人間教育・後編「裏表のない素の自分を鍛える」平川 敦(北海)vol.3
連載第1回のコラムで、平川 敦(ひらかわ・おさむ)監督(北海)の「高校野球は教育の一環だというのが前提、学生野球憲章にのっとった教育の一貫というのが一番じゃないですかねぇ。人間教育というのがベースになります」という言葉を紹介した。今回はその「人間教育」に迫ってみたい。
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裏表のない、素の自分を鍛える重要性
平川 敦監督
野球を上達したいのだから、野球だけに真摯に向き合えば十分と考える人もいるのではないだろうか。
その点について平川 敦(ひらかわ・おさむ)監督(北海)はこのように語ってくれた。
「やっぱりやっている人間は結局一緒なので、そんな人間、変わらないと僕は思っています。グランドの中に来たら、物は整理整頓、靴を揃えたりはするけど、じゃあ学校では?家では?どっちが本当の姿なの?という話になるわけなんです。」
「本当の姿が見えるところが、本来の持っているその子の姿だから、そういった姿、考え方、行動というのは一番自分が大事にしているグランドの中でかならず、大事な所、重要な所では絶対、その自分の素の考え方、素の力が出てくるから。だからその部分をちゃんと鍛えないとダメじゃないかなぁと思います。」
まさにこれが答えである。平川監督が求めるのは、「素の自分」を鍛えることである。だからこそ、野球だけでなく学校生活からの姿勢が重要になるのである。
[page_break:ダメな時にどれだけ力を発揮できるか]ダメな時にどれだけ力を発揮できるか
物置までしっかり整理整頓されている
「嫌なことから逃げないだとか、人の嫌がることを自分から進んでするだとか、それは野球だけじゃなくて、大事なところは、学校と、家庭と、社会というか家だというか、そういうところにあるんじゃないかなぁと思うから、だから学校生活をちゃんとしましょうと言うんです。」
「グランドはきれいにするんだけど、教室はきれいにしないだとか、どこも一緒でしょ。それが、苦しいときでも楽なときでも同じことをするんだよ。そういうところに全部つながっていくと僕は思っているので。」
「調子が良い時はだれでも良いんだし、ただ、自分が調子が悪い、苦しい、ダメな時にどれだけ力を発揮できるか。もしくはベストの状態に近い状態で悪いときでも出来るようにするかという。」
このコメントに大事な要素、「素の自分」を鍛える目的が出てくる。目的は、「投げ出さない力をつける」、「逃げない力をつける」、「信じる力をつける」 このような言葉が適切ではないだろうか。
これが平川監督の考える「考え方のベース」なのであろう。「考え方のベース」が出来ることで、初めて「自分で考える」事が出来るようになる。
これこそが、“人間教育「自分で考える力」を教え育てる”に繋がるのである。平川監督は、学校生活や野球を通して、この「考え方のベース」を伝えようとしている。
文=田中 実