Column

硬式ボールと軟式ボールの違い

2014.04.30

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 新年度も始まり、多くのチームが新入生を迎えていることと思います。私の担当するチームも新入生を迎え、いつも以上に元気よく練習していました。新入生の皆さん、新しい環境には慣れましたか? 特に中学時代まで硬式ボールを触ったことのない選手であれば、ボールの重さや硬さなどに戸惑いがあるかもしれませんね。

 今回は高校野球で使う硬式ボールと今まで使用していた軟式ボールの違いや、フィジカル面から見た注意点などについてお話をしたいと思います。

ボールの違いは重さと硬さ

硬式ボールの特徴を知り、重さに負けない体作りを目指そう

 軟式ボールの重さは中学生が扱うもので133.2〜136.8g、硬式ボールは141.7g〜148.8gと決められています。硬式ボールは軟式ボールに比べて約10g程度重いということになりますね。こうしてみると「たかが10g程度しか違わないのか」と思いがちですが、この微妙な重さが肩や肘などに負担をかけることがあります。

 キャッチボールを繰り返したり、練習で投げる機会が増えてくると、プレー時には負担を感じなくても、練習後や翌日以降に「肩や肘が重い、違和感がある、痛い」といったことが起こりがちです。野球は繰り返し動作を行うことでケガをしてしまう、慢性的なスポーツ障害の多い競技と言われていますが、これは小さな負荷(この場合は+10g)の積み重ねが原因と考えられるでしょう。

 また硬式ボールは軟式ボールに比べて硬く、当たると大きなケガにつながりやすいことも特徴です。デッドボールなどでもかなりのダメージを受けますので、初めて硬式ボールでプレーする選手にとっては、慣れるまでは怖さがあるかもしれませんね。

練習量とセルフコンディショニング

 スポーツドクターの提唱するケガ予防のための指針(日本臨床スポーツ医学会学術委員会の提言)としては、

 ●中学生、高校生においては、週1日以上の休養日をとること
 ●中学生では1日70球以内、週350球を超えないこと。高校生では1日100球以内、週500球を超えないこと。
 ●練習前後には十分なウォームアップとクールダウンを行うこと

 といったことが述べられています。(参考ページ:青少年の野球障害に対する提言:真面目にスポーツトレーニング!より)

 中学時代に比べて練習量が増えるとケガをしやすくなるのは理解できますよね。練習量が増える分、ケガをしないためのストレッチやウォームアップクールダウンRICE処置など、自分でできるセルフコンディショニングがより重要になってくるのです。

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[page_break成長期の体であることも理解しよう]

成長期の体であることも理解しよう

 高校1年生といえば15〜16歳、まさに成長期にある体であることも理解しましょう。特に骨の成長が早く、筋肉の成長は遅いため、筋肉が引っ張られて痛みを伴うことも珍しくありません。投球動作を繰り返すだけでも骨や靱帯、筋肉などに大きな負担がかかりやすいので、無理をして投げ続けるとケガをしてしまうことになります。

 特に軽い軟式ボールで上体に頼った投げ方をしていた場合、同じことを硬式ボールで行うとすぐに肩や肘に違和感や痛みを覚えるはず。下半身の力を上半身に伝えるように体全体を使って投げることを意識して行うようにしましょう(参考コラム:成長期のスポーツ障害)。

土台作りとなるトレーニング

トレーニングは土台作りとして日頃から取り入れよう

 ケガをしないための土台作りとして、技術練習と並行してトレーニングにも取り組むようにしましょう。重い負荷のバーベルを上げることだけがトレーニングではありません。

 スイングでぶれないようにするための腹筋・背筋を中心とした体幹強化や、自分の体をしっかり支えるためのバランストレーニングなど、大がかりな器具や施設がなくても自重トレーニングで十分対応できます。物足りないと感じるようになったら、ウエイトを使ったトレーニングに移行していくことも良いでしょう。

 その際は扱う重さを少しずつ増やしていくこと(一気に重いものを扱わない)、筋肉痛や疲労に対するケアをしっかり行うこと、練習(トレーニング)、栄養、休養のバランスを考えることなどを考慮してすすめるようにしてください。

 硬式ボールを扱うようになると、肩や肘などへの負担が大きくなる分、ケガをしやすくなることが考えられます。こうしたケガを予防するためには、日頃からのコンディショニングが大切。痛みや違和感があるときは無理をしないということもぜひ覚えておいてくださいね。

硬式ボールと軟式ボールの違い

●硬式ボールは軟式ボールに比べて約10g程度重く、硬い
●小さな負荷の積み重ねがケガの原因になることがある
●ケガ予防のためのセルフコンディショニングを怠らない
●成長期の体は筋肉などに負担をかけやすい
●練習と並行して自分の体に合ったトレーニングを始めよう

 (文=西村 典子

次回、第92回公開は5月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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