サーフェスとトレーニング効果
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。オフシーズン期に入り、グランドだけではなくさまざまな施設や場所などでトレーニングを行う機会も多いのではないでしょうか。そこで今回はトレーニングを行うときに配慮したいサーフェス(地面)とトレーニング効果について考えてみたいと思います。
土のグランドやアスファルトでの注意点
アスファルトの坂道を使ってスピードを高めるトレーニングを行うことができる
【土のグランド】
グランドで行うトレーニングやランニングはアスファルトなどに比べると荷重関節(足、膝、股関節など体重のかかる関節)への負担は少ないといわれています。また土の上で練習を行う場合、スパイクを履いて行うのか、ランニングシューズなどを履いて行うのかによってもトレーニング効果は変わってきます。
スパイクで行う場合はより野球のプレーに近い状態となりますが、足が固定されているため、その分切り返し動作などで足が地面に引っかかると転倒や捻挫などのリスクがあります。またランニングシューズよりも重さがあるので、細かい動きや軽快さはランニングシューズに劣ると考えられます。一方ランニングシューズでのトレーニングには汎用性がありますが、ストップ&ゴーのようにしっかり止まったり、止まったところからの動きだしで足を滑らせて流してしまう傾向があります(シャトルランなど)。
【アスファルト】
アスファルトの地面ではシューズとサーフェスとの摩擦力が高いために滑りにくく、地面からの反発力が高いため、繰り返しの動作によって荷重関節に負担がかかりやすいといわれています。特に脛の前部が痛くなるシンスプリントなどを誘発することが多く、これはサーフェスとともにランニングフォームやシューズの問題などを確認することが必要となってきます。一方で硬い地面で足首を固定して床反力を得られるようなスピードトレーニングなどは、その感覚をつかむために上手く使いたい場所でもあります。
上り、下りの坂道ダッシュなどもランニングフォームを意識して行うことで、スピードアップのランニングにつながります。ただし体力(筋力)レベルによってはパフォーマンスアップの前にケガをしてしまうことがあるので、本数や強度などを考慮して行うようにしましょう。
人工芝や砂浜での注意点
砂浜トレーニングはバランス能力を高めるために有効的。表面の安全が確認出来れば、素足が望ましい。
【人工芝】
人工芝の下はコンクリートで固められているため、クッション性が低く、アスファルトに準じたサーフェスといえるでしょう。練習量や強度が多くなるにしたがって脛の痛みを覚える選手が多くなる傾向にあります。またランニングフォームが崩れてくると骨盤が過度に前傾したり(反り腰)、後傾したり(お尻がいわゆる「落ちた」状態)して、腰を傷める選手もいるので注意が必要です。一方で床反力を養うランニングは適応しやすく、トレーニングでは寝転がったり、立ち上がったりと手を地面についたりとさまざまな姿勢をとりやすいサーフェスでもあります。
【砂浜】
使えるチームは限られてしまいますが、海にほど近いチームや合宿場所などでは砂浜でランニングやトレーニングを行うことができます。砂浜トレーニングの特徴としては足を蹴ることが大きな負担となってしまうので(蹴ってもなかなか前進しない)、なるべく腿を上げようとするトレーニング効果や不安定なサーフェスによるバランス能力の強化などが見込めます。また素足でトレーニングやランニングを行うことは足裏の感覚を高めることにつながります(ただし安全性には十分配慮しましょう)。
今まであまり使っていなかったサーフェスを使ってのトレーニングやランニングは下半身を中心に負担がかかりやすいので、練習後は入念にストレッチを行い、疲労が蓄積しないように心がけましょう。それぞれのサーフェスが持つ特徴を理解し、内容に応じて使い分けるようにすると一部分に大きな負担がかかることも少ないと考えられます。パフォーマンスアップのためにサーフェスを考慮したトレーニングやランニングをぜひ取り入れてみてくださいね。
2018年も「セルフコンディショニングのススメ」を読んでいただきありがとうございました!2019年が皆さまにとって素晴らしい一年になりますように。ではまた次回のコラムでお会いいたしましょう。
【サーフェスとトレーニング効果】
●スパイクでのトレーニングは足首が固定される分、切り返しでケガを誘発しやすい
●アスファルトは摩擦力が高いために滑りにくく、荷重関節に負担をかけやすい
●一方で地面からの反発力が強く、スピードトレーニングなどに活用できる
●人工芝でのランニングでは骨盤が過度に前傾したり、後傾したりしないように注意する
●砂浜は足を蹴っても前進しにくいため、腿をしっかり上げるなどのトレーニング効果が見込める
●素足でトレーニングやランニングを行うと足裏の感覚を養うことにつながる
(文=西村 典子)
次回コラム公開は1月15日を予定しております。