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ウォームアップとストレッチ

2010.09.30

第5回 ウォームアップとストレッチ2010年09月30日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

皆さんは野球の練習や試合を始めるときにまず最初に何を行いますか?

いきなりボールを投げたり、バッティングを始めたりといった選手はいないことを願いつつ!
今回は準備としてのウォームアップ、特にストレッチについて考えてみたいと思います。


ウォームアップとは文字通り体を温めて、メインの練習や試合に備える準備段階での運動のこと
を言います。

このウォームアップは車でいうとエンジンを温めている状態で、よりよい動きができるため、そしてケガを予防するために必要不可欠なものです。ウォームアップはさまざまな効果がありますが皆さんが覚えておいてほしいものをいくつかご紹介しておきましょう。

1)体温・筋温を上昇させ、柔軟性を高める
運動をすることで体温や筋温(筋肉の温度)が上昇し、柔軟性が高まります。
また関節のもつ可動域(関節の動く範囲)をより大きくすることが出来ます。

2)血流をよくして運動できる体にする
運動開始からしばらくすると呼吸数や量、心拍数など酸素を体に取り込む量が増えていきます。
運動時に安定して動けるようになるにはタイムラグが発生するため(数分程度)、あらかじめ体を動かしておくことでより多くの酸素を取り込みながら動けるようになります。

3)神経の働きをよくする
ウォームアップは脳の中枢神経をより活発化させ、運動したときの神経系の反応を高める効果があります。
また体温・筋温の上昇は神経の伝達速度を高め、運動の命令を素早く筋肉へ伝えて動かすことが出来ます。

4)心理的な準備
運動を始めるとアドレナリン量が多くなり中枢神経を刺激して、運動に対する心理的な準備が整います。

写真1

一般的には軽いジョギングなどから始め、体操やストレッチを行い、その後、野球の動作に近い動きを取り入れながらメインの練習・試合へと進んでいきます。

さてここでこのストレッチをしている写真1を見ていただきたいのですが、もしウォームアップでこのようなストレッチをしていたらちょっと待った!です。

このストレッチのどこが気になる点かといえば、まず座って行っていること。ウォームアップは試合前の準備として行うものであって、座ってしまうとどうしてもリラックスモードに入ってしまうのです。必ずしも絶対座ってはいけない、ということではありませんが、なるべくであれば立って行うようにしたいものです。

また誰かとペアになって行うパートナーストレッチと自分で行うセルフストレッチがありますが、ウォームアップとしては自分でコントロールできるセルフストレッチをオススメします。

パートナーストレッチでは必要以上に柔軟性が高まってしまい、本来自分の持つ柔軟性との差が大きくなってしまうことで、「自分の体じゃない」と感じるようになってしまいます。実際に動き出すとその感覚に慣れるのに必要以上に時間がかかってしまうのです。

またあまりにも伸ばしすぎた筋肉は、パワーが出にくいという研究発表などもあります。

この写真は実はクールダウンのときのものなのです(座位、静的ストレッチ)。


写真2

またストレッチには息を吐きながらゆっくりと時間をかけて伸ばす静的ストレッチと、ブラジル体操などのように動きながらその関節の可動範囲を広げるように行う動的ストレッチがあります。

ウォームアップのときは出来るだけ多くの時間を動的ストレッチに費やすようにしましょう。もちろん静的ストレッチも必要に応じて行っても構いませんが、基本は立って軽めに行うようにします。

こちらの写真2は立って、各自で、腿上げをしているところです。これからメインの運動に入る前の動的ストレッチの一つで、股関節の可動範囲を広げるにもいい準備運動なのです(立位、動的ストレッチ)。

どうですか?意外と知られていないウォームアップのときに効果的なストレッチ方法。グランドに座ってじっくりストレッチをする時間が長かった選手もいるのではないでしょうか。

時間をかけて伸ばすストレッチはウォームアップというよりはクールダウンに適しています。

運動前の準備、さぁこれから試合!というときは心身ともに試合モードにするためにも、立って、自分で動きながら柔軟性を高めていくようにしましょう!

(文=西村 典子

次回、第6回公開は10月15日を予定しております。 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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