Column

【春季北海道大会総括】北海、北照、駒大苫小牧など東海大四を追う対抗馬の活躍が光る

2015.06.05

ソツのない野球で3年ぶりの優勝を決めた北海


優勝した北海の集合写真

 5月25日から31日まで[stadium]札幌円山球場[/stadium]で行われた春季北海道大会は、投打にバランスのとれた北海が、3年ぶり11度目の優勝を飾った。
決勝の駒大苫小牧戦では、前半に打線が大爆発。2回一死一塁から、チーム唯一の2年生レギュラー、6番の佐藤 佑樹が右翼席に豪快な先制2ランを叩き込むと、なおも二死二塁から今大会初スタメンの菅野 竜矢(3年)が右前適時打を放ち加点する。さらには柿沼 和樹(3年)の右中間三塁打、大矢 勝幸(3年)の中前タイムリーで大量5点を先制した。

「佐藤のホームランが口火を切ってくれた。2年生ということで、緊張して固くなっても仕方ないと思っていたら、大会を通じて一番自信を持ってやっていた。あのひと振りは大きかった」
と、平川 敦監督(44)は先制打のヒーローを手放しで褒め上げた。打線は4回にも5安打に敵失、四球を絡めて8点を挙げ、早々と勝負を決めた。

 準決勝の北照戦でも、3回に5安打を集めて3点を先制すると、4回には敵失や四球など、相手の見せたスキを見逃さず、一気に畳みかけるあたりは、やはり伝統校らしくソツがない。
「ただ、打線は水ものですからね。だからこそ、打てる打てないは別として、しっかりと振り切れないとダメ。振る力というのは一朝一夕には、身に付かないですからね」
と、平川監督は冬場の振り込みの成果を口にした。

 投手陣はエース右腕・渡辺 幹理(3年)が、4試合中3試合に先発。2回戦の釧路湖陵戦では8回一死まで無安打無得点の快投を演じた。
「ノーヒットというのは気付いていました。でも個人の考えだけでやったらダメ。意識はしていませんでした」

とサラリ。これまで春先に故障が多かったが、最終学年を迎え万全の態勢で夏に備える。

 準決勝の北照戦に先発した大西 健斗(2年)は、強力打線に6回10安打されながらも2失点に抑える粘投を披露。
「もう少し大胆にいってもよかったですね。大事に、大事にという感じだった」
と平川監督は言いながらも、及第点を与えた。ただ心配なのが、札幌支部予選で背番号1を付けていた北海山本 樹(3年)だ。

 疲労からくる右肩痛のため、今大会は大事をとって1度もマウンドに上がらなかった。「肩は7、8割の状態。夏は渡辺幹と一緒にしっかり投げられるように調整していきたい」と、投げたい気持ちを抑えながら、最後の夏に向けて慎重に調整を続ける。

 昨秋の北海道大会では決勝東海大四に惜敗し、センバツ出場を逃した。その東海大四甲子園準優勝しただけに、悔しさは必要以上に膨れ上がった。
「選手はどう思っているのかわかりませんが、個人的には決勝で負けるというのが一番悔しい。特に今年は東海大四の活躍を(合宿地の)沖縄でみながら“自分たちの野球している場所が違うだろっ!”って思ってました」
と平川監督。指揮官の思いが、十分すぎるぐらいチーム内に浸透していることを証明する優勝となった。

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2年生投手の底上げをテーマに準優勝した駒大苫小牧

伊藤 大海選手(駒大苫小牧)

 準優勝の駒大苫小牧は、2年生投手陣の底上げをテーマに今大会に臨んだが、決勝で先発した左腕の阿部 光輝(2年)が1回2/3を5失点。リリーフした阿部 陽登(2年)も、4回に3連続押し出しなどで1回2/3を8失点と、ともに大崩れしてしまった。
北海は打線がすごかった。この悔しい思いが夏につながれば…」
と、佐々木 孝介監督(28)は2人に奮起を期待するも、やはり表情はさえない。

 そんな中でキラリと光ったのが、準決勝で先発した松林 憲吾(2年)だ。練習試合を含めても、ほとんど先発経験のない右腕が、強打の白樺学園打線を相手に、5回1/3をわずか1失点の好投を披露した。

「ダメならすぐに代えるつもりだった。どれぐらい投げられるかと思っていたけど、丁寧にコースを突いていた。(阿部光、阿部陽の)2人にも見習ってもらいたい」
と佐々木監督は絶賛。
「捕手のミットだけを目掛けて投げました。もっと信頼される投手になりたい」と、松林は大舞台で自信をつかみとった。

