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創成館高校【前編】「好投手集団」の深層

2018.03.21

 3月23日(金)から開幕する「第90回記念選抜高等学校野球大会」第4日・第1試合で下関国際(山口)と対戦する創成館(長崎)。昨秋は明治神宮大会準優勝で34年ぶり3回目の出場を決めた原動力には130キロ後半の速球を投げる投手を4人そろえる投手陣とノーステップ打法があった。今回はその一端を前後編に分けてご紹介、前編では好投手がそろう理由が多角的に語られます。

「特長を出す」がベンチ入り条件

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創成館エース・川原 陸選手

 「例年より素質がある投手が入ったのは事実ですが、それでもうちは入る前から『すごい』のではなく、入ってから伸びていった投手がほとんどです」
 昨秋は左の川原 陸(新3年・センバツ背番号1)、七俵 陸(新3年・背番号14)、右の戸田 達也(新3年・センバツ背番号10)、伊藤 大和(新3年・背番号11)を絶妙な継投策で使い分け、明治神宮大会準優勝まで駆け上がった創成館・稙田 龍生監督はのっけから意外な言葉を口にした。

 そして稙田監督は試合さながらの継投策に打って出る。
 「投手育成は投手たちが『それぞれが自分のなりたい投手像』をコーチに話しながら進めていますので、それぞれの投手とコーチに聞いたほうが良いですよ」

 では投手担当の林田 大輔コーチと松本 真一コーチに、今度は指導の方向性を聴いてみよう。林田コーチは、2学年で25人がいる投手陣の中、公式戦でベンチ入りするための条件をこう明示している。
「まずは同じ投げ方をしても、一番ストレートが速い投手が必然にベンチ入りすることになる。そして『ベンチ入りするためにはどうすればいいのか、特徴を見出そうとする』感性を持った投手が入ります。そして実戦に強いことも1つの条件です」

実は先に上げた4投手も入学時からいずれも球速を10キロ伸ばした上で、それぞれの特長を出し、中心投手に成長している。左腕陣であればは184センチの川原は角度のあるストレートとスライダー。七俵は憧れにする藤川 球児投手(阪神タイガース)の投球フォームをモチーフとしたリリース時にしっかりと力が伝わるフォーム。
 
一方、右投手の伊藤は上手ではダルビッシュ有の投球スタイルを参考にしたスライダー、横手では森福 允彦(読売ジャイアンツ)のフォームを参考した独特の角度。さらに戸田は山岡 泰輔投手(オリックス・バファローズ)の映像を参考にしたスライダーを武器にしている。

[page_break:「先を見た」投手指導と基礎トレーニング]

「先を見た」投手指導と基礎トレーニング

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左から林田コーチ、松本コーチ(創成館)

 創成館、もう1つの投手育成ポイントは「先を見る」。林田コーチは選手たちに諭すときと同じような口調で、こう話してくれた。
「能力が高くても、練習試合で今一歩結果を残せずベンチ入りできない投手や、また身体的に出来上がっていなくて、大学生になって一気に伸びる可能性を持った投手もいる。でも高校で野球が終わるわけではない。むしろその先が大事。私たちはその先を見据えて指導をしています」

 松本コーチも林田コーチに同調する。
「野球選手の多くは『プロに行きたい』と目標を持ちますが、実際に高卒プロ入りは、よほどの能力を持った選手ではないといけない。
 逆に高校であまり活躍できなかったとしても、ベンチ入りできなかったとしても、大学・社会人経由でプロへ行けるチャンスはあります。だからこそ選手たちにモチベーションを失わせず、取り組ませるのが我々の役割なんです」

 よって創成館ではウエイトトレーニング・自重トレーニング・アメリカンノック・ポール間ダッシュ・瞬発系のランメニュー・通称「山ラン」と呼ばれるロードワークなど、体力強化練習を年間通じて重要視している。
 さらにこのオフではロープの太さでの長い縄跳びを練習に取り入れ、心肺機能を高めるトレーニングも行った。この4種類ある「縄跳びのトレーニング」については映像を見ていただきたい。

[page_break:主力投手4人が語る「課題と責任」]

主力投手4人が語る「課題と責任」

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左から七俵陸、川原陸、伊藤大和、戸田達也選手(創成館)

 では実際に130キロ後半をストレートを投じる主力投手はどんなことに磨きをあげてきたのか?川原 陸伊藤 大和戸田 達也七俵 陸の4投手に聴いた。

「自分は右打者への外角に逃げる変化球がなかったので、それを身に付けるためにチェンジアップを磨いています」(川原 陸
「自分は下半身の使い方が課題なので、体全体でリラックスで投げることを意識して、安定感を高めたいと思っています」(伊藤 大和
「自分はストレートが弱いので、強いストレートを投げることを意識しています。それができれば変化球も生きてきて、投球の幅も広がってくると共います」(戸田 達也
「安定感を高めて、自分の実力を発揮できるようにしたいです。そのためにリリースの安定感を求めて練習をしています」(七俵 陸

 

 その半面、4人は口をそろえて言う。「僕らはベンチ入りが確定されたわけではないんです」。事実、現時点で新2年・新3年には彼らの他にも130キロ台のストレートを投げ込む投手が5人存在。「好投手集団」の看板を背負う4人の責任感も、センバツ初勝利へ向かう創成館の原動力となっている。

後編は創成館の打撃を紹介。昨秋準優勝の明治神宮大会で話題となった「ノーステップ打法」について迫っていきます。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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