Interview

加藤 雅樹(早稲田実業ー早稲田大)ドラフト候補へ駆け上がるきっかけとなったコーチの存在

2019.07.27

 15年夏に全国4強まで勝ち上がった早稲田実(東京)で、4番として活躍した加藤 雅樹選手。4年後の現在も早稲田大で4番を務めるなど右打ちの強打者としてチームを引っ張っているが、その加藤選手に大学でのプレーについて振り返ってもらった。

故障を乗り越え首位打者を獲得

加藤 雅樹(早稲田実業ー早稲田大)ドラフト候補へ駆け上がるきっかけとなったコーチの存在 | 高校野球ドットコム
高校時代の加藤 雅樹

 高校時代は2学年下の清宮 幸太郎(日本ハム)とクリーンナップを組み、3年夏の甲子園では3回戦の東海大甲府(山梨)戦でホームランを放つなど高校通算47本塁打のスラッガーとして名を馳せた加藤選手。大学は早稲田大に進学したが、入部した当初は「スピード感が違っていて、ピッチャーの投げるボールや打者の走るスピード。それから外野手からの送球さえも速く感じました」と戸惑いがあったという。それでも「最初はただがむしゃらにやっていたこともあって、何とかなりました」と、話すように1年春から主に代打としてリーグ戦7試合に出場。公式戦初安打も放った。

 しかし、「時間が経つにつれて結果が出なくなり、新人戦ではまったく打てませんでした」と、すぐに調子を落としてしまった。そんな状況のなか、得意の打撃を活かすために捕手から外野手へと守備位置をコンバートしてレギュラー獲りを狙っていた矢先に、左足太ももの裏側を肉離れ。しかも、「早く復帰したいと焦ってしまい、治りかけたところで再発させて逆に長引かせてしまいました」と、秋季シーズンを棒に振ってしまった。

 ただ、このリハビリ期間中にチューブを使ったトレーニングに励み、「特に尻周りを鍛えて大きくしました」という加藤選手。「なんとか良い成績を収めたい」と、悔しい気持ちをぶつけた2年春のシーズンでは打率.375で見事に首位打者を獲得し、4本塁打を記録した。「たまたまな部分もありましたが、あの頃は思い切りが良かったですね。それからバッティングフォームも変えていて、高校生の頃は筋力も少なかったので重心を前に動かしながら打っていたのですが、大学だとその打ち方では差し込まれてしまうんです。だから、軸足になる左足に体重を残して打つことを大切にしていたのですが、2年生の頃は下半身もどっしりしてきていたので結果も残せたのだと思います」と、故障中の地道な努力が実を結んだ形となった。

[page_break:一心不乱にフォームを改善]

一心不乱にフォームを改善

加藤 雅樹(早稲田実業ー早稲田大)ドラフト候補へ駆け上がるきっかけとなったコーチの存在 | 高校野球ドットコム
インタビューを受ける加藤 雅樹(早稲田大学)

 しかし、その後は成績が安定せず、3年春は打率.333をマークしたものの、2年秋と3年秋は2割2分台と低迷。「良かった頃のフォームにとらわれてしまう一方で、進化したいという気持ちもあり、いろいろと考えすぎて、さまよった時期でした。答えを探しながら試合に出場して、しっくりこないまま好調と不調を繰り返していたんです」

 そんな苦しむ加藤選手が立ち直るきっかけの一つとなったのは、60年秋の伝説の早慶6連戦で逆転優勝を成し遂げ、今季から打撃コーチを務めることになった徳武 定祐(元中日など)氏の存在だ。「このオフシーズンはずっと徳武コーチにマンツーマンで指導していただきました。最初からすぐに良くなった訳ではなくて1月までの2ヶ月間は全然ダメだったんですが、2月になってからかなり感覚が良くなってきて『あ、これだ』と感じるフォームを見つけることができたんです。」

 そして、このフォームをしっかりと身に付けるために、とにかく振り込んだ。「これまでは右脇が空くことで右肩も上がってしまう悪いクセがあったので、しっかりと右肩を下げ、ムダな力を抜いて柔らかく打つように心掛けています。そして、これまでもバットは振ってきましたが、今冬は『このスイングだけをやろう』と心に決めて、ほぼ毎日。長い時は4時間ほど、一心不乱になってトスバッティングやハーフバッティング。それからバッティングピッチャーに緩い球を投げてもらって、ひたすら打ち返していました。」

 こうして体得した新フォームの手応えは十分のようだ。「センター方向への飛距離が伸びて、打球も速くなりましたし、ライト方向へきれいなライナーを打つことも増えました。」もちろん現在も徳武コーチと二人三脚で打撃向上に努めている。「力が入るとヘッドが下がってしまうことがあるのですが、そんな時は徳武コーチに注意していただいて、試合後は1打席ごとにしっかりと振り返りながらチェックをしています。精神的な面でも『バッティングでは気持ちを前に出すように』と言われていて、以前は受け身で待つスタイルだったのを、積極的に振っていくように変えました。まだまだボール球に手を出してしまうこともあるのですが、この積極性を保ちながら選球眼も良くしていきたいです。」また、田中 浩康コーチ(元ヤクルト)からも貴重なアドバイスを受けた。「田中コーチには打席での考え方を教わりました。プロの世界でプレーしたいた方ですので、積極的に試してみて上手く取り入れられたらと考えています」

 こうして迎えた今春は、自己最多のシーズン19安打で打率.396をマーク。ホームランも3本を放った。

 前編はここまで。後編では秋季リーグ、そしてドラフトへの意気込みを語ってもらいました!

取材=大平明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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