ノーヒットノーラン達成した市川祐(関東一)が同世代の投手より頭1つ抜けたコントロールと投球術を分析!
市川祐(関東一)
下級生の時から将来性の高さを評価されていた関東一の本格派右腕・市川祐。新宿シニアから実績十分の市川は1年夏から甲子園の登板を経験。さらに最速143キロもマークし、順調な成長を遂げていた。そして秋初戦の都立新宿戦で高校初のノーヒットノーラン達成した。
好投手がプロ注目投手へ成長する過程はいろいろある。もともと飛び抜けた球速があって、あとから制球力がつくタイプと、高い制球力があって、あとから球速がつくタイプ。市川は後者だろう。中学時代は130キロ前後。そして1年春、横浜との親善試合で登板した姿を見たことあるが、125キロ前後の速球とカーブをテンポよく投げ分ける投手。また東東京大会でもベンチ入りしたが、128キロ程度で速くなかった。それでも米澤監督は制球力の高さと精神力の高さを評価してベンチ入り。実際に大舞台でも動じずに投げることができる強さは当時から光っていた。
そしてコロナから開けて7月でも練習試合でも140キロ中盤の球速を計測するなど順調にレベルアップしていた市川。そして東東京大会ではベストメンバーで臨む4回戦からベンチ入りし、キレのある快速球を投げ込み、主に中継ぎ役として活躍した。
そしてこの夏休み。米澤監督は先発完投できる投手を目指してほしいという願いをこめて、大会終了後の練習試合では先発として投げ、順調に結果を残し、この大会に臨んだ。
都立新宿戦の先発マウンドに登った市川はこれまでと同じく、良い意味で脱力ができており、さらに冷静なマウンド捌きを見せてくれた。
最速143キロを誇る市川。市川は力を入れず、コントロール重視したと語るように、ストレートは常時130キロ前半~138キロと突出した数字ではない。ただ、1年生だった時と比べるとアベレージは常時5キロ以上は速くなっている。
スピード以上に良いのは球質の良さだ。角度のあるストレートは縦回転で使える投球フォームから生み出すことができている。
ワインドアップから始動し、左足をゆったりと上げていき、右足の膝を適度に伸ばしてバランスよくたち、内回りのテークバックからしっかりと右肘を上げていき、打者よりでリリースすることができる。バランスの良いフォームによってキレのあるストレートを投げ込むことができる。
また本人も手応えを感じていたのが変化球のコントロール。スライダー、カーブ、チェンジアップの3球種を投げ込んでいたが、特に良かったのがスライダー。膨らみが小さく、打者の手元で鋭く曲がるこのスライダー。それほどスピードはあるわけではないが、次々とストライクが決まる。都立新宿ナインは変化球に狙いを絞っていたが、予想を上回るキレに次々と空振り。またコーナーに絶妙に決めるので、見送るしかない。また、都立新宿の打者がベースから遠ざかって構えるのを見逃さず、ボールが遠く感じるアウトコース主体の投球で試合を作った。
「ストライク先行ができたので投球として楽となりました」と語るように、初球からストライクが取れたのは打者28人中、22人。ボール球もほとんどなく、ほぼ市川の意のままに投球ができた。
結果として、打者28人 15奪三振、外野フライ5個、内野フライ2個、内野ライナー1個、内野ゴロ3個(うち併殺1個)と圧巻の内容でノーヒットノーラン達成した。
ストレートは本調子ではなかったとはいえ、最後まで大記録を意識しなかったと語るように、マインド面、投球内容がこの世代の中では突き抜けている。
2016年以来の選抜を目指す関東一。それは新エース・市川祐の投球にかかっている。
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