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東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15


帝京監督時代の前田三夫氏、関東一・日大三を率いた小倉全由氏

6月15日、第106回全国高等学校野球選手権東西東京大会の抽選会が行われる。今年は東西に分かれて50周年。東京二代表校の歩みを振り返る。第3回は80年代に台頭し、現在の東東京をリードする帝京関東一の軌跡を中心に見ていこう(文中敬称略)

これまでの記事を読む:
◆なぜ、夏の甲子園で東京は2つの代表枠を持つことができたのか? “絶対権力者”の反対を振り切った一人の名物監督の“力 ”【東西東京大会50周年物語①】
◆“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】

帝京黄金時代と、小倉全由監督率いる関東一の台頭

82年のセンバツでは、現監督の市原勝人投手を擁する二松学舎大附が準優勝を果たし、全国にその名を知らしめた。翌年のセンバツでは、帝京が夏春制覇をした池田に0-11で敗北。池田のパワーに押されての完敗であった。帝京はこの敗戦をきっかけにフィジカル強化に取り組んだ。そのことが、その後の黄金時代につながっていく。
83年夏の東東京大会の決勝戦で帝京は、26歳の青年監督であった小倉全由監督率いる関東一を3-2で破り、夏の甲子園初出場を果たす。しかし打倒・池田に燃える選手たちは、東東京優勝にもさほど喜びの表情をみせなかった。帝京は甲子園初戦で好投手と評判の秋村謙宏を擁する宇部商と対戦。1点を争う好ゲームになったが、9回裏に浜口大作に逆転サヨナラ2ランを打たれ敗退した。
84年のセンバツでは、初出場の岩倉が決勝戦で2年生の桑田 真澄、清原 和博を擁するPL学園を1-0で破り、高校野球ファンを驚かせた。夏の東東京大会では4回戦で二松学舎大附に7-9で敗れている。二松学舎大附は後にミスター・ロッテと呼ばれる初芝清がエースで中心打者だった。決勝戦は二松学舎大附日大一の対戦になったが、日大一がエース・渡辺英樹の好投で優勝した。

この時代の東京勢のセンバツでの活躍は目覚ましく、85年のセンバツでは帝京が、エース・小林 昭則が準決勝で池田を完封し、決勝戦に進出。決勝戦ではPL学園を破った伊野商に敗れたものの、2度目の準優勝。帝京は全国的な強豪校としての地位を確かなものにした。夏の東東京大会でも、帝京は当然優勝候補の筆頭だった。
この年、打倒・帝京に並々ならぬ闘志を燃やしていたのが小倉 全由監督率いる関東一だった。関東一は前年の秋季大会の1次予選で帝京に1-10で敗れ、春季大会では本大会の決勝戦で対戦し、2-9で敗れていた。
関東一は東東京大会では準々決勝の日大一戦で7点差を逆転するなどして決勝戦に進出し、帝京との対戦になった。試合前のノックなどをみても、帝京の方が力は上のように感じたが、いざ試合になると関東一が圧倒。12―5という思わぬ大差で勝ち、甲子園初出場を決めた。優勝決定後のインタビューで小倉監督は男泣き。この戦いが、帝京・前田 三夫監督、関東一・小倉監督のライバル物語の本当の意味での始まりになった。
なおこの年の東東京大会から江戸川区球場が試合会場に加わった。関東一は校舎が江戸川区にあり、江戸川区の学校が甲子園に行くのも初めてであった。関東一は甲子園では初出場ながら準々決勝まで進出している。

東東京でも都立勢の躍進が…

翌86年は、波乱の年になった。東東京大会を制したのはノーシードから勝ち上がった正則学園だった。草野球程度の経験しかないという深沢昇部長兼監督が一から作ったチームで、この代では、身長186センチの大型投手である鈴木 亮の好投が光り初出場を果たした。甲子園では広島工に1-4で敗れた。この試合では登板していないが、広島工の控え投手に、現ヤクルト監督の高津 臣吾がいた。
この年の東東京でもう一つ特筆すべきは、都立足立西が春季都大会の準決勝で帝京を破り決勝に進出、優勝は逃したものの、関東大会に出場したことだ。4番で捕手の大塚を中心として打撃のいいチームだった。夏は準々決勝で関東一に敗れている。
グラウンドが比較的広い西東京には力のある都立勢があったが、東東京には目立ったチームがなかった。足立西は、都立城東都立雪谷都立小山台といった、その後の東東京の都立勢躍進の先駆けになった。

87年のセンバツには関東一帝京が出場し、関東一は平子浩之―三輪隆のバッテリーの活躍もあり、準優勝を果たす。帝京は準々決勝で敗れたものの、現中日監督の立浪 和義が主将を務め、春夏制覇を果たすPL学園に2-3と善戦した。夏は帝京が東東京大会を制した。甲子園では2回戦でエースの芝草 宇宙がノーヒットノーランを達成した。東京の投手のノーヒットノーランは、57年に早稲田実の王貞治が達成して以来の快挙であった。帝京はこの大会で準決勝に進出。春に続いてPL学園と対戦し、5-12で敗れたものの、全国制覇を狙えるチームになりつつあった。

帝京、悲願の全国制覇を果たす

東東京の話を続けよう。というのも、東東京大会の最初の四半世紀は、帝京早稲田実関東一といったライバルチームと切磋琢磨しながら、頂点にたどり着く、というストーリーが結果として成立しているからだ。
88年の東東京大会は決勝戦で修徳との激戦を制した日大一が優勝した。日大一は甲子園では優勝した広島商に敗れている。
平成元年となった89年、センバツに出場した帝京は「東の横綱」として注目されたが、1回戦で報徳学園に敗れた。このチームは近鉄などで活躍する吉岡雄二がエースで4番というチームの柱であった。しかし6月の練習試合で左足をねんざして調整が遅れ、東東京大会は優勝したものの、内容は良くなかった。
それでも、甲子園での最初の試合が大会6日目と遅かったことが幸いした。初戦の米子東戦を被安打5の完封。3-0で勝利したことで勢いに乗った。危なげない内容で一気に勝ち上がり決勝戦に進出した。
決勝戦は仙台育英の大越基との対戦になった。大越の打順は3番。吉岡は4番と、ともに投手が引っ張るチームの対戦は、両エースの息詰まる投手戦で0-0のまま延長戦に突入した。延長10回表帝京は3番・鹿野 浩司の2点適時打が決勝点になり、帝京が悲願の全国制覇を果たした。殊勲打の鹿野はセンバツでは主将だった。しかし責任感が強い鹿野はスランプに陥っていた。鹿野の打撃を生かすため主将を1番打者の蒲生 弘一に交代していた。前田監督しては賭けであったが、選手がよく応えての初優勝であり、前田監督は歓喜の涙を流した。

次のページ:勢いに乗る帝京、センバツも制覇する/95年の甲子園、前田マジックが冴えわたる

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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