Column

成長期のスポーツ障害

2012.08.30

中高生の身体は成長段階。骨やその周辺に痛みが出やすい

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

あっという間に夏休みも終わり、2学期が始まりますね。秋の地方大会が行われているところも増え、選手の皆さんは次の目標に向けて、毎日練習に汗を流していることでしょう。さて今回は成長期によく見られるスポーツ障害についてお話をしたいと思います。皆さんの身体はまだまだ成長段階にあるのでいろんな部位が未熟であったり、少し弱いところがあったりするので、そういった身体の仕組みを知ってケガ予防に役立てて欲しいと思います。

最も特徴的なこととしては、成長期と呼ばれる時期の身体は「骨とその周辺部に痛みが出やすい」ということです。特に中学生・高校生の時期は身長がグンと大きく伸びる時期でもあるのですが、大ざっぱに言ってしまえば、身体の骨が縦方向に伸びるために起こることと考えられています。骨は縦方向にドンドン伸びて長くなっていくのですが、骨についている筋肉や腱は、骨に比べて成長がゆるやかなため、骨の成長スピードに追いつくことができずに、常に引っ張られて緊張した状態になってしまいます。そこへ日々のハードな練習が積み重なって疲労がたまってしまうと、ただでさえ引っ張られている筋肉や腱はさらに柔軟性を失ってしまい、痛みが発生してしまうのです。

特に中学生などに対して「ウエイトトレーニングを行うと身長が伸びない」ということを指摘する声を聞いたことがある人もいると思いますが、これは骨の成長に対して筋肉や腱が追いつかず、骨と筋肉や腱の付着部に痛みが発生することを理由にしているものだと考えられます。この時期の選手に対してトレーニングを行う場合は、筋肉や腱の成長に合わせた適切なエクササイズを選択して行う必要があります。自体重でしっかりとバランスをとってトレーニングを行うことが出来るようになると、次の段階として適切なウエイトを利用したトレーニングへと移行します。


膝下の痛みを予防するには太ももの前の筋肉を伸ばそう

成長期のスポーツ障害は主に下肢(=下半身)に多くみられます。下肢に多くみられる理由としては下肢の関節は体重を支える荷重関節であり、さまざまな動作によってその負荷が骨や関節に直接かかるためです。

肩や肘などの上肢(=上半身)にもスポーツ障害はみられますが、下肢の柔軟性低下が原因で起こることも多いのです。

野球選手によくみられる成長期のスポーツ障害の具体例を解説します。

《オスグッド病(脛骨粗面=膝下、脛の部分)》
膝の下が痛くなる代表的なスポーツ障害の一つ。身長が著しく伸びる小学校高学年から中学、高校にかけての時期によく見られます。太ももの骨の成長に筋肉や腱が追いつかないため、膝蓋骨(膝のお皿の部分)の下あたりが常に筋肉や腱で引っ張られた緊張状態を作り出し、激しい動作や膝の曲げ伸ばしなどを繰り返すと痛みや腫れが起こります。この状態が長く続くと膝下にポコッと腫れたもの(骨の隆起)が起こることがあります。

《ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)》
野球選手にとって、オスグッド病ほど頻度は高くありませんが、ランニングの量が増えたり、太ももの柔軟性が低下したりすることで起こります。膝蓋骨付近もしくはその下にある靱帯が、太もも部分の筋肉疲労や繰り返しのジャンプ動作などによって炎症を起こし、痛みや腫れなどがみられます。ランニングでは通常体重の2~3倍の力が膝付近にかかるのですが、その重さを筋肉や靱帯が支えきれないことによって起こります。

《シンスプリント》
ランニングや練習量が極端に増えると足の脛(すね)の内側あたりに痛みが出ることがあります。これを一般的にはシンスプリントと呼んでいます。患部を押すと痛みが出るのが特徴的で、この状態のままムリに練習を続けていると、やがて疲労骨折になってしまう可能性があるので注意が必要です。筋肉が疲労し、柔軟性が低下することによって、骨を覆っている骨膜が常に引っ張られた状態となって炎症を起こすと考えられています。

これらのスポーツ障害を予防するためには、普段からのストレッチRICE処置などのセルフケアが大切です。特に膝周辺部のケガ予防には、大腿四頭筋と呼ばれる太ももの前の筋肉をストレッチすることが有効的です。また練習面では量や強度を上げるときは段階的に行うようにしましょう。練習量や強度を一気に上げてしまうと、成長期の身体は疲労が蓄積して柔軟性が低下し、骨付近を中心に痛みが現われることが多いので注意が必要です。自分の身体を知り、練習前後のセルフケアを重点的に行うことで、成長期のスポーツ障害を予防するように心がけてくださいね。

【成長期のスポーツ障害について】
●成長期の身体は「骨とその周辺部に痛みが出やすい」ことを理解する
●骨の成長は筋肉・腱の成長よりも早い
●ウエイトトレーニングは自体重でバランスが取れるようになってから
●成長期のスポーツ障害は下肢に起こりやすい
●膝周辺部のケガ予防に大腿四頭筋のストレッチが効果的
●練習量と強度は段階的に上げていくこと

(文=西村 典子

次回、第52回公開は09月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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