Column

クロストレーニングに挑戦

2012.12.15

走り込みも大切。そしていろんなスポーツにもチャレンジしよう

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

急に気温が低くなり、あちらこちらで初雪、初霜など冬の便りを聞くようになりました。皆さんは風邪などひかず、元気に練習していますか。今年はウイルス性の胃腸炎も大流行の兆しがあるとのことで、より入念な自己管理をお願いしたいと思います。さて今回はこの時期にこそチャレンジしてみたい、クロストレーニングについて考えてみようと思います。

「クロストレーニング」という言葉を聞いたことはありますか。クロストレーニングというのは、一般的には自分の専門種目以外の種目をトレーニングとして取り入れることをいいます。

皆さんの場合は野球以外の種目をトレーニングとして取り入れるということになります。アメリカでは、ジュニア期には夏に行うスポーツと冬に行うスポーツを二刀流で行うことも多く、運動神経を養い、筋力バランスを整えるという観点からも積極的に行われています(例えば暖かい時期は野球、寒い時期はアイスホッケー等)。野球の動きとはまったく異なることを行うわけですが、こうしたクロストレーニングにはさまざまなメリットがあります。

【クロストレーニングにおけるメリット】
・専門種目以外の動作を行うことで筋力バランスを改善する
・同じ動作を繰り返すこと(オーバーユース=使いすぎ)によるケガ予防
・オフシーズン時のフィットネスレベルの維持向上
・心理的な休息、気分転換、リフレッシュ効果

野球の動作を繰り返すことで専門的な動作は向上しますが、筋力バランスや神経-筋のコーディネートといったことにはどうしても偏りが出てしまいがちです。また特に野球は投球側、非投球側というように利き腕があり、バッティングについても右打ち、左打ちという左右非対称な動きをすることが多いので、オーバーユースによるケガのリスクも高まります。クロストレーニングはオフシーズンの時期にあわせて、普段あまり鍛えていない部分を鍛えたり、動かしたりすることで、筋力バランスの改善をはかり、運動神経との連動を向上させる効果が期待できます。


サッカーで心肺能力やスタミナを鍛えよう

クロストレーニングとして行うスポーツをいくつか考えてみましょう。

【バドミントン】
よく投球フォームの確認としても利用されるバドミントンは、肘が肩の位置から下がった状態でスマッシュを打つことはむずかしく、正しい腕の振り方や肩甲骨の使い方などを身体で覚えるために非常によいトレーニングになります。ただし野球と同じ利き腕を使って行うため、オーバーユースには注意が必要です。また人数が多いと一度にみんなで一斉に行うということはむずかしいですが、投手やバッテリーといった少人数でのクロストレーニングとしては実施しやすく、楽しみながら野球の技術的な動作を習得することが期待できます。

【水泳】

アクティブレスト
としても利用される水泳は全身運動であり、筋のリラクゼーション効果、疲労回復、水の抵抗によるインナーマッスルのトレーニングとさまざまな目的に利用することが出来ます。またタイム設定や泳ぐ本数、休息時間などを設定して実施すれば、立派な有酸素運動として主に持久力・スタミナアップのトレーニングとしても活用できます。学校やグランドの近くにプールがない場合は実施することはむずかしいかもしれませんが、利用できるプールがある場合は積極的に取り入れることをオススメします。

【サッカー】
下半身を使って行うサッカーは、普段使っていない筋肉を使うことが多く、筋力バランスや筋肉と神経のコーディネーションを養うのによいトレーニングです。間欠的に走り続けるため、心肺能力や筋持久力の向上といった効果も期待出来ます。ただし本格的なゲームを行うと夢中になるあまり、相手を押し倒してケガをさせたり、あわてて切り返して足関節や膝を捻挫するなど、主にスポーツ外傷のリスクが高まることが懸念されます。トレーニング時間を考慮する、ムリに勝敗をつけない等、クロストレーニングとしてのメリットを優先させて行うようにしましょう。

【ボルダリング】
フリークライミングの一つであるボルダリングは、スポーツとしてもとても人気があります。カラフルな石や岩、突起物などを埋め込んだ人工壁をみたことがある人もいるかもしれませんね。手と足を使ってバランスを取りながら頂上を目指し登っていくことは、腕や足の筋肉を鍛えるだけではなく、不安定な場所での体幹の強化やバランス能力の向上にもつながります。ただしボルダリング専用の壁を持つ施設はまだまだ少ないのが現状です。興味のある人は近くの施設を探してみてください。

このほかにもさまざまなスポーツ種目や運動をクロストレーニングとして行うことが可能です。普段とは違った動きを行うためウォームアップやクールダウンは入念に、そしてケガには気をつけて身体を動かすようにしましょう。人数、場所、用具や施設などにあわせたクロストレーニングの導入をぜひ検討してみてくださいね。

【クロストレーニングに挑戦】
●自分の専門種目以外の種目を取り入れることをクロストレーニングという
●クロストレーニングのメリットは筋力バランスの改善、神経-筋のコーディネート、スポーツ障害の予防など
●バドミントン=腕の振り、しなり、肩甲骨の使い方など
●水泳=スタミナ強化、筋のリラクゼーション効果、疲労回復効果等
●サッカー=心肺能力の向上、下半身の筋力強化、切り返し動作の向上等
●ボルダリング=不安定な場所での体幹強化、バランス能力の向上等
●それぞれの種目にはメリット、デメリットがあるのでそれらを理解した上で行おう

(文=西村 典子

次回、第59回公開は12月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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