のつま先は上げた状態で捕球しよう」

 ゴロに対して体が先にいかないようにするため、小野寺コーチは捕球位置を左足の前ではなく、体の正面を理想にしている。そのために右足に重心を乗せるのはもちろん、左足のつま先を上げることで壁としての役割も持たせていた。だから左足のつま先は、右足がステップで動き出すから落とすように指導していた。

 ちなみに腕については、「自然体で構えよう」という指導があった。普通にしていれば内側に手のひらが向くことを考えれば、納得できる感覚だろう。

 まずは基本姿勢を覚えさせると、次は左足だけ動かしてゴロ捕球。捕球直前のゴロ捕球の動きを切り抜いて練習させた後、左右へのゴロ捕球へ。
 「体の正面で捕るためには、しっかり右足と捕球位置の関係を一定にできるように。そのためにも、目線を上下させずに真横に飛んで、捕球の瞬間は左足のつま先は上げておこう」

 あくまで基本姿勢は忘れずに、左右の打球に対してどのように体を動かして、体の正面で捕球するのか。少しずつ実戦に近づきながらも、打球を考えて足を運ぶように体系化していた。

 最後はある程度距離を取って、正面から強く転がしたゴロを捕球。この時、打球との距離の詰め方への注意を促した。

 「高校だと突っ込んでぶつかるように捕球することがあるけど、ある程度転がってくる打球ならバウンドを見て、捕球位置をあわせよう」

 それに伴って、構え方についても「右足を若干前にしよう」という話が出てきた。右足で捕球位置を狙うことはもちろんだが、左足が前だと、左半身しか使えず、頭も突っ込む形になる。対して右足が前だと、捕球位置を狙って作ることができるし、全身を使って打球処理をすることができるからだ。

 指導している内容は、決して難しい専門用語を使っているわけではない。簡単な内容にまとめられているが、守備の基本が詰まっており、勉強になる内容であった。守備に課題がある選手・チームにとって参考になれば幸いである。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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