Column

打撲とコンパートメント症候群

2013.09.15

フットガードでボールから身体を守ろう

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

ようやく暑さも峠を越したようで、朝晩は涼しい風が吹くようになりました。皆さんの住んでいる地域では寒いと感じるところもあるかもしれませんね。この時期は秋季大会が開催され、来春のセンバツ大会を目指す戦いは激しさを増していることでしょう。さて今回は試合中にデッドボールや自打球などがふくらはぎに当たった際に、特に気をつけたいことについてお話をしたいと思います。

◆防具をつかって予防する
まず打席に立つときは出来る限り、デッドボールや自打球を予防するためのフットガードなどの防具を使用するようにしましょう。バットにボールを当てた瞬間から、バッターはランナーになります。走る際に防具が煩わしいという理由で、防具をつけずにプレーする選手も見られますが、当たって痛いだけならまだしも骨折をすることもありますので、まずは自己防衛の手段として防具を使用するようにしましょう。個人で準備するのがむずかしい場合は、チーム分として準備してもらうことも一つの方法です。

防具をつけた状態でのデッドボールや自打球による打撲は、つけていない状態に比べて格段にケガの状態を軽減することが出来ます。それでも防具がカバーしきれなかった部位にボールが当たることはあります。

◆コンパートメント症候群とは?
ふくらはぎにボールが当たったときに特に気をつけたいことが「コンパートメント症候群」と呼ばれる急性外傷です。デッドボールや自打球による打撲(時には骨折)などが原因となって、組織の内部では出血(いわゆる内出血)が起こるのですが、このときに組織内に血液がたまってしまい、他の血管や神経などを圧迫することがあります。悪化すると組織内の細胞を壊死させてしまうこともあるため、受傷後の適切な対応が不可欠です。

ふくらはぎにはコンパートメント(区画)と言われる、小さな部屋のようなものが前方、外側、後方に2つ、計4つあるのですが、この部屋同士はドアがないため行き来することが出来ません。このような環境の中で、一つの部屋が内出血によって血液がたまった状態になってしまうと、腫れを受け止めるだけのスペースがなくなってしまい、血管や神経などを圧迫してしまうのです。大腿部や前腕にもこうしたコンパートメントが存在します。


試合だけではなく練習でもボールに当たる危険性を理解しよう

◆急激な痛みやしびれは要注意
コンパートメント症候群にはデッドボールや自打球など、急性の外力によって起こる急性コンパートメント症候群と、繰り返しのジャンプやランニングなどによって起こる慢性コンパートメント症候群があります。

急性コンパートメント症候群の場合、急激な痛みやしびれ感などを訴えることが多いため、大きな外力を受けた後の患部の様子をしっかりとチェックする必要があります。腫れが増大し、組織内圧が高くなって組織の壊死が進行してしまうと、後遺症として機能障害が残ってしまう場合があるので、迅速な判断が必要となります。症状が重い場合には組織内の圧力を下げるための除圧手術を行います。

このような症状が疑われる場合はプレーを中断し、RICE処置を行います。急激な痛みや腫れ、変形などがある場合はすぐに医療機関を受診するようにしましょう。症状が軽減されてきた段階よりストレッチを開始し、痛みが出なくなったところから患部のトレーニングを行っていくようにします。

デッドボールや自打球そのものは特別珍しいことではありませんが、当たった部位によっては適切な応急処置と医療機関への搬送が必要となります。コンパートメント症候群という急性外傷があることを頭の片隅におき、いざというときは冷静かつ迅速に対応するようにしましょう。

【打撲とコンパートメント症候群】
●デッドボールや自打球を予防するための防具を準備しよう
●ふくらはぎや太もも、前腕などにはコンパートメント(区画)が存在する
●コンパートメント症候群は血管や神経を圧迫することがある
●重篤な場合は組織内の圧力を下げるための手術が必要となる
●打撲時にはまずRICE処置を。急激な痛みやしびれを伴う場合はすぐに医療機関を受診しよう

(文=西村 典子

次回、第77回公開は09月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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