 エース・伊藤 大海(3年)は夏を見据えて、初戦の北見緑陵戦に先発した以外は、すべてリリーフに回った。大差のついた決勝では、6回からマウンドへ。キレのあるストレートと抜群の制球力で、4イニングを無安打6奪三振と北海打線をピシャリと抑えてみせた。
「自分が流れを作っていこうと思った。腕が振れて、今日は最高の出来だった」
と、中学時代の幼なじみでもある北海のエース・渡辺幹に強烈なライバル意識をのぞかせた。大黒柱がしっかりとしているだけに、夏に向けてはいかに伊藤の負担を軽減できるかがカギとなる。

 攻撃面では、出塁率が高く長打力も兼ね備えた1番・若林 楽人(2年)が、4試合で16打数9安打1本塁打と、打線を引っ張った。「チーム一の打者を1番に置くのがボクの主義。最も頼りにしている」と、指揮官からも絶対の信頼を置かれている。今大会では下位打線を打つことの多かった長谷川 龍(3年)、土井 凛太郎(3年)にもパンチ力があり、「本来はクリーンアップを打たせたい選手」と佐々木監督が言うように、どこからでも長打が飛び出す。ちょっとしたミスも逃さない走塁も絡め、相手に大きなプレッシャーを与え続けられる打線に仕上がっていた。

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新生・北照は東海大四を破り、ベスト4入りし、夏へつなげる

川端 翔選手(北照)

 法大、社会人野球の拓銀、シダックスでも監督を務めた竹内 昭文新監督(64)が率いる北照は、エース左腕・管野 渉(3年)が本来の投球を見せられなかった。先発した2回戦の札幌日大戦で、4回1/3を7安打4失点と不完全燃焼に終わると、続く準決勝の北海戦でも4回を持たず8安打8失点。「前の試合(札幌日大戦)、引っ込めた時点で“次もいくぞ”と伝えてあった。リベンジして欲しかったんですけどね」と竹内監督は渋い表情をみせた。

 今後は、初戦の東海大四戦で好投した、同じく左腕の川端 翔(3年)とのエース争いとなる。打線は小泉 理久(3年)、佐々木 斗夢(3年)、川端のクリーンアップを中心に、札幌日大戦で本塁打を放った工藤 慎司(3年)など、破壊力は全道トップクラスといえる。

 北北海道地区から唯一、ベスト4に勝ち上がった白樺学園は、やはり打線が売り物。この大会はどんな投手に対しても、しっかり振り切ることを目標にしていたことから、試合の序盤ではバントを封印して、積極的に打っていった。「走者のいる場面でどんな打撃ができるか。ある程度、練習の成果は出せたと思う」と戸出 直樹監督(39)。

2回戦の旭川西戦では22安打17得点と、接戦続きだった十勝支部予選のうっぷんを晴らした。準決勝の駒大苫小牧戦でも、1得点に抑えられたが11安打を放った。

「バントなし、ということはわかってたんで。それでも点を取らないといけないけど、駒大苫小牧からこれだけ打てたということは、自信になる」
と、周東 拓弥主将(3年)は確かな手応えを口にした。投手陣はプロも注目する中野 祐一郎(3年)、192センチの長身・河村 説人の2枚が安定しているだけに、北北海道の夏の大本命といえる。

 攻撃力アップをテーマに臨んだセンバツ準優勝東海大四は、初戦の北照戦で6安打3得点に抑え込まれ、早々と姿を消した。
「打てないと勝てないということ。夏に向けて打線の強化をしないと、勝ちきれないということが明確になった」

大脇 英徳監督(39)はキッパリ。その言葉の裏には、夏にはフル回転することになるエース・大澤 志意也(3年)にかかる負担を、できるだけ軽くしたいという思いが見え隠れしている。

 その大澤は、3番手として6回途中からマウンドに上がり、3回1/3を無安打に抑える貫録をみせた。「自分らしい投球はできた。少しは流れを持ってこられたと思う」と9回、あと一歩のところまで迫った展開を演出した。

 夏の支部予選まで1か月を切った中での大会とあって、どのチームも難しい戦いを強いられるのが春季北海道大会。札幌日大は好投手・山本 龍之介(3年)を、札幌大谷も右ひじに不安の残る一昨年の秋季北海道大会準優勝右腕・岡本 凛典(3年)を、支部予選を通じて温存した。28年ぶりの出場となった天塩は初戦で、優勝した北海を最後まで苦しめた。公立校ながら激戦区・旭川支部を勝ち上がった旭川西、MAX143キロの右腕・加藤 遥基(3年)を擁する北見緑陵なども、夏の大会をにぎわせてくれそうだ。

(取材・文=石川 加奈子京田 剛

コラムに関連する記事はこちらから!
【野球部訪問】東海大学付属第四高等学校(2015年03月19日公開)
【野球部訪問】北照高等学校(2011年02月14日公開)
【インタビュー】札幌日本大学高等学校 山本 龍之介投手(2015年04月01日公開)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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