ミレニアム世代のトッププロスペクト Vol.16 「プロ注目の強打者・森下翔太、太田椋の最後の夏」
ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回は惜しくも甲子園を逃したもの、その実力は間違いなく高校トップクラスの野手2名をご紹介します。
森下翔太(東海大相模) 勝負強い4番へ 隙の無い打撃を求めた
森下翔太(東海大相模)
東海大相模の春夏連続出場の夢は、準決勝で絶たれた。その中でも高校通算57本塁打の主砲・森下翔太は、ラスト1年は悔しい夏に終わった。
スラッガーを輩出し続ける東海大相模。その先輩たちと比べても森下の技術は秀ででいた。ややオープンスタンス気味に構え、始動の仕掛けを早めにして、足を回しこむように上げていきながら、タイミングを計る。トップを形成した後、最短距離でインパクトに持っていく。スラッガーでありながら、レベルスイングを心がけ、内外角に対応し、さらに変化球も流し打つ上手さがある。
森下は横浜斎藤大輝(横浜)と同じ戸塚シニア出身。東海大相模に入学すると、1年夏から同校では史上3人目となる1年生4番を務めた。そして、森下は2年生から公式戦でも活躍を見せるようになる。森下の勝負強さを示したのが、2年春の県大会準決勝・桐光学園戦でのことである。
5回表、桐光学園は無死一、二塁のチャンスを作り、8番小林が打ち上げた大飛球をセンター・森下がスーパーキャッチ。そして走者が飛び出し、トリプルプレーでチェンジと思われたが、桐光学園側から落球したのではないかと確認のお願いが入った。審判6人の協議の結果、落球したとみなされ、二塁走者生還で、無死一、二塁で再開した。森下はその悔しさをばねに5回裏、場外弾。大きくガッツポーズを見せながら、本塁へ生還する姿を見て、強烈なメンタリティを持った選手だと感じさせた。
そして最上級生になった2年秋。森下は驚異的な活躍を見せる。公式戦11試合に出場し、41打数27安打、打率.512、5本塁打、23打点、長打率1.195と驚異的な活躍を見せ、選抜では大きな活躍が期待されたが、4試合に出場し、15打数4安打と悔しい結果に終わった。
4番打者として結果を残せなかった悔しさ。それが森下の成長の支えとなった。春季関東大会では、花咲徳栄戦でサヨナラ安打、夏では神奈川工戦で、特大2ラン。相模原戦では9回裏に同点2ランを放ち、勝利に貢献。準決勝の慶応義塾戦でも、ヒット1本に終わったが、内容自体は悪くなく、選抜に比べれば成長を見せた。
打撃だけではなく、常に全力疾走を心がけ、二塁打、三塁打を量産する走塁技術、センターから投げ込む鋭い返球と、走攻守三拍子揃った大型外野手。森下はどんな進路選択の決断をするのか、大きく注目される。
太田 椋(天理) 超高校級のショート 夏で「確かな」進化
太田 椋(天理)
今回、ドラフト候補に挙がる遊撃手では、小園海斗(報徳学園)、根尾 昂(大阪桐蔭)、13702(明秀日立)が注目されるが、この3人に並ぶ力量を持ったのが太田 椋(天理)だろう。甲子園に出場はならなかったが、奈良大会のパフォーマンスは昨年から大きく成長した姿を示したのではないだろうか。
坂本勇人を彷彿とさせるような救い上げるスイングから、レフト方向だけではなく、逆方向にも本塁打を放つ打撃技術を誇り、最後の夏では打率.333、2本塁打、8打点と大活躍を見せた。ショートの守備では右、左と縦横無尽に駆け回り、スナップスロー、ランニングスローと複雑な動きを軽々とこなす守備には華を感じさせる。
太田は中学時代から球歴が華やか。羽曳野ボーイズ時代は高校通算75本塁打の山下航汰(健大高崎)、チームを甲子園に導いた近大附のエース・大石晨慈とともに、ジャイアンツカップ優勝を経験。そして侍ジャパンU-15代表入りも決めた。
そして2年夏の奈良大会で打率4割を残し、甲子園出場に貢献、選手権大会ではベスト4入り。しかし太田自身は16打数4安打、打率.250と納得いく成績を残せなかった。2年秋、主将に就任。秋は近畿大会出場を逃し、春では準決勝に智辯学園に敗れた。その悔しさを糧に太田は進化した。独特のオープンスタンスは、びしっと構えが決まり、しっかりとボールが見える状態に。そのため、ボールの見極めが以前よりも良くなり、外角球への対応力が増した。
左足を回しこむように上げてから間合いを測り、トップを作ってから内回りのスイング軌道でボールを捉える。ボールを捉える確実性、両腕のスムーズな使い方は昨年よりも改善。それがこの夏の進化につながった。
2年連続の甲子園出場を狙った奈良大会では決勝でサヨナラ負け。それでも大きな自信をつかんだ太田は、高卒プロ志望を掲げた。さらに侍ジャパンU-18代表の一次候補にも選ばれている。今秋までその動きが見逃せない選手だ。
文=河嶋宗一