Column

1年秋に4番もベンチ外を経験したU-15代表経験者・井坪 陽生。関東一の1番・中堅手を引き継ぐ素質

2022.01.05

 2021年の春季都大会で、関東一のメンバーに井坪 陽生外野手(2年)の名前がないことが話題になった。前年の秋季都大会では1年生ながら4番を任されることもあった。U‐15日本代表のメンバーで、八王子シニア出身であり、1学年上の兄が日大三でプレーしていることでも注目されていた。怪我でもしたのか?米澤貴光監督の答えは、「そういうわけではない」ということだった。

 夏の大会のメンバーにも名前がなく、迎えた秋季都大会1回戦の東京成徳大高戦。地元であるスリーボンドスタジアム八王子で行われた試合で、今度は背番号8ながら、1番・投手で登場した。

 投手としては最速140キロの速球と、スライダー、カットボールなどを投げて6回を被安打2の無失点に抑え、勝利投手になった。打つ方でも二塁打を放ち、2対0という僅差の勝利に貢献した。

 井坪の勢いは止まらない。[stadium]江戸川区球場[/stadium]で行われた2回戦の早稲田実業戦で、1番・中堅手として出場。本塁打、二塁打を含む4安打、1盗塁。守備でも好捕があり、この試合でもヒーローになった。

2ケタの背番号にも、ベンチ外にも指導者のメッセージがある

1年秋に4番もベンチ外を経験したU-15代表経験者・井坪 陽生。関東一の1番・中堅手を引き継ぐ素質 | 高校野球ドットコム
井坪陽生(関東一)

 この活躍を見ると、なぜこれまで外されていたのか、やはり気になる。「考え方とか、取り組みが、まだまだ甘かった。上のステージに行って活躍してほしい。スケールの大きな選手になってほしいです」と、米澤監督は言う。メンバーから外したのは、将来性を期待しているからこそ与えた試練だった。もちろん試練を与えるには、本人とのコミュニケーションも欠かせない。外されたことに、井坪も納得していた。

 時代が変わる中、指導法も今まで通りにはいかない。厳しすぎると逆効果になり、パワハラになることもある。といって、甘やかして勘違いさせてもいけない。そうした指導者のメッセージが、与えないということも含め、背番号に込められていることがある。

 二松学舎大附瀬谷 大夢外野手(2年)は、甲子園でも3番を打ち、新チームでは不動の4番だ。秋季都大会では2本の本塁打を放つ一方で、盗塁やセーフティーバントもこなす器用さもある。それでも背番号は17だ。「勘違いする可能性があり、刺激を与えるためです」と、市原勝人監督は言う。

 帝京の不動の4番で、秋季都大会では2本の本塁打を放っている渡邊 礼内野手(2年)も背番号は20だ。こうした背番号は、指導者の期待の表れでもあり、彼らが2022年にどう成長していくか、楽しみだ。

[page_break:関東一の1番・中堅手を引き継ぐ素質]

関東一の1番・中堅手を引き継ぐ素質

1年秋に4番もベンチ外を経験したU-15代表経験者・井坪 陽生。関東一の1番・中堅手を引き継ぐ素質 | 高校野球ドットコム
井坪陽生(関東一)

 関東一の1番・中堅手と言えば、抜群の身体能力で甲子園を沸かし、2015年の4強進出に貢献したオコエ 瑠偉外野手(現楽天)や、オコエをしのぐ俊足で甲子園を沸かし、19年の8強進出に貢献した大久保 翔太外野手(現新潟医療福祉大)など、強烈な印象を残した選手がいる。井坪も、彼らに並ぶ可能性を秘めた選手だ。

 ただ井坪の場合、チームで一番長打が期待できる打者であり、本来なら3番か4番という感じもする。その点について米澤監督は、「考える子で、4番だと結果が出ないのです」と言い、井坪も、「1番がしっくりくる」と言っている。1番は、井坪の積極性を引き出す打順であり、それがチームの活力にもなっている。

 秋季都大会は準決勝で二松学舎大附に1対6で敗れ、井坪もこの試合、3打数0安打、1四球に終わった。それでも米澤監督は井坪について、「我慢することを覚えました」と、成長を認める。2022年、井坪は1番打者のままなのか、それとも中軸を打つのかは、分からない。それでも、関東一が3年ぶりに甲子園に行くためのキーマンであると同時に、投打二刀流で東京の高校野球を沸かす存在であることは確かだ。

(記事:大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.30

【春季栃木県大会】夏への布石が着々と成果を挙げた! 文星芸大附が堅い守備で完封勝利!ドラフト候補・堀江は最速146キロをマーク

2024.04.30

大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘  文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」

2024.04.30

【岩手】宮古、高田、久慈、久慈東が県大会出場へ<春季地区予選>

2024.04.30

【春季愛知県大会】享栄がまとまりの良さを見せて、豊川に完封勝利で決勝進出

2024.04.30

【北海道】昨秋優勝の旭川実と春季連覇中の旭川明成が初戦で激突!<春季全道大会支部予選組み合わせ>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける