常総学院vs近江
台風の目になるかも?個性と緻密さを兼ね備えた常総学院ナイン
球場にきたほとんどの人は140キロ台中盤のストレートを投げる本格派、京山 将弥(3年)が近江の先発だと思ったはずだ。それが発表されたのは深田 樹暉(3年)だった。キレのいい140キロに迫るストレートにまず注目したが、常総学院のバッティングのほうが一枚上だった。
京山は2回途中からリリーフに立ち、代わりっ端に3つの四球を与えるなど乱調気味で、結果は6回を投げて被安打10、奪三振5、与四球4。けっして褒められない内容だが、ストレートは最速147キロを計測し、130キロ台のカットボール、120キロ程度のチェンジアップなど変化球にはキレがあり、最初からマウンドを託していればもっと競った戦いになったと思った。
常総学院は1回に2安打、1四球をつらねて2点、2回には打者9人を送る猛攻で3点を奪取、この攻勢で勝敗の行方はほぼ決まったと言っていい。
常総学院の打撃陣を見て思ったのは、いい意味で個性的だということ。1番陶山 勇軌(2年)はイチロー(マリーンズ)を彷彿とさせる“前重心”で内野安打2本を含む4安打を記録、4番花輪 直輝(3年)はインステップからのフルスイングで3安打2打点を挙げた。
茨城大会で3番を打つこともあった中村 迅(3年)が8番に入り、どちらかというと脇役的な2番有村 恒汰(3年)、7番石川 大(3年)が7回と9回にホームランを放つなど驚かされることも多く、スタメン9人がさまざまにつながっていくさまは仰木彬監督のもと95年に日本一になったオリックスブルーウェーブを見ているようだった。
この打線を見て思ったのは常総学院の佐々木力監督の許容量の広さだ。以前はチームプレーを優先順位のトップに置き、陶山の前重心、花輪のインステップ、さらに3番宮里 豊汰(2年)のレベルより下からしゃくりあげるバッティングスタイルなどは敬遠されたはず。それを許しながら甲子園で勝てるチームを作り上げているところが見事。
ディフェンスでチームを助けたのはキャッチャーの清水 風馬(3年)だ。スキのない好守で魅了する常総学院だが、1回に何でもないショートからの送球をファーストが落球していきなりピンチを迎える。この走者の二盗を強肩でぴしゃりと刺し、2死から3番がヒットで出塁して再び二盗を企図すると、これも完璧な送球で刺した。2対0の局面だったので、ここで1点も入っていればまた違った試合になっていただろう。走攻守すべてが高いレベルで揃う常総学院は今大会の台風の目になるかもしれない。
(文=小関 順二)
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