Column

次につながるクールダウン

2013.07.15

練習や試合後のクールダウンは次への準備

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

このコラムが公開になる頃は、夏の地方大会が開催され、連日熱戦が繰り広げられていることと思います。

自分たちの実力を出しきるためのコンディションについては前回「試合時の脱水予防」でも少し触れましたが、今回は試合後のクールダウンについて、次に備えるためのポイントなどを中心にお話をしたいと思います。

甲子園大会ではメディカルサポートという制度があり、出場校は試合の勝敗に関わらず、試合後のストレッチ指導を必ず受けることになっています。最近では地方大会でも上位になるとこうしたサポートを受けられる機会が増えています。このようなクールダウンとしてのストレッチは、サポート体制に関わらずチーム全体として取り組んでもらいたいことの一つです。クールダウンを行う目的をおさらいしておきましょう。

疲労回復をうながす》
筋肉を動かすことによって血管が収縮し、筋肉内にたまった疲労物質を分解して体外に排出するサイクルを早めます
《柔軟性の回復》
筋肉が硬くなってしまう前にクールダウンを実施することで、緊張状態をゆるめ、柔軟性不足によっておこるケガの予防につながる
《体調を整える》
疲労や柔軟性の回復を早めることで、その日の体調を整えることができ、慢性疲労の予防になります。また次の試合に向けてのコンディションを良好に保つことができます。

クールダウンというと全体でゆっくりとストレッチすることを思い浮かべる人も多いと思いますが、こうした静的ストレッチの前後にも、次につなげるためのさまざまな取り組みがあり、クールダウンに適した順番もあります。

【クールダウンの順番】
試合後、軽くジョギングなどで主運動(この場合は野球のプレー)の強度から軽めの運動へと切り替え、5分から10分程度時間を取って行います。だんだんと強度を下げていき、最後はウォーキングでゆっくりと呼吸を整えます。その後、反動をつけない静的ストレッチを行います。各部位のストレッチは15秒~20秒程度、時間をかけて行うことが理想ですが、あまりクールダウンに時間がかけられない場合はこの限りではありません。ストレッチの時間を十分取ることができなかった場合は、帰宅して入浴後に各自でストレッチを行う時間をとるようにしましょう。また試合後、練習後に痛みのある部位についてはRICE処置を行うようにしましょう。炎症症状を悪化させないことが第一です。


ふくらはぎを使うクールダウンを意識しよう

【ふくらはぎに注目しよう!】
クールダウンの始めに軽くジョギングやウォーキングを行う理由としては、今まで運動で上がっていた心拍数を徐々に平常時に戻し、血中にたまった疲労物質を血流に乗せて早く分解・排出サイクルへとのせるようにするためです。こうすることで手の先や足の先などの末端まで血流が良くなり、疲労回復に役立ちます。またふくらはぎの筋肉を動かすと、そのポンプ作用で血流が良くなることが知られています(ミルキングアクション効果)。「歩く」「走る」といった動作は必ずふくらはぎの筋肉を動かしますので、こうしたことからもジョギングやウォーキングはクールダウンに適しているといえます。

また下肢からの血行を早く循環させるという観点から考えると、寝転がって足を高く上げる姿勢も効果的です。野球はインターバルの時間が決まっているわけではないので、普段あまり目にしませんが、サッカーやラグビー、バスケットボールの試合などでは、選手たちがインターバルの時間を利用して、足を壁にもたれかけさせて仰向けに寝転がっているシーンを見ることがあります。足の疲労回復にも役立ちますので、時間の経過とともにこうした姿勢を取ることも良い方法だと思います。

次の試合にむけた準備は試合直後から始まっています。その日の疲労を翌日に残さない、万全のコンディションで臨むためにはこうした日頃の心がけと実践が不可欠です。できるものからぜひ実践してみてくださいね。

【次につなげるためのクールダウン】
●クールダウンは疲労回復・柔軟性回復・体調を整える
●静的ストレッチの前に軽くジョギング・ウォーキングを取り入れよう
●ふくらはぎを動かすことで疲労回復に役立つ
●仰向けで寝転がって足を高く上げる姿勢も効果的
●次の試合にむけた準備は試合直後から始まる

(文=西村 典子

次回、第73回公開は07月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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