Interview

高校通算49本塁打誇る強打者・真鍋慧(広陵) 覚醒はプロ入りしたOBの存在だった【前編】

2022.12.29

 2023年の高校野球界の中心には、この男が必ずいるはずだ。

 広島広陵(広島)の真鍋 慧内野手(2年)。2年連続で明治神宮大会でホームランを放つなど、高校通算49本塁打まで積み重ねた世代屈指のスラッガーである。

 2021年の明治神宮大会では大阪桐蔭前田 悠伍投手(2年)、花巻東佐々木 麟太郎内野手(2年)、九州国際大付佐倉 俠史朗内野手(2年)とともに「高校四天王」と称され、高い注目を集めた。

私情を持ち込まず、淡々と積み重ねた49本塁打

高校通算49本塁打誇る強打者・真鍋慧(広陵) 覚醒はプロ入りしたOBの存在だった【前編】 | 高校野球ドットコム
真鍋 慧(広陵)

 ドラフトイヤーとなる2023年は、ドラフト候補として再び佐々木麟、佐倉とは比較されることもあるだろうが、「あまり意識していません。チームが勝つことが大事なので、私情は持ち込みません」ときっぱり。チームファーストで今後も戦っていく姿勢を示した。

 しかし、前田との2度目の対戦は、少し特別な思いがあるようだった。
 「(前田は)いい投手なので対戦が楽しみな投手でしたが、明治神宮大会では確実に捉えきれませんでした。センバツで対戦することがあるようなら、今度はしっかりと捉えられるようにしたいです」

 明治神宮大会を含めて、ここまで全国の舞台を3度経験。数多くの試合を経験しながら、49本のホームランを積み重ねてきた。ここまでの結果は自身のなかでも「2年生の夏が終わって、新チームになってから一気に増えて、いい方向に進んだと思います」と自分たちの世代からの打撃には納得できる部分もあるようだ。

 それもそのはず。1年生の公式戦が終わった時点では通算10本塁打。2年生の夏では20本塁打と積み重ね、自分たちの世代に切り替わってから49本塁打まで伸ばした。推移だけ見れば、量産態勢で2年目を終えた形に見えるだろう。あらゆることに挑戦し続けて、結果を出していた。

[page_break:広陵OBが大きな壁を乗り越えるヒントになった]

広陵OBが大きな壁を乗り越えるヒントになった

高校通算49本塁打誇る強打者・真鍋慧(広陵) 覚醒はプロ入りしたOBの存在だった【前編】 | 高校野球ドットコム
真鍋 慧(広陵)

 4つ上の兄の影響で小学生の時はソフトボールをやってきた。中学では広島安芸リトルシニアに入団して、本格的に野球をスタート。「ソフトボールのときが10メートルの距離でピッチャーが100キロくらいの球を投げていたので、中学で18メートルで120キロくらいだと、あまり速さを感じなかった」とソフトボール特有の競技性で鍛えられた動体視力が、野球になっても大いに発揮して、真鍋を支えた。

 中学通算15本塁打まで積み重ねた実績が目に留まったのか、地元の強豪・広島広陵に声をかけられ、入学することを決めた。中学時代に磨き上げた打撃を自信にして広島広陵の門をたたいたが、「入学したての時期が、ここまでの一番の壁だった」とすぐに活躍できるわけではなかった。

 中学時代とは比べ物にならないハイレベルな投手に対して、全く打つことができず、持ち前のバッティングは高校の舞台では歯が立たなかった。「(バッティングに)自信を持っていたので、大きなギャップを感じました」と本人も苦々しく当初のことを振り返った。

 しかし5月頃には主力組に合流をさせてもらうと、5月終わりから6月初旬頃の練習試合からは中軸に抜擢され始めた。徐々に経験を積ませてもらうなかで、打撃技術の向上はもちろんあるが、本人の中でつかんだモノがあったという。

 「偶然なんですが、YouTubeを見ていた際に、佐野(恵太)さんの打撃動画を見る機会があって、『これだ!』と思って、参考にさせてもらいました」

 数多くの広島広陵OBの1人であるDeNA・佐野の打撃、特に「すり足気味にタイミングをとっていたのを見て、ピンときました」と目線がズレにくい、すり足にヒントを得た。今もなお、すり足気味なのは、佐野の打撃フォームとの出会いがあったからで、まさに土台となっている。

 他にも数多くの箇所を改良したが、土台となっているのは佐野だという。
 「中学までは飛距離を求めて、バットのヘッドで円を書くようにしてタイミングをとって、大きなテークバックからスイングをしていました。とにかく無駄が多くて、スイング軌道も悪かったんです。
 だけど、佐野さんのフォームを参考に、最初からバットを寝かせて耳元で構えるようにしました。円を書く動作が無くなり、かつミートポイントまで無駄なく最短でスイングができるので、ミートしやすいフォームができ上がりました」

 長打への意欲を抑え、高校レベルの投手への対応力を求めて、佐野の打撃フォームを習得したことで、次第に結果を残すことができ、1年生の夏には3番の座を射止めた。「願わくは、1年生の夏から中軸を任せてもらえたら」と考えていた真鍋にとっては最高の形で、最初の夏を経験し、秋は明治神宮大会で初の全国の舞台までたどり着いた。

 「1年生で全国の舞台に立てるとは思っていませんでしたので、緊張していました。ホームランも2本出せましたけど、偶然だったと思います」

 広島広陵OB・佐野にヒントを得た真鍋は、ここまでで通算10本塁打。さらに明治神宮大会準優勝を経験して、2年目に向かっていった。センバツ、さらに2度目の夏。そして量産態勢に入れた背景には何があったのか。

◆真鍋慧の打撃フォームまとめ

中学~入学当初:飛距離を重視した打撃フォーム
・足を大きく上げて動かす
・バットのヘッドで円を書いてタイミングをとる
・大きなテークバックを引いてから振り抜く
⇒無駄が多く、スイング軌道も悪かった。

高校1年生:モデル・佐野恵太の対応力を重視した打撃フォーム
・すり足で目線のズレを減らす
・最初からバットを寝かして構える
・耳元あたりまでバットを引いて振り抜く
⇒無駄が少なく、最短距離でミートポイントまで振りに行ける

(取材:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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