Column

スライディングとケガ

2012.09.30

スライディング練習で歩幅やスピードを把握し、ケガを防ごう

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

野球の練習や試合などでは、ランナーとしてスライディングを行う機会が多いと思います。セーフかアウトギリギリのプレーや、ダブルプレーを防ぐためのプレーなどケースによってさまざまですが、スライディングによって起こるケガも考えられます。

特にヘッドスライディングでは、手首や肩の脱臼、突き指、頸椎損傷など重傷になることもあります。今回はスライディングとそのケガについて考えてみたいと思います。

ベースランニングは普通のランニングやダッシュと違い、30m弱の正方形を時計と反対回りに走ります。コーナーにあたる各塁ではなるべくロスの少ないランニングを心がけ、間一髪のプレー時などでは、ベースめがけてスライディングすることで、走ってきたスピードを落とさずに目的の塁までたどりつくことが出来ます。またスライディングをすることで相手のタッチをかいくぐり、アウトになることを避ける目的もあります。スライディングをすることによってケガをするケースが見られますが、スライディングをしないことでもまたケガをすることがあるので、機敏な判断力と同時に、一度滑ると決めたら必ずスライディングをすることが大切になってきます。

ベースとスライディングの距離とがうまくあわず距離が短くなってしまうと、固定ベースに向かって勢いよく滑り込んでしまい、その衝撃が足先から伝わって足関節の捻挫や骨折、膝関節の靱帯損傷や太もも、臀部のケガなどが起こります。特に足の速い選手は、自分自身のスピードを把握し、コントロール出来る技術を習得することが理想的です(そのスピードさゆえのケガも何度か目撃しました)。また距離に関わらず手をついた際に、手首の捻挫なども起こることがあります。こうしたケガを避けるためには普段の練習から正しいスライディングの技術を習得し、繰り返し練習を行うこと、そしてスライディングをすると決めたら途中でやめずに滑りきることを意識して行うようにしましょう。


固定ベースへのヘッドスライディングはなるべく避けよう

一塁へ向かうときによくヘッドスライディングを行う選手を見かけますが、塁間のスピードはヘッドスライディングするよりも駆け抜けたほうが早いという意見も多く、ケガのリスクを軽減させるためにもヘッドスライディングは極力避けるほうがよいと言えるでしょう。
ヘッドスライディングを行うと手を踏まれたり、突き指をしたりするだけではなく、距離があわなければベースに手をついた際の衝撃で肩の脱臼を起こしたり、頸部や頭部へのケガをしたりと非常にケガのリスクが高くなってしまいます。

肩関節は腕を横に90度上げ、肘を90度曲げた状態(肩関節外旋・外転)で後方から衝撃を受けると、容易に前方へと肩関節が外れやすくなる構造になっています。ヘッドスライディングやランナーの帰塁時などはこうした肢位になりやすく、相手の選手がグラブでランナーをタッチしたときに外れてしまうことが多いようです。肩の脱臼をしてしまうとプレー復帰までに数ヶ月かかってしまうこともあります。

スライディングは野球の技術の一つではありますが、ケガをしないためのものでなければなりません。技術不足や準備不足によるスライディングや、不用意なヘッドスライディングをなるべく避けて、正しいスライディングを繰り返し練習して習得することが大切だと思います。

【スライディングとケガ】
●スライディングは本来ケガを避けるために行う野球の技術である
●一度決めたら迷わずスライディングを行うこと。躊躇するとケガをする
●ベースとの距離があわなければ、足や膝、臀部などにケガをすることがある
●思い切り手をついた際に手首を捻挫することがある
●ヘッドスライディングはベースへのスピードを緩めるだけではなくケガのリスクが増大する
●正しいスライディング技術を練習し習得することが大切

(文=西村 典子

次回、第54回公開は10月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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