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東海大菅生、二松学舎大附、國學院久我山など上位校は固定 早実、国士舘は苦しむ

2021.12.31

東海大菅生、二松学舎大附、國學院久我山など上位校は固定 早実、国士舘は苦しむ | 高校野球ドットコム
優勝を飾り、喜びを爆発させる國學院久我山ナイン

 コロナ禍で様々な制約を受け、東京五輪が開催された2021年は、特別な年であることは間違いない。そうした中でも東京の高校野球は、春、夏、秋の大会で優勝チームを決めて、無事終わった。

 春の4強は関東一日大三東海大菅生二松学舎大附で昨年の秋と変わらず、夏の東西東京大会の決勝進出校は、二松学舎大附関東一東海大菅生國學院久我山で、秋の4強は國學院久我山二松学舎大附日大三関東一となっている。

 昨年の秋から東京の上位4校に入るのは、東東京は二松学舎大附関東一だけで、西東京は東海大菅生日大三國學院久我山の3校が、2回ずつ顔を出している。昨年から秋もシード校制が導入されたことが要因の一つであるものの、選手層の厚い学校が、夏から秋に代が変わっても、強さを発揮した。

 その一方で、これまで上位の常連だった国士舘早稲田実業は、今年は8強に進出することが1度もなかった。国士舘は投手陣の整備に苦しみ、早稲田実業は新チームの主将である壽田 悠毅内野手(2年)が夏場に負傷して本来の活躍ができないなど、チームとしての力強さに欠けた。

 帝京は、昨年秋は2回戦で都立小山台にコールド負けしたのに続き、この春も初戦敗退と不振が目立ったが、夏は4強と盛り返した。しかしベテラン・前田三夫監督が、この夏を最後に勇退したのは驚きだった。

 春季大会のベスト16は、東東京が5校、西東京が11校であったため、夏の大会のシード校は、東東京が5校、西東京の11校になった。そのため東東京では、ノーシード校にチャンスが広まった半面、西東京はシード校の存在感が薄かった。そうした中、目黒日大との接戦を制し、日大一にも勝って東東京の8強に進出した、ノーシードながら、西東京の4強に進出した世田谷学園、夏は八王子を破り西東京の8強、秋季都大会でも8強に進出した都立狛江、夏の西東京の5回戦で、シード校の明大中野八王子を延長に及ぶ接戦で苦しめた都立小平南などの健闘が光った。

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コロナ禍 実戦経験の不足が如実に

東海大菅生、二松学舎大附、國學院久我山など上位校は固定 早実、国士舘は苦しむ | 高校野球ドットコム
杉江 敏希(創価)

 コロナ禍のため春の1次予選が中止になったことにより、夏の大会は200チーム近くが昨年の秋以来の公式戦になった。そのうえ、練習試合も思うようにできないとあって、走塁や守備の打球判断の遅さも目立った。それだけ、実戦を経験できていないということであり、気の毒でもあった。

 例年であれば春や夏の大会で活躍した1、2年の投手が、秋の大会を引っ張っていくことが多いが、この秋は創価杉江 敏希投手(2年)、八王子星野 翔太投手(2年)などをはじめ、多くの投手が負傷や不振で登板できなかったり、本調子とはほど遠い投球をしたりした。その理由は人それぞれではある。ただ冬場に緊急事態宣言が発出され、基礎トレーニングが十分できなかったことが、大きな要因になっているようだ。

 春の1次予選が中止になったことで、埋もれた人材が例年以上に多かったと思う。都立紅葉川山崎 正義投手(3年)は、秋の1次予選の日大桜丘戦で奪三振17を記録しているが、夏も2回戦の京華商戦で奪三振15を記録し、奪三振能力の高さを示した。都立足立西有馬 拓投手(3年)は、長身から伸びのある速球を投げていた。コロナの影響で仕方ないとはいえ、こうした選手をみていると、実戦の場が一つでも多くあればという気持ちになる。

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東京の高校野球の新しい波

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井坪 陽生(関東一)

 ここ数年、野球を巡る状況は大きく変化した。最後に、取材をしていて感じた東京の高校野球の新たな傾向を、いくつか紹介したい。

 今年、世界の球界で最も注目された野球選手は、投打二刀流の大谷 翔平であった。彼の影響か、投手が1、2番を打っても違和感がなかった。それでも、秋季都大会3回戦の関東一都立城東戦では、関東一井坪 陽生(2年)、城東藤森 晴久(1年)という両チームの先発投手がともに1番打者というのは、少々驚いた。夏の東東京大会で二松学舎大附を苦しめた東京成徳大高のエース・岩井 拓巳投手(3年)は、打っては2番打者としてチャンスメークをした。

 また球数制限の導入により、複数の投手を持つことは当たり前になったが、その影響か、投手の投げ方も多様化してきた。市川 祐に次ぐ2番手として関東一の春季関東大会準優勝に貢献した横手投げの鈴木 義信(3年)や、世田谷学園のエースとして西東京大会ベスト4に貢献した横手投げの建守 伯(3年)などの投球は印象に残った。

 さらに、昨年から[stadium]神宮第二球場[/stadium]が使用できなくなった。交通の便の良さ、神宮外苑の伝統もあり愛された球場だった、狭く本塁打が出やすい球場でもあった。秋や春の準々決勝は広い[stadium]スリーボンドスタジアム八王子[/stadium]などで行われることが多くなり、野球スタイルも一発長打よりも、機動力を使うチームが目立つようになった。

 最後に國學院久我山は以前から練習時間は3時間以内で、選手の自主性を重んじてきた。こうしたチームが夏に準優勝し、秋は優勝したという事実は、コロナの時代に示唆することは多い。

(記事:大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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