ドラフト高校生 投手編 前編 「右の本格派が豊富な1996年世代」
10月9日をもって高校・大学ともにプロ志望届が締め切られた。この日までに提出した94名は、NPBに指名される可能性がある。
そうなると誰が指名されるかが予想しやすい。
またドラフトはその球団によって補強ポイントが違ってくる。右投手が必要な球団もあれば、左投手が必要な球団、野手でも様々なタイプがある。志望届を提出した選手の中で、指名が有力な選手をピックアップした。
復活の兆しが見えた安楽智大
安樂 智大(済美)
今年の特徴としては右の本格派が非常に多く、ピックアップした選手たちはNPBから指名される可能性が高い。逆に左投手は有望投手が進学希望を打ち出したため、指名人数はかなり絞られるだろう。
ドラフトの目玉である安樂 智大(済美)(インタビュー・関連コラム)は、フォームを改良した。安樂といえば、左腕のグラブを高々と掲げた状態から、身体を絞りながら、強い踏み出しから力強い腕の振りで投げていたが、夏では左腕のグラブの位置を下げた。また動き自体も以前は暴れていたように感じたが、綺麗に身体が回転できるようになった。
この夏、150キロを計測することはなかったが、常時140キロ後半の速球はキレがあり、両サイドへしっかりと投げ分けられている。また同じ腕の振りで、カーブ、スライダーをコンビネーション良く投げ分ける投球で、進化が見られた。
今の投球術のまま、速球も150キロを超えればとさらに圧倒した投球が期待できるだろう。1年目から万全の状態で投げることが出来れば、1年目に10勝を挙げた藤浪 晋太郎のような成績を期待したいと思う球団も多いはずだ。
1年経て大きな成長を見せた高橋光成
髙橋 光成 (前橋育英)
高橋 光成(インタビュー:2014年8月29日公開・8月30日公開)は、この1年で、さらに成長を見せていた。
投球フォームも以前より角度を付けた投球フォームに改良し、最速149キロまでにスピードアップ。2年までは変化球主体の投球が目立ったが、ストレートで押す投球が目立つようになった。
だが要所で打者を見ながら、変化球で抑えるコツは掴んでいるので、今年の高校生投手では別格の右腕といえるだろう。
飯塚 悟史(日本文理)は制球力の高さ、変化球のキレがより増し、また精神的にも成長が見られたことで、試合をしっかりと作れる投手へと成長をとげた。高校生にしては珍しく、奥深く投球を追求できる投手だ。
こういうタイプは年齢を重ねることで強みを発揮する投手。あとは足りないのがプロで通用する球速・球威面だが、それはプロ入り後のトレーニングで、しっかりと鍛えていけるだろう。ローテーション候補として育てていきたい投手だ。
選手権大会での東海大相模戦(試合レポート)では、最速143キロと本来のスピードではなかったが、スライダー、カーブ、フォークを駆使し、打たせて取る投球に終始。神奈川大会で11本塁打を放った強力打線を封じた。課題としてはどこまで投球を深く追求できるかだ。
走攻守、投球とすべてにおいて高いパフォーマンスを発揮するセンスの良さが彼にはある。いかにすればマックスの力を出すことが出来るのか、相手を見てどう投球をすれば抑えられるのか、元のセンスの良さに加え、細かいところまで考えられる投手になったとき、プロではどんなポジションでも活躍出来る投手になるはずだ。
[page_break:大化けに期待がかかる石川直也、佐藤雄偉知、鈴木優などの大型右腕]大化けに期待がかかる石川直也、佐藤雄偉知、鈴木優などの大型右腕
鈴木 優(都立雪谷)
石川 直也(山形中央)は194センチの長身から投げ込む最速148キロの直球を投げ込み、さらにスライダー、カーブ、フォークと3球種を投げ分ける。まだ制球力に欠けるが、ここまで球速を伸ばし、変化球を磨いてきた。長身投手の速球派右腕はプロから好まれるタイプ。
大和田 啓亮(日大東北)は今年の福島大会決勝で、選手権に出場した聖光学院をあと一歩まで追い詰めた。常時140キロ台を計測する速球、キレのあるスライダーを武器にする好投手だが、174センチとあまり上背のある投手ではない。スカウトは身長の高さを重視する傾向にあり、それを補うプラスアルファがあると見込めば、指名される可能性はあるだろう。
重田 倫明(千葉英和)はすらっとした投手体型から、140キロ前後の速球を投げ込む。将来性の高さでは、千葉県ではナンバーワンだが、素材を評価してのプロ入りはなるか。
鈴木 優(都立雪谷)は速球面が注目されるが、魅力はキレの良いスライダーと、フォークを自在に投げ分ける投球術だ。新3年になってから、力みから四球を出すこともあったが、最後の夏ではリズムが良い投球を実現。夏8強に導いた。
素材という点で見れば、関東地区ナンバーワンなのが佐藤 雄偉知(東海大相模)。最速148キロの速球、角度あるフォークは魅力。だが安定度では欠けるところがあり、ハイレベルな戦いが多かった神奈川大会では、登板機会が少なかった。だが彼のような長身速球投手は、リーグ戦で活きるタイプであり、1年目は成績を気にせず、実戦で投げる機会を多く積んでほしい投手。化ければかなり面白いタイプだ。
◆ここまで目玉的な投手と東日本の逸材を紹介してきました。後編では、西日本地区の本格派右腕とまた数少ない左投手のドラフト候補を明日紹介します!お楽しみに!!
(文=編集部 河嶋 宗一)