Column

骨折の特徴とヒビ・骨挫傷との違い

2015.05.31

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 春の県大会や地方大会も残すところあとわずか。これから夏に向けての課題をもって練習に取り組むチームも多いと思います。特に3年生は最後の大会となりますので、残り1ヶ月を悔いの残らないよう、そして大きなケガをしないように毎日の練習に励んでもらいたいと思います。さて今回はさまざまな場面で想定される骨にまつわるケガについてお話をしたいと思います。

突発的に大きな外力で起こる骨折

ヘッドスライディングは突き指などで骨折のリスクが高まる

 骨のケガといってまず思いつくのが骨折です。打撲などの大きな外力が体に加わることによって、骨の連続性が断たれてしまう状態をいいます(疲労骨折についてはこの限りではありません。第61回「疲労骨折を防ごう」のコラムを参照)。

 突発的に起こるケガは予防することがむずかしいのですが、例えば自打球で足の甲にボールが当たって骨折することを避けるためにフットガードをつけるとか、突き指しないようにヘッドスライディングを避ける、といった予防策はとることができると思います。バントを試みたときに指を負傷した、ライナー性の打球が体にあたった、クロスプレーで選手同士が接触したといった大きな外力が体に加わったとき、骨折を疑う必要があります。

骨折の特徴

 プレー中に受傷し、激しい痛みを伴う場合は骨折の症状が見られるかどうかをチェックします。

●外見から見ても明らかに折れているとわかるような変形(特に鼻骨骨折などはわかりやすい)
●関節以外のところで骨が動く異常な可動性
●激しい痛みを伴う(外見上わからないときは、患部をそっと押して確認する。圧痛があるかどうか)
●受傷から時間をおかずみるみるうちに腫れてくる
●内出血がみられる(骨が折れていると骨折部から出血し、周辺の組織にも影響を及ぼす)
●動かすことができない(機能低下)

 また、受傷した部位の周辺を手や指で軽く叩き(タッピング)、振動で痛みが出るようであれば骨折が疑われます。骨の連続性が断たれたものを骨折といいますが、骨の位置などが変わらない状態を「ヒビ」といって区別することもあります。医療機関では「ヒビ」もすべて骨折(亀裂骨折、不全骨折等)として扱われ、骨折と同じように対応する必要があります。「ヒビ」は骨折よりも症状が軽いというわけではありません。

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[page_break:激しく強打して起こる骨挫傷 / 骨折が疑われるときの応急処置]

激しく強打して起こる骨挫傷

 骨折やヒビはなじみのある言葉ですが、骨挫傷(こつざしょう)というのは聞き慣れないものではないでしょうか。挫傷とは皮下組織や深部が傷つくことでいわゆる「うちみ」と呼ばれるものですが、大きな外力によって骨内部の組織が損傷し出血して起こります。骨挫傷はレントゲンなどではわからないため、MRIを行って診断を確定させる必要があります。スライディングで相手選手と衝突して強く打撲したケースなどに見られます。

骨折が疑われるときの応急処置

副木などを用いて動かないように固定しよう

 突発的なケガが起こったときはまず基本のRICE処置にしたがって応急処置を行いましょう(参考ページ:第19回「応急処置の基本はRICE」)。特に骨折が疑われる場合は小さな振動や衝撃でも激しい痛みを伴うため、患部が動かないように固定することが重要になります。

 副木(添え木)になるものをあてて、包帯や布などで固定するようにしましょう。受傷した部位にもよりますが、可能であれば二関節をまたいで固定すると安定します(前腕の骨折が疑われる場合は手関節から肘関節までを固定する)。指の損傷は受傷していない隣の指とあわせて固定することもあります。

 応急処置後はすみやかに医師の診察を受けるようにしましょう。骨折している場合、骨の位置が変わらなければそのまま固定しますが、ずれている場合は整復(元の正常な位置に戻すこと)が必要となります。

 骨折から競技復帰までかかる時間は、損傷の部位や受傷程度、固定期間などによって大きく変わります。ただしケガをした際の初期対応がその後の競技復帰を大きく左右しますので、迅速な対応を心がけましょう。

【骨折の特徴とヒビ・骨挫傷との違い】
●骨折は一回の大きな外力が体に加わることによって骨の連続性が断たれてしまう状態
●予防はむずかしいが、骨折を防ぐ対策をとることは可能
●骨折には激しい痛みや腫れ、変形、機能低下などが伴う
●ヒビは骨の位置が変わらない状態だが骨折と同じ
●骨挫傷は大きな外力によって骨の内部が損傷した状態
●骨折が疑われる場合はまずRICE処置、そしてすみやかに医療機関を受診する

(文=西村 典子

次回コラム公開は6月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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