試合レポート

慶應義塾vs横浜

2016.09.28

慶応義塾は洗練された野球で神奈川制覇!横浜は投手・万波、増田の力投が収穫

慶應義塾vs横浜 | 高校野球ドットコム

3番手としてマウンドに登った万波中正(横浜)

  平日にもかかわらず、内野席はほぼ埋まった[stadium]保土ヶ谷球場[/stadium]。今秋の神奈川大会決勝は慶応義塾の良さが存分に発揮され、また横浜も関東大会へ向けて新たな戦い方が見えた試合だった。

 体格、パワーでいったら完全に横浜の方が上だが、今年の慶應義塾は非常に洗練された野球ができている。夏から秋にかけて急激にチームとしての緻密さが上がり、ポテンシャルで勝負する横浜に対して、知力で勝負していったのだ。

 1回表、3番増田珠の犠牲フライで1点の先制を許したが、4番万波中正に対しての攻めが見事であった。ボール球で振らせつつ、最後は高めのつり球で空振り三振。何でもかんでも振りにいく万波の習性を掴んだ配球であった。その後、万波はインコースにどん詰まりしたり、低めのボール球に手を出したりと、打席内で迷いが見えた万波は無安打に終わった。万波が打ったら勢いに乗ってしまうということで、慶應バッテリーが最初の打席で抑えた意味は非常に大きかった。

 そして1回裏、横浜の先発の樋口太郎がぴりっとせず、いきなり無死満塁のピンチを招いたところで、4番正木智也の犠飛であっさりと同点に追いつく。二塁走者は三塁へ行く抜け目のなさを見せて、5番下山 悠介の左犠飛で勝ち越しに成功。浅い犠飛であったが、無駄のない走塁で、勝ち越しに成功。さらに送球の高さが高いのを見て、一塁走者は二塁へ進むと、6番綿引達也の右前適時打で3点目。二塁走者も無駄のない走塁で生還。効率の良い攻めで3点目を奪った。

 慶応義塾の先発・生井 惇己は左腕からキレのあるストレートを投げ分け、淡々とゲームメイク。5回表に、8番角田 康生の同点本塁打を許して降板してしまうが、強打の横浜相手にここまでの投球ができるのだから、関東大会でも活躍が十分に期待できるだろう。エース・森田晃介以外で投げられる投手として生井の好投は大きかった。

 横浜は3回裏から増田珠が登板。長崎シニア時代は、投手も兼任して、140キロ台の速球を投げ込んでいた増田。この試合でも勢いのある投球を見せる。投球フォームはまとまっていて、ノーワインドアップから始動し、ゆったりと左足を上げていき、右足の膝を適度に曲げてバランス良く立つことができている。そこから滑らかな体重移動から投げ込む。まだ左腕のグラブの使い方が甘く、平面的な投げ方になってしまうところに課題を感じるが、それでも常時136キロ~138キロの速球は非常に力があり、2回4奪三振の好投。変化球のレベルはまだまだだが、直球の勢いはなかなかのモノがありショートリリーフとしてならば面白い投手であった。


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エースとして安定感ある投球を見せた森田晃介(慶応義塾)

 5回裏からマウンドに登ったのは万波。
万波は、東練馬シニア時代は投手をやっていた。高校に入っては野手をメインでやっているが、しっかりと投手の練習をしてきたそうだ。実際に見るとまだまだ荒削りな投手だが、今後も登板の可能性がぐっと広がりそうな投球を見せてくれた。テークバックを取ったときに左肩がやや下がる独特の投球フォームから投げ込む球速は130キロ~135キロを計測。真っ向から振り下ろしていくので、ストレートには角度があった。変化球は100キロ台のカーブ、120キロ~125キロ前後のスライダーを器用に投げ分けており、投手としての能力も高い。190センチとこれ以上ない上背を持った投手で、6回裏に慶応義塾の巧い攻めにやられ、スクイズで勝ち越しを許したが、投手力に不安を抱える横浜にとって、使える投手を1人でも多く見出す必要があっただけに、万波が自分の持ち味を発揮したのは大きかった。

 カバーリングなどまだまだ課題はあるが、投手により専念することで、駆け引きを学べる。何でもかんでも振りに行く習性を投手をやることで、配球を考えながら打席に入ることができるようになれば、打撃の内容も変わってくると考えられる。投手・万波は野球選手としてレベルアップさせるために大きなカギを握っているだろう。これからだが、本気で投手のメカニズムを見直し、トレーニングを積んでいけば、140キロ台も十分に見込めるだろう。

 

 慶応義塾は7回表に同点に追いつかれたが、7回裏、無死一、三塁のチャンスを作ると、5番下山は左前安打を放ち、勝ち越しに成功すると、さらに6番綿引のスクイズ、7番新美の左前適時打で一気に3点を勝ち越した。慶応義塾は正木智也の打撃が注目されるが、このように相手の隙を狙ってスクイズを畳みかけるところが素晴らしい。攻撃に幅があり、まさに洗練されたチームといっていいだろう。

 

 7回表から登板したエースの森田晃介は今年の神奈川県内でも別格の好投手といっていいだろう。右スリークォーターから投げ込む投球フォームは力感がなく、速いボールを投げるの?と思わせるものだが、じっくりと見るとフォームの一連の流れがスムーズで、球持ちの良さが光るフォーム。コンスタントに136キロ~138キロを計測し、スライダー、カーブ、チェンジアップなど変化球の精度も高く、高めのつり球もうまく使い、強打の横浜打線を翻弄。3イニングを投げて1失点。優勝に貢献した。マウンド捌きを見ると落ち着いて投げることができており、関東大会でも安定したピッチングを見せてくれそうだ。

 これで1位は慶応義塾、2位は横浜となった。22日開幕の関東大会へ向けて、どこまで実力を高めていくのか、注目してみてみたい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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