Column

勝ちに執着し公立の雄として確固たる地位を築く! 西尾東(愛知)【後編】

2019.05.13

 前編は、東海大会進出が懸かった中部大春日丘戦をバッテリー中心に振り返ってもらった。後半は、そんな仲間をまとめる主将・石川寛大君のリーダーとしての自覚。そして、過去7年間でベスト4以上に4回導いている寺澤康明監督の指導法に迫っていく!

一冬超えて落ち着いた試合運びをできるように

勝ちに執着し公立の雄として確固たる地位を築く! 西尾東(愛知)【後編】 | 高校野球ドットコム
主将・石川寛大(西尾東)

 西尾東の仲間をまとめていくのが主将の石川寛大君だ。

 「県大会ベスト4に進出できたことは自信を持っていいと思う。だけど、西尾東の歴を変えたいという思いが強かったので、あと一つ勝ちきれずに、東海大会に進出できなかったことは、悔しい」

 昨秋の県大会は自信と悔しさを両方味わう大会となった。

 ただ、冬の練習の取り組みについては、「21世紀枠の推薦校になり練習頑張ったというよりも、東海大会に進出できなかった悔しさ、その負けを引きずって、その後の全三河大会で初戦負けしてしまった悔しさをバネに取り組んでいった」という思いだった。
 そうした中で、一冬越えたチームの成長として感じているのは、
「秋までは、相手にリードされると焦りを感じて雰囲気があまりよくなかったと感じることもあったが、今は試合を9回までで見ることが出来、落ち着いて試合を運んでいかれるようになった」

 と、試合を全体として捉えられる大人のチームになりつつあると感じている。そして、チーム力としては、「打撃のチームとして、その回が何番から始まろうと、チャンスを作っていくことができる」という。それぞれが個々のポテンシャルを上げていったことで、よりチームの層が厚くなっていると感じている。

 それだけに、どこが相手でも臆することはなくなってきている。

 「強豪の私学とも、十分に戦うことが出来ます。流れがくれば勝つことが出来るチームなので、9回が終わった段階でしっかり勝ちきれるチームになれるように頑張っていきたい」

 これは正直な思いでもある。そんな意識でチームを引っ張っている。

 1年に入学してきた時から、学年リーダーとしてまとめてきたという自負もある。だから、主将に任命された時も、「自分しかいないと思った」という。それだけに、チームに対しての責任感も強く持っている。背番号はい何番であろうと、チームをまとめて引っ張っていく存在であるという自覚は強く持っている。

 昨秋の大会を含めて、過去7年間でベスト4以上に4回導いている寺澤康明監督。西尾東は母校でもある。それだけに、「学校や地域の大きな期待に応えたい」という思いは強い。とはいえ、特別に野球部に特化しているという配慮がされているわけではない。学校としては、普通の公立校という位置付けは変わらない。だから、チームとしては、「その年の学年のチームの戦力で、一つでも勝ち上がるためにどのようにしたらいいのか」ということを最初に考えているという。そのため、チームの特色というのは、入ってきた選手たちによって毎年異なっているというのは現実だ。

 ただ、指揮官としては「チームの特色としてのこだわりはないけれども、勝ちには執着している」ということは、戦いぶりでも示している。学校の練習環境としても恵まれている方だという。照明塔はないものの、グラウンドは広く使用できるし、3月から9月までは19時までは十分に練習可能だ。この春から、かつて大府を率いて甲子園出場を果たしている馬場茂校長が赴任してきたことも大きな後ろ盾となろう。

[page_break:寺澤監督の強豪私学に勝つ戦い方]

寺澤監督の強豪私学に勝つ戦い方

勝ちに執着し公立の雄として確固たる地位を築く! 西尾東(愛知)【後編】 | 高校野球ドットコム
寺澤康明監督(西尾東)

 1年先輩には中日で大活躍した岩瀬仁紀という偉大な存在がいた。自身もその背中を追いかけていたという。そして、母校を率いるようになり、実績も上げてきている中で、昨夏甲子園まであと一つというところまでたどり着きながらの敗退、さらには昨秋の大乱戦の末の敗退などを経験して、「勝ちきることの難しさ」も改めて課題として感じている。

 そして、昨秋の敗戦の中では、山田君に続く「二番手以降の投手の整備をしきれていなかった」ということも反省材料だった。そんな中で、一冬越えて、この春はエースの山田君がもう一つ本調子になり切れていなかったけれども、橋本龍輝君が成長して任せられるようになったのは大会を通じての収穫だったという。さらには、磯貝来夢君も大会で使える見通しが出てきた。

 ただ、「投手には、無理をさせない」ということも、一つの方針として置いている。その一方で、チームとしては「体力強化は大事だと考えているので、トレーニングには多く時間を割いている」という。

 戦術にもこだわりはないというが、「バントやエンドランなど、機動力などを使って勝負できる強さを身に付けていくことが、どうしても個々の能力では私学の強豪には及ばない公立校の戦いとしては必要不可欠」ということで、塁に出てからの細かい動きにはことに気を配っている。

 練習メニューとしては、バッティング練習に重きを置きながらも、各自の練習ということも大事にしている。休みは特に定めていないが、「雨が降れば基本的にはOFF」というのもユニークだ。

 <西尾東の通常メニュー>
月  各自練習
火  バッティング練習~トレーニング、もしくはケースバッティング
水  バッティング練習~トレーニング、もしくはケースバッティング
木  バッティング練習~各自練習
金  バッティング練習~シートノック
土  練習試合 など
日  練習試合 など

 地域にも支えられながら、強豪私学のひしめき合う愛知県にあって、公立の雄としての存在は、年ごとに強固なものとなっている。そうして今、最も甲子園に近づいている公立校として県内でも注目を浴びている。

(文・手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.30

【春季栃木県大会】夏への布石が着々と成果を挙げた! 文星芸大附が堅い守備で完封勝利!ドラフト候補・堀江は最速146キロをマーク

2024.04.30

大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘  文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」

2024.04.30

【北海道】昨秋優勝の旭川実と春季連覇中の旭川明成が初戦で激突!<春季全道大会支部予選組み合わせ>

2024.04.30

【岩手】宮古、高田、久慈、久慈東が県大会出場へ<春季地区予選>

2024.04.30

【春季愛知県大会】享栄がまとまりの良さを見せて、豊川に完封勝利で決勝進出

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける