Interview

【新春インタビュー】甲子園優勝投手・吉永健太朗が振り返る高校時代「甲子園初登板、アドレナリンが止まらず……」

2024.01.03


吉永健太朗さん

日大三のエースとして甲子園優勝、早稲田大でも全国制覇――。輝かしい球歴を持つ吉永 健太朗さん。2019年に現役引退後は、会社員の傍らでさまざまな野球普及の活動を行っている。
簡単に吉永さんの経歴を振り返る。2年生の2010年秋から日大三のエース番号を背負い、第42回明治神宮野球大会では優勝。3年時の第83回選抜ではベスト4、第93回の夏の甲子園では優勝を収めた。8月28日から開催の第9回AAAアジア野球選手権大会に日本代表の一員に選ばれ、最優秀防御率賞を獲得しベストナインにも選出された。早稲田大学に進学後は1年生春からリーグ戦に登板し、4勝をあげ、ベストナイン、最優秀防御率投手に選出される。チームとしてはリーグ優勝し、全日本大学野球選手権では2勝をあげ、最優秀選手に選出された。社会人JR東日本では、野手にも挑戦したが、ケガの影響で現役引退。

そんな吉永さんの野球人生を振り返ってもらった。
**********

小倉監督は第2の父

――日大三に進学した理由はなんでしょうか。
吉永 健太朗以下吉永」) 中学では自分が投手をやらせていただいたってこともあったので、どうしたら甲子園に出られるか、ということを基準に考えて高校を選びました。日大三は特に打撃の印象が強かった。自分が投手をして活躍して、打撃の強い日大三で投打が嚙み合えば甲子園に出られるんじゃないかということで日大三を選びました。
――日大三の練習環境や雰囲気を改めて振り返ってみるとどのようなものだったのでしょうか。
吉永 まず日大三に入った時点で1番驚いたのがレベルの高さです。球場の奥にネットがあるんですけど、三年生はフリーバッティングでその奥のネットすら越えちゃうんですよ。レベルの高さにはびっくりしましたね。自分がこの環境でやっていけるかという不安があった一方で、ここで活躍できるようになれば甲子園目指せるっていうことも思いました。
寮生活させていただいてたので、練習量もしっかりありますし、食事面でも寮の方で食事をサポートしていただいたので、野球の技術面と生活面、ともにサポートいただいてすごく成長ができたのかなと思います。

小倉全由さん

――小倉先生はどのような監督だったのでしょうか?
吉永 監督としてはやっぱりいろんな日大三OBの方が言うんですけど。第2のお父さんみたいな存在ですね。寮生活を一緒にするので24時間365日、お風呂も一緒に入りますし、ご飯も一緒に食べます。一緒に居る時間が長いというところで、野球面だけでなくプライベートな話もします。信頼されているからこそチームが一丸となって野球ができるというそういう一体感みたいなところはすごくあります。
――小倉先生との思い出深いエピソードはありますか?
吉永 エピソードとしては3年生の夏の大会のときにプレッシャーに負けて全然結果が出せなかった時に、小倉監督の部屋に呼んで慰めてもらったこと。それでも結果が出ずに小倉監督の車でデニーズに連れてってもらって、試合前日の夜にパフェを食べながら「お前ながらできるぞ」って言ってもらって慰めてもらいながら夏の大会を戦ったっていうことが凄く忘れられない思い出となってます。
――小倉先生の言葉の中で、最も心に刻まれている言葉は何かありますか?
吉永 いろいろな言葉があるんですけど、「練習は嘘をつかない」という言葉は、日大三の選手が常に意識してることです。練習では手を抜かない、ランニングでも最後の一歩まで手を抜かない、投げるときも最後の1球まで投げきる。そういうところが最終的に結果に繋がると思うので、その言葉は日大三の共通認識としてあるのかなと思います。
――小倉先生はどんな存在だったのでしょうか。
吉永 お父さんみたいな存在ですね。野球だけ教わるわけじゃなくて、学校生活においても倫理の先生もされているので、授業をやっていただいたりもしますし、あとはグラウンドでも野球一緒にやってずっと一緒に居るっていうかたちなので、色んな面で人として成長させていただいたのかなと思います。

日大三名物・冬合宿

日大三時代の吉永健太朗投手

――公式戦で活躍するまでの期間は何をアピールして登板機会、ベンチ入りすることを目指していましたか?
吉永 ベンチ入りするとなったら、まずは結果を出すというところが大前提かなと思うんですけど、僕の強みは変化球が得意というところ。球速は1年生の秋で135キロ出るか出ないかぐらいだったので、真っ直ぐとカーブ、スライダーを投げ分けて、いかに相手を攻略するか、みたいなところを意識しながらやっていました。結果的に練習試合の結果はとても良かったので1年秋にベンチ入りメンバーに入れていただいきました。
――秋の段階で活躍されていた髙山(俊・オイシックス新潟)さん、横尾(俊建・2024年から楽天2軍打撃コーチ)さんら同級生の活躍は焦りにはなりませんでしたか?
吉永 秋の段階で確かに横尾と髙山は活躍してたので、僕も活躍したいなと思いながら練習しました。選抜が決まってたので選抜で投げたいという思いで一生懸命練習した結果、選抜で143キロ計測することができて、そこで一気に自分の中で成長できたところかなと思います。でも、試合を作るとか、制球力に課題があったので、そこを改善するために夏までトレーニングして、結果的に甲子園行くことができませんでしたが、球速を147キロまで伸ばすことができたり、あとは試合を作れるようになったりとか、そこで大きく成長できたかなと思います。自分の代に入って一つ上で活躍していた畔上とか、髙山とかと一緒に強いチームを作っていけたらなと考えていました。
――冬合宿はどのようなスケジュールで練習を行う形だったのでしょうか。
吉永 スケジュールは2週間4クールあるんですけど。4日で1クールが4クールあり、1クール3日間は朝練をやって4日目は朝練なしっていうのを4回繰り返すというスケジュールです。3日間朝練の時はダッシュ系の日とインターバル系の日、サーキットトレーニングの3日間の構成になっています。それが3日間終わると4日目は朝練なしという構成で4クールやる形になってます。
――初めて1年生で参加した冬合宿はいかがでしたか。
吉永 地獄でしたね。こんなきつい練習があるんだっていう印象だったんですけど、結果的にこの冬練を越えて球速が10キロとか伸びたので、自分としては一つ成長できたというところはあったと思います。
――2年時も同様に大変でしたか。
吉永 めちゃめちゃ大変ですし、1年目を知ってるんで2年目の冬合宿の前が怖くてしょうがなかったです。
――最後のランニングで涙を流す選手もいると伺ったんですけども、それだけ過酷ということですか?
吉永 涙を流す選手がいるというのではなく、大半の選手が涙を流します。達成感であったり、やり切ったっていうところもあるし、やっと辛いところから解放されるっていう両方あると思います。

甲子園初登板、アドレナリンが出すぎて……

日大三時代の吉永健太朗投手

――甲子園デビューというのはどうでしたか?
吉永 僕が高校で初めて公式戦で投げたのが甲子園の準々決勝だったんですよ。テンションが上がって、最終的にアドレナリンが出すぎて真っ直ぐが制御できなくなり、球速を落としてストライクを取りにいったら、大学の同級生の丸子(広陵)にホームランを打たれるっていう……良い経験をしつつ、ちょっと苦い思い出もあるデビュー戦でした。
――甲子園を経験したからこそ生まれた自身の変化などはありますか?
吉永 精神的なところで言うと、あれだけのお客さんが集まるっていうことはないと思うので、大歓声の中で自分のパフォーマンスをしっかり出せた経験、出せなかった経験もあるし、大舞台を経験させてもらえたというのは、自分の中ですごく財産になったかなと思います。また怪我で上手くいかなかった時間もたくさんあったので、そこで頑張るきっかけになったのが、甲子園で投げるということでした。実際に甲子園で投げることができた経験が大きかったのかと思います。
――2010年夏の大会の準決勝、日大鶴ヶ丘戦を振り返っていただきたいんですけど、あの敗戦で何か経験したことはありますか?
吉永 2年生ということもあって3年生の最後の夏を終わらせてしまったというところがやっぱり凄く悔しかったです。3日間ぐらいは涙を流すぐらい責任を感じていました。そして一つ上が引退する姿を見て、自分は最後頂点取るまで負けずに終わりたいというところは思ったので、そこは1つ自分の中で頑張れるきっかけにはなったのかなと思います。
――日大鶴ヶ丘戦の敗戦があったからこそ、新チームの秋の大会、神宮と勝ち上がってこれたのでしょうか。
吉永 そうですね。やっぱりそこはあるかなと思ってますし、1つ上の代から活躍している選手もいたので経験値というのも高かったのですし、総合力としてスキル・経験もあったし、敗戦からもっと頑張ろうというところで夏終わったあとチーム一丸となってやってたので、そこは凄く良かったのかなと思います。
――甲子園を振り返ってみて想いだったり、現在役に立っていることはありますか。
吉永 甲子園に限らず高校3年間という経験は、自分のこれまでの人生においての財産になっているかなと思ってます。理由としては、どんなに辛い時でも冬練以上のキツさは無いとか、あとは上手くいかなかった時に頑張れば結果として最終的に良い結果が残せるとか、辛い時から成功体験まで色んな経験をさせてもらったので高校はかけがえのない財産かなと思います。

社会人時代にようやく掴んだ感覚

子どもたちへ指導をする吉永健太朗さん

――大学2年生以降苦しい日々を過ごす中で、どのようなモチベーションで練習を取り組んでいましたか。
吉永 大学卒業後ドラフト1位でプロに行きたいという思いで入ってきたので、まずは諦めずにゴールに向かってやりきるというところと、甲子園で活躍したとか、大舞台で活躍するという経験があったのでもう一度そこでやりたいという思いで毎日やってました。
――社会人時代は振り返ってみてどうでしたでしょうか。
吉永 大学時代の最後はフォームとか怪我とかで思うようにできませんでした。JRに入った理由は、ピッチングコーチの僕の現状に対してのアドバイスがマッチしてると思ったからです。結果的にピッチングコーチに教わったことによって、技術的なところはすごく改善できましたし、思うような投球ができるようになった中で怪我が重なってしまったところがあるんですけど、大学の最後の方と比較すると、自分の中では割と納得ができるようなピッチングができていたかなとは思います。
――その感覚を早く手にしたかったですね。
吉永 大学の段階で気づいていれば改善ができていたのかな思うので、そのような経験を今後苦しんでいる選手に伝えていければなと思っています。
――社会人野球で引退勧告を受けた時の心境はどのようなものがありましたでしょうか。
吉永 20年ぐらい続けてきた野球だったので、野球がなくなった人生ってどうなるのかなという不安と自分が頑張って怪我から復帰して1年プレーしての引退だったので、もう1年やりたかったっていう思いもありました。肩の不安は常にあったのでそこから解放されるということで心の負担は無くなったりと複雑な心境でした
――高校野球は現在の自分にどのように活きていますか。
吉永 辛い経験から成功体験、色んな経験をさせて頂いたので、これまでの人生やこれからの人生に置いて自分のメンタル的な支えにはなっていくのかなと思います。
――最後に球児たちにメッセージをお願い致します。
吉永 あれだけ野球に打ち込んでやれるというのは高校までかなと思ってます。大学、社会人で緩くなるとかではないんですけど、そこまで熱中して野球をやれるというのは高校野球の醍醐味かなと思っているので、一日一日悔いなく練習していけば、目標は達成できると思いますし、その経験が長い人生を考えてもかけがえのない経験になると思うので、辛いこともたくさんあると思うんですけど、楽しみながら高校野球生活を過ごしていただいて少しでも自分の良い経験になってもらえたらなと思います。

取材・文/鎌田光津希(元徳島インディゴソックス、千葉ロッテマリーンズ)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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