Column

ケガからの早期復帰に欠かせない食事

2016.05.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 野球をしているとどうしても避けられないケガへのリスクは高まります。ケガをした時は患部そのものへのケア・コンディショニングだけではなく、身体全体の体力レベルが落ちないようにすることが大切です。さらには身体の中から細胞レベルへと働きかける栄養面にも気を配ることが、ケガからの早期復帰に役立ちます。今回はケガをしたときにすみやかな回復を促す食事の工夫についてお話をしたいと思います。

傷んだ組織を修復するために必要な栄養素

 デッドボールなどによる打撲骨折、走塁時の肉離れや捻挫など、いろんな状況下でケガをしてしまうことが想定できます。筋肉や骨、皮膚、爪、血液などさまざまな組織の材料となるタンパク質や、骨の構築には欠かせないカルシウム、栄養素の吸収を促進させるビタミンC、細胞再生を促す亜鉛などをいつも以上に意識してとるようにしましょう。普段からバランスの良い食事を心がけ、これらの栄養素をとるようにするとケガに強い体づくりに役立ちます。

 また「オメガ3」と呼ばれる油には炎症症状を抑える効果が指摘されていますので、「オメガ3」を豊富に含む油(たとえば亜麻仁油、エゴマ油など)をとることも組織修復の効果が期待できます。ただしこれらの油は酸化しやすく、加熱するとその効果が失われてしまいますので、炒め物の油などに使うのではなく、ドレッシングなど加熱せずに生でとるようにしましょう。食物ではクルミなどのナッツ類や青魚、海藻などに豊富に含まれています。

ケガをすると運動量が落ちる

ケガをしている時はどうしても運動量が減りがち

 

「ケガをして練習を休んでいる間に太ってしまった」という選手も少なくないのではないでしょうか。意外と忘れがちなことなのですが、ケガをしてしばらく全体練習とは別にリハビリテーション、トレーニングなどを行っているとケガをしていないときと比べて運動量は落ちてしまいます。風邪や腹痛、下痢などの内科的な症状であれば食べることに影響が出ますが、ケガをしたことによって食欲に影響が出ることは少なく、ついついいつもどおりの食事量をとってしまいがちです。

 身体を動かす機会が少なくなり、エネルギー消費量が減っている状態なのにエネルギー摂取量が変わらない状態であれば、使われないエネルギー源は体脂肪として蓄積されることになります。ケガをしてしばらく運動量が減ってしまうときは、必要な栄養素はとりつつ、体脂肪を蓄積させないよう余分な脂肪分をなるべく控え、お菓子などの間食などは運動量が回復するまで避けた方が無難です。

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甘いものを食べたくなったら

ハチミツに含まれる糖分は消化吸収が早く、エネルギー源としてもすぐに活用できる

 

 ケガをするとどうしても時間を持て余しがちになり、気晴らしにつまみ食いをしてしまうといったこともあるでしょう。このようなときにも組織修復に役立つような間食を心がけたいですね。たとえば「オメガ3」を含むナッツ類やヨーグルトやチーズなどの乳製品、果物などを適量とるようにすると良いでしょう。ヨーグルトにミックスナッツとハチミツをかけて食べると食べ応えもあって満足感が得られますし、栄養面でもオススメ。

 ハチミツに含まれる糖分はブドウ糖と果糖という単糖類が主な成分であり、白砂糖に比べてカロリーが低く、体内での吸収・代謝がはやいため、すぐにエネルギー源として利用される特徴があります。どうしても甘いものが食べたいというときはハチミツを上手に活用するとよいでしょう。

 ケガからの早期復帰には患部そのものへの対応が不可欠ですが、食事に含まれる栄養素を考慮し、身体の中からアプローチすることも大切です。復帰後に万全の状態でプレーするためにも、食事について必要な栄養素がキチンと取れているかチェックしてみましょう。

【ケガからの早期復帰に欠かせない食事】
●傷んだ組織を修復するためにタンパク質やビタミンCなどをとる
●炎症症状を抑える効果が期待できる「オメガ3」系の油は加熱せず生でとる
●ケガをして練習を休んでいるときは運動量も落ちる
●ケガをしていることが食欲に影響を与えることは少ない。食べすぎは体脂肪のもと
●甘いものを食べたいときは砂糖よりもハチミツの方が低カロリー

参考書籍)「アスリートのための食トレ」海老久美子著・池田書店

(文=西村 典子

次回コラム公開は5月30日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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