2年生だけで通算本塁打230本超。超強力打線・健大高崎を作り上げる打撃理論と練習法【前編】
2021年度で全国トップクラスの強力打線といえば健大高崎だろう。公式戦15本塁打と圧倒的な長打力を誇る。そんな健大高崎打線に迫る。
中学時代、無名の選手でも二桁本塁打に到達
小澤周平
小澤周平（左打ち・内野手・横浜南ボーイズ）35本
綱川真之佑（右打ち・捕手・宇都宮中央ボーイズ）21本
森川倫太郎（左打ち・外野手・京都東山ボーイズ）21本
高村尚杜（右打ち・外野手・座間ボーイズ）19本
堀江晃生（左打ち・外野手・前橋ボーイズ）17本
伊藤翔哉（右打ち・内野手・波崎ボーイズ）15本
横尾友都（右打ち・外野手・津ボーイズ）14本
野中駿哉（右打ち・投手・外野手・高崎中央ボーイズ）14本
石崎伶（外野手・右打ち・新潟ボーイズ）13本
西本健人（右打ち・外野手・高崎ボーイズ）10本
園山尋斗（右打ち・外野手・生駒ボーイズ）7本
松本京大（左打ち・外野手・座間ボーイズ）7本
櫻井歩夢（右打ち・内野手・横浜南ボーイズ）7本
長谷川朋哉（左打ち・外野手・北杜ボーイズ）6本
風間力輝（右打ち・外野手・高崎ボーイズ）6本
土谷歩夢（右打ち・外野手・富岡ボーイズ）4本
海老原崚（左打ち・内野手・将門ベースボールクラブ）4本
田邊悠人（左打ち・内野手・沼田中）4本
木戸爽多（右打ち・内野手・湖南ボーイズ）3本
吉里竜門（右打ち・内野手・うるま東ボーイズ）2本
上野元希（右打ち・内野手・外野手・真岡ボーイズ）1本
高橋知輝（投手・外野手・高崎ボーイズ）1本
なんと231本。二桁本塁打を達した選手が9人もいる。横浜南時代からスラッガーとして注目された小澤や、中学時代、スーパー中学生と呼ばれた森川など実績の高い選手もいるが、ほとんどの選手は中学硬式出身といえども、通算10本塁打以上を打つことが約束された選手ではない。この健大高崎の環境の中で化けた選手たちばかりだ。
健大高崎の打撃理論は「ボールのラインに対してバットの軌道を入れること」。これは盛岡大附で関口監督から打撃理論を学んだ赤堀コーチが健大高崎に赴任してからこの理論を伝えている。今の2年生たちは入学したと同時に赤堀コーチの理論を学び、時間をかけて作り上げてきた。
青柳監督と赤堀コーチ
打撃練習や、練習試合で打者の打撃動作を横から見て、写真を撮影したり、動画を撮影すると、その選手がどういうメカニズムを意識しているのが分かる。じっくり観察すると、健大高崎のどの打者も長打を意識しながら、確実にボールをコンタクトする意識が感じられる。
健大高崎の2年生野手は、技術面、実績面を見ても、力量差が小さいことが分かる。高校生になると主軸を打つ選手とそうではない選手の技術差が大きく出てしまう傾向にある。しかし健大高崎は一部の打者だけではなく、どの打者もできるのが強み。それが231本にあらわれているのだろう。
関東大会のスタメンでは、6人が二桁本塁打を記録し、ベンチ内にも5本以上打てる選手が構え、ベンチ外でも二桁本塁打を打てる選手が多くおり、今や、健大高崎は大学関係者から主力選手だけではなく、ベンチ外の選手も注目を浴びる存在となっている。
近距離打撃など選手の打撃力をアップさせる有効な打撃練習と目的
打撃練習の模様
では、日々の練習でどう強打を作り上げているのか。選手たちが対応力を大きく高めた練習として上げるのが近距離打撃だ。10メートル～12メートルの距離から投手に投げてもらい、打ち返す。これはスピードへの慣れ、タイミングのとり方、打ちにいく中でボール球を見逃すこと、低めを見切ること。精度よくボールを捉えることを意識する。
この練習法の効果について主将の小澤は次のように語る。
「全球打ちに行って、（打てない球）は見に行くのですが、そうすると実戦になった時に、変化球に対して、しっかりとバットが止まるので、そこで甘い球を振れるのが効果的だと思います」
改めて健大高崎の選手の打撃を横から撮影し、さらにスローで見ていく。そうすると、全球打ちに行っていて狙い球を定め、目付けがしっかりしているのが分かる。うちにいきながら、変化球はしっかりと見逃している。この秋、ブレイクを果たしたスラッガー・森川倫太郎はフリー打撃や近距離打撃によってタイミングのとり方を覚えた。
「普段のフリー打撃で、4箇所のバッティングがあります。投手によって、球速が違っても、同じ間で打たないといけません。速くても遅くても同じ間で打てる様になっていたら、タイミングのとり方を覚えるようになり、県大会でも打てるようになりました」
近距離打撃以外でもメニューは豊富だ。雨天練習場内で行われる打撃練習では甘い球、抜け球を「中間球」と位置づけ、反応で打てるレベルにすることを目的としている。
健大高崎ナイン
マシンに設定したボールは130キロ台ほど。打ち損じすることなく打球を飛ばしていくことが求められている。
ロングティーをやる目的としては、骨盤を使って打球を飛ばす感覚を養えるか。この時、ポイントはどれだけ膝を曲げすぎずに骨盤を使って打球を飛ばすことができているか。さらに5メートルバッティングでは、至近距離で正面から投げ込められたボールを反応で打ち返すことで、好投手相手でも選手それぞれが自分のスイングを出来るようにさせるのが狙いだ。
また健大高崎は2つのメニューを組み合わることを意識している。たとえば早打ちの練習になるとスイングが小さくなる癖があり、それを補うためにロングティーを同じに行うなど、2つの要素を組み合わせて、欠点を補い、結果的に効果を生み出すようにメニューが工夫をされている。
健大高崎が凄い点は指導者だけではなく、選手自身も考えていること。主将・小澤は「近距離の打撃をやった後で、身体を大きく使うために、遅い球を打ってボールを引き付けてやっています」。選手自身が相乗効果を考えて取り組んでいることが分かる。
健大高崎の指導者が理論派で引き出しも豊富であることは間違いないが、選手たちが考えて取り組んでいることもパフォーマンスアップさせている要因ではないだろうか。
後編ではそうした中、多くの選手がパフォーマンスアップさせていることをお伝えしたい。
（取材＝河嶋 宗一）
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