Interview

スーパー中学生スラッガーと騒がれた森川倫太郎(健大高崎)はいかに挫折を乗り越えたのか 

2021.03.06

 中学生離れしたパフォーマンスを魅せる選手に対し、「スーパー中学生」と評される。中学時代に全国優勝を果たし、さらにドラフト1位候補に上がる小園 健太市立和歌山)のように順調に伸びる選手もいれば、苦しむ選手も多い。

 健大高崎の高校通算23本塁打のスラッガー・森川 倫太郎もその1人だった。そんな森川がいかにして、ドラフト候補としても注目される存在となったのか。

メディア出演で中学時代から注目集めるも

スーパー中学生スラッガーと騒がれた森川倫太郎(健大高崎)はいかに挫折を乗り越えたのか  | 高校野球ドットコム森川 倫太郎(健大高崎)

 2月20日に行われた紅白戦でバックスクリーンを超えるホームランを放ち、木製バットを使った打撃練習でも本塁打性の打球を連発。世代でもトップクラスといっていいポテンシャルを発揮するまでに時間がかかった。

 京都東山ボーイズ時代から多くの本塁打を放ち、さらに民放のテレビ番組で元プロ野球投手と対戦し、そこで豪打を発揮し、大きな期待をかけられた。実際に打球速度、体格、打席の雰囲気が中学生離れしており、ワクワクした視聴者も多いことだろう。

 健大高崎を選んだ理由は山下 航汰(巨人)などを筆頭に本塁打を打てる打者が多く揃った2018年のチームの影響が大きい。

 「まず地元(京都)は出たいと思っていて、その中で、甲子園で勝負できるチームを探していて、その中で、健大高崎は足を絡めてやるのが印象的だったのです。しかし当時の試合を見ていたら、山下さんだけではなく、スタメン全員の打撃のレベルが高かったので、ここ(健大高崎)にきたら甲子園、そして甲子園優勝を狙えると思って選びました」

 京都でスラッガーとして鳴らしてきただけあって、自信を持って健大高崎に入学したが、その自信はもろくも崩れ去ってしまう。

 「最初は自信があったのですが、高校のレベルの高さを思い知られました。中学では長打を打てて、自分の打撃理論の中で、これだと思うものがありました。しかしこのままでは結果を残せないので、自分の理論を捨てて、根本から打撃を見直さないといけないと思いました。
 本当にスイング軌道で悩む事が多くて、自分的には捉えたと思った打球が思うようにミートができなかったんです」

 入学時から期待度が高すぎてしまい打てなかったので、「本当に騒がれた選手だったの?」という評価もあったそうだ。
 この事態を脱するために赤堀コーチの指導に耳を傾け、一歩ずつレベルアップを果たしていく。さらに同学年のスラッガー・小澤 周平にも教えを受けた。
 「小澤はこの代で最も打てる選手で、理論的にもしっかりとした選手でしたので、小澤の話を聞こうと思いました」

 感触を掴んだのは、2年の6月以降。緊急事態宣言が解除され、全国的にも練習、練習試合が再開していく中で、自分のスイング軌道を掴んでいった。

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少ないチャンスで結果を残せた理由

スーパー中学生スラッガーと騒がれた森川倫太郎(健大高崎)はいかに挫折を乗り越えたのか  | 高校野球ドットコム森川 倫太郎(健大高崎)

 2年秋になって、恵まれた長打力を発揮しつつも、まだ定位置を掴むことはできなかった。それでも代打で結果を残すなど、首脳陣の評価を高めていく。

 少ないチャンスの中でも結果を残してきたのは日々の近距離打撃練習にあった。

 「近距離打撃は一定の距離から同じ間合いで速球、変化球を打たないといけないので、タイミングをとる練習にもなりましたし、低めを見逃す練習にもなりました。こうした練習から集中力も磨かれていったと思います」

 低めへの対応力を磨くために、重心を低くして、ノーステップ気味に構えるようになった。そして関東大会の準決勝の専大松戸戦で本塁打を放つ。
 「真ん中低めのストレートだったんですけど、あの時は何を狙っているか、あまりなくて、とりあえずできることをやろうと。その中で、つなぐこと、ボール球を選んぶことを頭に入れて自分のことをしっかりとスイングをしようと。ちょっと低かったんですけど、甘かったので、とらえられました」

 さらに強打だけではなく、外野守備の評価も高い。実際に見てみても落下地点までロスなく、入ることができており、肩も強い。森川自身、高校で初めて外野手を務めたのだが、外野守備は昨年の戸澤 昂平(中央大)など先輩レギュラー外野手からアドバイスをもらい、スローイングについては今年の強肩強打の捕手・綱川 真之佑からリリースのタイミングなどを教わって、スローイングも改善した。こうした姿を見ると、客観的に自分を分析し、課題に取り組める姿勢があることがわかる。

 「自分はそんなに知識があるほうではないですし、聞けることがあれば、聞いたほうが良いと思っています。やっていく中で、合う、合わないもわかっていくと思いますし、自分はそんなに引き出しがないので、人から話を聞いて、引き出しを作っていくことがうまくなる方法だと思います」

 こうして柔軟に取り組めるようになったのは一度、挫折があって、自分を変えようとする意思があったからに違いない。頭角を現したのは2年秋と早いほうではないが、1年生から2年までの「挫折期間」は森川の成長のためには必要だったといえる。

 

 また改めて紹介したいと思うが、20日の紅白戦後に本塁打の要因、凡退した要因を解説していただいたら、かなり具体的な解説だった。ポテンシャルに頼った選手ではないし、
自己分析ができるスラッガーなのだ。ここまでの成長に青柳監督は「長打力もあるし、紅白戦のバックスクリーン弾に関しては、山下や脇本ぐらいしか打っていません。それでいて、足も速くて、外野守備、三塁守備もこなせて器用な選手です」と高く評価している。

 選抜初戦の相手は下関国際に決まった。最後に意気込みを語ってもらった。
 「甲子園では打てなかったら、『打線は水物だった』など厳しい評価をされると思いますし、レベルの高い投手から打って、強打の健大高崎を証明したいです」

 

 待ち望んだ初の甲子園で自慢の長打力を発揮できるか。下関国際天理など曲者、好投手揃いのブロックで存在感を発揮すれば、評価は大きく伸びていくに違いない。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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