何が目的なのか考えられる力 平川 敦(北海)vol.5
連載第1回のコラムでも書いたが、、平川 敦(ひらかわ・おさむ)監督(北海)の高校野球における座右の銘は「不易流行」である。「不易」とはいつまでも変わらないこと。「流行」とは時代々々に応じて変化することである。
今回は、その「不易」についてまず焦点を当ててみたい。
今までの連載コラム
「不易流行」高校野球で絶対に変えてはならないこと 平川敦(北海)vol.1
人間教育・前編「学校生活からの取り組みが重要」平川 敦(北海)vol.2
人間教育・後編「裏表のない素の自分を鍛える」平川 敦(北海)vol.3
人間教育・番外編「他競技から学ぶ!大坂なおみのプレー」平川 敦(北海)vol.4
野球は勝つことを目的にしているスポーツ
平川 敦監督(北海)
平川監督が、しっかりした口調で話してくれた言葉
「野球は勝つことを目的としている、そこは不動だとおもうんですね」
そう、公認野球規則の1.05でも明記されているように、野球は、『各チームは、相手より多くの得点を記録して、勝つことを目的とする』 スポーツなのである。これは、平川監督の言う「不易」に当たる。
もちろん、北海も[stadium]甲子園[/stadium]で勝ち日本一を目指している。その背景には、野球の大前提のルールがある。
「ルールに則ってやるものだから当然勝たなきゃダメだし、勝つことを目的してるわけだからね」
「学校ではというと、自分の希望する進路を実現達成するために勉強するんでしょ。そこは不動だと思うんですよね」
そう、この考えは、高校野球という枠だけでなく、学校生活にまで至る。
「高校は義務教育ではないわけだから。 だから『勉強しに行き、自分が進むべき道をちゃんと達成するために高校生活を送る』というのと、『部活で野球やってる以上勝って甲子園で日本一を目指す』ことは当然の目標でしょ、ただ高校野球をやる目的は違うかもしれませんよ。目的は違うかもしれないですけど目標はもう、決まってるという認識では僕はいます」
[page_break:「不易」を、常に選手たちに発信し続ける意義]「不易」を、常に選手たちに発信し続ける意義
北海の選手たち 2014年・秋季北海道大会より
平川監督は自身の考える「不易」を、常に選手たちに発信している。
つい忘れがちのこの大前提を常に発信し続けることには、意味がある。本来なら、この目標を常に理解し自分で考えられる選手がいることが一番なのだが、高校生では、まだ目標を忘れてしまったり、ついつい違う方向へふらふらと進んでしまうことがあるに違いない。
そんな時に、大前提の目標(不易)を伝えて、理解させ続けることは、選手が、迷子にならずに同じ方向を見続けられる。
また、お互いが理解し合意した「達成したい目標」は、自分自身で選択した目標ということになる。 そうなると、自分自身の選択に対して、一生懸命取り組むことになる。
もちろん逆に、目標が違うということに気がついた生徒がいるかもしれない、そうであるのならば、自分の考えのもと違う道を歩く選択肢もあるのである。
明確な目標を発信することは、選手たちが「覚悟を決める」だけでなく、人間教育の一つでもある「自分自身で考える」ことを促しているのである。平川監督の人間教育の一端を垣間見た気がする。
今までの連載コラム
「不易流行」高校野球で絶対に変えてはならないこと 平川敦(北海)vol.1
人間教育・前編「学校生活からの取り組みが重要」平川 敦(北海)vol.2
人間教育・後編「裏表のない素の自分を鍛える」平川 敦(北海)vol.3
人間教育・番外編「他競技から学ぶ!大坂なおみのプレー」平川 敦(北海)vol.4
文=田中 実