「流行」今の子に合わせた指導 平川 敦(北海)vol.6
「不易流行(ふえきりゅうこう)」:「不易」とはいつまでも変わらないこと。「流行」とは時代々々に応じて変化すること。 平川 敦(ひらかわ・おさむ)監督(北海)の高校野球における座右の銘である。今回は、「流行」について書いていこうと思う。
今までの連載コラム
「不易流行」高校野球で絶対に変えてはならないこと 平川敦(北海)vol.1
人間教育・前編「学校生活からの取り組みが重要」平川 敦(北海)vol.2
人間教育・後編「裏表のない素の自分を鍛える」平川 敦(北海)vol.3
人間教育・番外編「他競技から学ぶ!大坂なおみのプレー」平川 敦(北海)vol.4
何が目的なのか考えられる力 平川 敦(北海)vol.5
時代とともに変わる選手たちの質
平川敦監督(北海)
人間教育と野球というスポーツは勝利を目指すという2つの変わらない「不易」に対して、常に変わり続ける「流行」がある。その一つは毎年入学してくる生徒たちだろう。平川監督が就任した98年と現在の生徒はどのように変わってきているのだろうか?
「全然違いますね、ここ5年でなく3年ですね。3年でも全然違うと思いますよ」
これが、平川監督の感想である。ただし、だから良い、悪いと言っているわけではない。平川監督はその変化を受け入れて、その上でどうしたら良いのかを考えているのである。
「社会が変わってきています。子供には責任はないんで、周りが変わってきているから、その環境で生活してきた子供には責任がないから」
そう、子供たちの考え方や姿勢は変わっている。子供たちが悪いわけではないのである。むしろ、変化していくものを受け入れ、その中でどのように「人間教育」と「野球で勝利する」を達成していくかが大事なのである。
気づいたタイミングでどんどん伝えていく
マウンドに集まる北海の選手達 ※2014年・秋季北海道大会から
平川監督は、とにかく気づいたら伝えるを繰り返している。
「今は、問いかけるというか教える。気づいたタイミングで言っていく。言わなくなったら(今の子は)ダメじゃないですかねぇ。」
その理由の一つとして「考える力」を上げてくれた。
「考える力がないから、極端な話、考えさせようとしても答えが出てこない。自分で考えられない。昔はほったらかしにしておいて、ある程度(時間が経つと)なんとなくわかってくる感じでしたけど、今の子はわからないと思いますよ。」
「(選手が)理解出来ないのに怒っちゃうから、『なんで怒られてるの?』とか『なんでそんな事言われなきゃならないの?』ってなる」
だからこそ、平川監督は今の子に合わせた指導に切り替えている。つまりその都度、行動の意味や目的を伝えているのである。
「一回言って、頭にあれば、『この前いったよね』『こういうことだよね』と指導できる。だから(選手も)怒られても、しょうがないなと思えるんですよね」
もちろん、これは全ての選手に当てはまるわけではない、理解力が高く、考える力がすでに備わっている選手もいる。自分で考えられる選手や、考えられそうな選手は、答えを出してくるのを待てる。平川監督は、選手個々の「理解力」や「高校生活があと何年あるのか、辛抱強く待ちながら成長を促せるのか」などを総合的に判断しているのだ。
「学年によっても求めるもの、求められるものも違うし、個人によっても違う」
このコメントに詰まっている考え方こそが、状況によって柔軟に対応できる、平川監督の魅力に違いない。絶対に変わることのない「不易」と、その時々によって変わる「流行」のバランス感覚が絶妙なのも名将たる所以だろう。
文=田中 実